子供が地面を蹴って進む“ペダルなし”の自転車が近年、急速に普及しています。「キックバイク」などと呼ばれるものですが、子供の自転車練習のために“ペダルを無くす”という発想は、実は自転車の黎明期への原点回帰といえるものです。

補助輪からスタートした子供向け自転車

 近年、幼児用自転車の定番となっているのが“ペダルなし”の自転車です。キックバイクやバランスバイクと呼ばれるペダルなしの自転車は、補助輪に代わる新たな自転車練習法として多くの親から選ばれています。

 ウケている理由は、自転車に乗るために必要なバランス感覚と体幹を学べるため。これまでの幼児用自転車といえば三輪車や補助輪が付いたものが一般的でしたが、より効果的な方法が“ペダルなし”であるとたどり着くまでには、実に2世紀もの時間がかかっていました。

 ひと昔前まで自転車練習の定番だった“補助輪”が日本で登場したのは1960年代です。この頃、高度経済成長により自動車が普及。大人の移動手段が自転車から自動車に移る中、日本で最初の補助輪製造が始まっています。

 幼児用といえば三輪車しかなかった時代に、革命的だったのが、ミヤタが1969(昭和44)年に発売した「ピーターパン」です。補助輪に加え安定性を高める極太タイヤを装着、壁にぶつかった時にガードとしても機能する大型の円形ハンドルや、足を怪我しないためのチェーンガードを装備し、幼児用自転車の先駆けとなりました。子供の安全性を重視したこの自転車は累計200万台以上のヒット商品に。

 さらにこの頃、ナショナル自転車(現・パナソニック)からも補助輪・円形ハンドルが特徴の「ミニポピー」が発売され、補助輪文化の普及に貢献しています。それ以降も、親が後ろから自転車を押すためのアシストバー、海外では牽引して走行するためのトレーラーフックやサスペンション機構など、様々な工夫を凝らした幼児用自転車が登場しています。

練習法は1800年代に逆戻り?

 そうした補助輪に次ぐ革命となったのが、2007(平成19)年にアメリカで誕生した「ストライダー」です。ペダルを省き、子供が地面を蹴って進むという発想は、世界で受け入れられ“ペダルなし”自転車の先駆け的存在になりました。これまでの「タイヤを増やして(太くして)安定感を高める」「大人が支える」などとは全く違ったアプローチで、子供の自転車練習を促進しています。

「ストライダー」をはじめとしたキックバイクの特徴は、余計な操作は省き、子供のバランス感覚を鍛える点に特化したことです。では、“ペダルなし”自転車はどれほど効果を挙げているのでしょうか。

 2018年に日本トイザらスが行った、20歳以上の親世代と最近の子供の「自転車(二輪)デビュー」を比較した調査では、平均年齢が5.7歳から4.9歳に下がっているそうです。その理由の一つこそ、キックバイクが普及したことと見られています。

 シンプルながら画期的な発想と評価されている「キックバイク」ですが、実はこの手法は原点回帰とも言えるものでした。

 1817年にドイツで、自転車の祖先とされる「ドライジーネ」という乗りものが誕生しています。当時ペダルは開発されておらず、地面を蹴って進む“ペダルなし”自転車でした。これが約200年もの時を超え、幼児用自転車として定番化しているのです。