実はドイツだけじゃない安全保障問題に。

高額な給金も大きな魅力?

 ドイツのボリス・ピストリウス国防相は2023年6月3日、アジア安全保障会議に出席した際、中国の李尚福国防相との会談において、中国軍パイロット育成のためにドイツの退役軍人をスカウトすることをやめるように要請したと記者団に明かしました。

 これは、ドイツ空軍のパイロットだった退役将校数人が中国で教官を務めていると、シュピーゲル誌が報じたことを受けたものです。ピストリウス氏は「即刻やめて欲しい」と要請しましたが、李氏は反論こそしないものの、重要性はあまりない問題としたようです。

 中国が北大西洋条約機構(NATO)の構成国など、いわゆる西側陣営のパイロットをスカウトしているという問題は2022年から表面化しており、機密漏洩など安全保障上のリスクとして懸念されています。

 実際にアメリカ軍の元海兵隊パイロットが、中国軍の空母パイロットに着艦訓練を行い、同国の軍備管理法に違反したとしてオーストラリアで逮捕されたこともあります。このパイロットの起訴状では、2010年から2012年の間に3回、中国人へ南アフリカの操縦士育成学校で訓練を行ったことも明らかになっています。

 なお、ドイツ空軍ではパイロットが41歳になると最終月給の半分を年金として受け取ることができるものの、ほとんどのパイロットはその年金では足りず、再就職先をさがすそうです。一部報道では、中国政府が提示する金額は、オイルマネーで潤うカタールの操縦士育成学校の給金より高額だそうで、そこを魅力としているパイロットも多いとみられています。

 ちなみに、中国政府は最近、空母艦載機の訓練を重要視しており、アメリカ海軍やフランス海軍でカタパルト発艦の経験がある人材を特に狙っているとの話もあります。