さいたま市にある鉄道博物館で行われた警察車両イベントで、いまも現役バリバリの古参パトカーが展示されました。四半世紀近くにわたって第一線で活動し続ける埼玉県警の「ランドクルーザー」を見てきました。

埼玉の山の守り神「70系ランドクルーザー」

 さいたま市大宮区にある鉄道博物館で2023年5月13日(土)、第13回「けいさつ車両展」が開催。パトカーや白バイなど警察車両の展示が行われました。日本屈指のスーパーパトカー日産「スカイラインGT-R」、交通取締用の覆面パトカー スバル「WRX S4」、機動隊の高性能救助車「ウニモグ」など、珍しい車両も勢ぞろいしました。

 そのなかで、“最も遠く”から参加していたのが、トヨタ「ランドクルーザー」ベースの山岳救助車です。

 このクルマは、埼玉県警の山岳救助隊で運用されているもので、配置先は県西部の小鹿野町に所在する小鹿野警察署とのこと。そこから片道80kmあまりを移動して鉄道博物館まで来ていました。

 埼玉県警の山岳救助隊は、山岳遭難事故などに迅速かつ的確に対応するため、1991(平成3)年3月14日に発足した部隊です。2023年現在、小鹿野警察署と隣の秩父警察署、双方の勤務員32名で構成されており、山岳救助車として「ランドクルーザー」を2台運用しているといいます。

 2台のうち車歴が長いのが今回展示された方で、歴代ランドクルーザーのなかでも特に人気の高い「70系」です。ヘビーデューティ仕様を基に所要の改装を施したもので、2000(平成12)年に配備されています。

 ボンネット前端にはトヨタ純正のウインチを備え、大型のフロントバンパーにはシビエ(CIBIE)の大径フォグランプを設置。またルーフ上部には大型キャリアを備え、そこへ装具を積み降ろししやすくするためのラダー(梯子)を後部扉に装備していました。

車歴23年、でも走行距離は驚くほど少ない

 車内を見せてもらうと、まさにひと昔前のクルマといった趣き。トランスミッションは副変速機付きの5速マニュアルで、パワーウインドウはもちろん、エアバッグも装備されていません。ドリンクホルダーも見当たらず、そのためにダッシュボード上に後付けのドリンクホルダーを設置していたほどです。

 しかし、隊員の話によると走破性は高く、ディーゼルエンジン搭載のためパワフルで救助車両としての信頼性はバツグンとのことでした。

 走行距離は23年使い続けている車両としては驚異的に少なく、「けいさつ車両展」開催の時点で5万691km。車内は前述のとおりデザインや構造こそ古めかしいものの、きれいに保たれており、山岳救助隊員らが大事に乗っていることがわかりました。

 外観を改めて見まわしてみると、運転席側、すなわち車体右側の所属表記は、これまた昨今めっきり見かけることが少なくなった「逆向き文字」です。右から左に読ませる形のため「察警県玉埼」「隊助救岳山」となっていましたが、これも古豪の趣きを感じさせます。

 先月(4月)18日には、県警山岳救助隊の担当エリアにある秩父・両神山で山開きが行われており、登山シーズンを迎えるようになりました。埼玉県内でもすでに2023年4月末時点で、山岳遭難が20件ほど起きており、死者も出ています。

 このベテラン、70系ランドクルーザー山岳救助車はまだ退役のうわさは出ていないそう。とはいえ、同車が大過なく退役を迎えることを心から祈る次第です。