実に75年ぶりの「新設の路面電車」となる「芳賀・宇都宮LRT」が8月に開業を迎えます。いったいどのような路線なのでしょうか。

宇都宮駅から東側エリアへ、鬼怒川も大胆に渡る

 栃木県・宇都宮エリアで整備中の次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」が、8月26日に開業することに決まりました。

 実に75年ぶりとなる「新設の路面電車」ですが、「LRT」としての新路線は日本では初のこと。いったいどのような路線なのでしょうか。

 芳賀・宇都宮LRTは、宇都宮駅東口から、鬼怒川を越えたところにある芳賀町の「芳賀・高根沢工業団地駅」までをむすぶ、14.6kmの鉄道路線。車両は黄色と黒のツートンカラーで、流線形が特徴の連接低床車「HU300形」。3両編成17本が運用されます。「ライトライン」という愛称が付けられています。最高速度は、法定の上限である40km/hとなっています。

 駅(停留場)は起終点を含めて19か所設置されます。起点から順に宇都宮駅東口、東宿郷、駅東公園前、峰、陽東3丁目、宇都宮大学陽東キャンパス、平石、平石中央小学校前、飛山城跡、清陵高校前、清原地区市民センター前、グリーンスタジアム前、ゆいの杜西、ゆいの杜中央、ゆいの杜東、芳賀台、芳賀町工業団地管理センター前、かしの森公園前、芳賀・高根沢工業団地。「長い駅名」もそこそこあります。

 全線乗り通すと所要時間は44分。なお日本のLRTでは珍しい快速運転も行われ、最大7分短縮されるといいます。途中の平石・グリーンスタジアム前は追い越しが可能な2面4線構造となっています(後者は上下線でホームが別の位置)。なお快速の停車駅や運行ダイヤは未発表で、開業当初は運賃収受等の事情から一定期間「普通のみ」で運転される予定です。

 駅間距離が一番短いのは宇都宮駅東口〜東宿郷〜駅東公園前で、それぞれ350mほど。反対に長いのは、鬼怒川をまたぐ平石中央小学校前〜飛山城跡で、約1.8km離れています。

 運賃は150円〜400円で、距離に応じて決まります。運行頻度はラッシュ時6分間隔、それ以外は10分間隔です。朝6時台から、夜11時台まで運転されます。平日1日あたり16300人の利用を見込んでいます。

 事業費は約684億円。2018年に事業化し、5年の工事を経て、いよいよ開業の時を迎えます。なお、宇都宮駅から西側エリアに延伸する構想もあります。

「エモい車窓風景」どこにありそう?

 風景のハイライトと言える場所は以下が挙げられます。

●宇都宮大学陽東キャンパス〜平石
 路面電車で走ってきた鬼怒通りから高架橋で南側へS字カーブし、専用軌道で平石駅へ下りてくる区間。

●平石駅
 路面電車では珍しい、待避線つきの2面4線ホーム。さらに平面分岐して、隣接の車両基地へ2本の引き込み線が伸びていく。

●平石中央小学校前〜飛山城跡
 川幅の広い鬼怒川を、コンクリート橋梁でダイナミックに渡っていく区間。周囲は田園風景が広がり、都会的な低床路面電車とのギャップも魅力的。

●芳賀町工業団地管理センター前〜かしの森公園前
 V字谷を越えるため急勾配の下り・上りが連続。勾配は60パーミルで、カメラで覗くと絶壁が立ちはだかるように見えるほど。クライマックスとも言うべき撮影ポイントです。