世界最大最強といわれる伝説の蒸気機関車、アメリカの4000形蒸気機関車。「ビッグボーイ」の愛称で知られる同車で唯一、動作可能な4014号機が2021年夏、2年ぶりに運転とのこと。どのようなSLなのか、どこを走るのか見てみます。

伝説の蒸気機関車「Big Boy」

 アメリカの大手鉄道会社であるユニオンパシフィック鉄道が、世界最大級の蒸気機関車「Big Boy(ビッグボーイ)」を久しぶりに運転させると発表しました。日本でも蒸気機関車、通称SLは今でも鉄道ファンの人気を集めていますが、アメリカ人にとってビッグボーイは別格の乗りもののようです。

 元来、アメリカではロッキー山脈越えや長距離貨物輸送を行う関係から、超大型の蒸気機関車が多数製造されてきたため、最大の蒸気機関車形式に関しては諸説あります。ただ、そのなかでも知名度と大きさにおいて最大最強との呼び声高いのが、ユニオンパシフィック鉄道で活躍していた超大型の4000形蒸気機関車、通称「ビッグボーイ」です。

 ビッグボーイこと4000形蒸気機関車が生まれたのは1940年代のこと。当時、大陸横断鉄道を運行するユニオンパシフィック鉄道では長大編成の貨物列車を多数運行しており、その総重量は3600tに達するほどでした。ロッキー山脈の一部に相当するユタ州の山地を通過するためには補機(補助機関車)を連結して重連運転を行っていましたが、その重連を省略し、運行効率とスピードアップを図るために、単機でけん引することを目的に設計されたのが4000形だったのです。

 4000形蒸気機関車は、炭水車まで含めると全長は40.47m、総重量は548tに達します。4軸の動輪を二組持ち、アメリカ式の記載法で4-8-8-4という軸配置が採用されました。

 これは、勾配区間の牽引力と高速走行時の安定性を両立させるための設計で、最高速度は130km/h。その巨体に似合わないほどの高速性能は、常用速度100km/h前後の運転の際にも余裕を持たせるためでした。

 なお速度65km/hにおける最大出力はおよそ6000馬力。これは日本最強の蒸気機関車であるD52の約3.5両分に匹敵します。

 ビッグボーイこと4000形蒸気機関車は、1941(昭和16)年と1944(昭和19)年に合計25両が製造され、1961(昭和36)年まで活躍しました。そのうち8両が米国各地の博物館などで保存されています。

 今回、走行するのは8両のなかで唯一、動態保存されている4014号機です。

2019年に動態復活したビッグボーイ

 ビッグボーイの4014号機は運用終了後、カリフォルニア州の機関車保存団体に寄付されましたが、程度がよく、なおかつ保存団体の維持管理が良好に行われていたため、大陸横断鉄道150周年記念事業の一環として動態保存されることが決まり、ユニオンパシフィック鉄道に返還されました。

 修復にあたって同機は、南カリフォルニアからワイオミング州シャイアンに移動、2016(平成28)年から3年がかりで復元作業が行われ、2019年に動態復活を果たします。以来、4014号機はシャイアンをベースにイベントなどで運転されてきました。

 ただ、2020年は新型コロナの影響で4014号機が運転されることはありませんでした。そのため、運転は2年ぶりになるといいます。

 ユニオンパシフィック鉄道が発表した4014号機の2021年夏のツアー日程によると、8月5日よりおよそ1か月かけて同鉄道の路線でロッキー山脈の東側部分をぐるりと一周するコースが予定されているとのこと。

 4014号機は前述のとおり、ワイオミング州シャイアンに配置されていますが、そこからネブラスカ州、カンザス州、オクラホマ州、テキサス州、ルイジアナ州、アーカンソー州、ミズーリ州、コロラド州を巡り再びワイオミング州に戻るというルートで、途中訪れる各都市では公開行事も行われる予定です。

 なお、沿道に集まる鉄道愛好家の安全対策はアメリカでも課題となっていて、ユニオンパシフィック鉄道では以下3点の注意事項を掲げて呼び掛けを行っています。

1:線路から少なくとも25フィート(約7.6m)離れること。
2:橋梁や側線も含めて鉄道会社の用地には立ち入らない。
3:使われていないように見える線路も列車が走る場合があるため、廃止路線と考えてはならない。

 前出のとおり、昨年は新型コロナの影響で4014号機が運転されることはありませんでした。今年再開が発表された同機の運転計画は、コロナ後の復活が顕著となりつつあるアメリカ経済を象徴しているように筆者(細谷泰正:AOPA-JAPAN理事)には感じられます。