地域の特性などにあわせて、1台ずつ完全受注生産で造られている消防車。その値段はいくらぐらいなのでしょうか。一般的なポンプ車から、最も高そうなはしご車まで調べてみました。

消防車は完全カスタマイズ仕様

 火災や事故、災害などの際にいち早く駆けつけ人命救助にあたる消防車は、市販の乗用車のように全国統一された仕様があるわけではありません。実は1台1台すべてが完全オーダーメイドです。

 全国には700を超える消防本部があり、約2200もの消防団が編成されていますが、新たな消防車が必要になった場合には、すべての組織が導入する際に「仕様書」を作って詳細を検討、艤装メーカーと打ち合わせしながら予算要求をし、入札・契約という流れをおおむね採っています。

 というのも、ひとつの消防本部のなかでも管轄区域によって特性は異なり、高層建築が多い地域や木造住宅が多い地域、工業地帯なのか、山林地域なのか、はたまた空港や大規模港湾があるのか、もしくは離島なのかなど、その特徴や傾向は千差万別だからです。

 このような背景から、消防車は配備先の特性などにあわせて乗車人数から排気量(搭載エンジンの大きさ)、水槽(水タンク)の有無、ポンプ駆動装置の構造、収納庫容量、扉の開閉方法まで細かくカスタマイズされています。

 日本の消防車の半数強を造っているモリタによると、ポンプ車の場合、消防本部における年度予算の関係から、例年4月から7月にかけて入札があり、受注と艤装などを経て、12月から翌年2月に納車するスケジュールが多いといいます。

 では、消防車の値段は1台あたり、いくらぐらいなのでしょう。

レスキュー車はおいくら?

 前出のモリタによると、ポンプ車の相場は3000万〜4000万円とのこと。なお、木更津市が公開している情報によると、2017(平成29)年度に購入した水槽付消防ポンプ車は4428万円だったそうです。

 ちなみに、近年は必要に応じて、水と圧縮空気泡消火装置「CAFS」を用いた消火泡に切り替えられるポンプ車が増えています。CAFSとは、水に少量の泡消火薬剤を加え、圧縮空気を送り込んで発泡させる装置。水でなく泡であることから飛び散りが抑えられ効率良く消火活動ができるとともに、使用する水も少なくできるため水損被害も軽減できるなどのメリットがあります。

 ポンプ車などよりも高額な車両も。救助工作車(いわゆるレスキュー車)や、はしご自動車(同はしご車)などが挙げられます。

 まず、救助工作車ですが、静岡市が公開している2019年度の入札結果によると、吉田消防署向けの「救助工作車(II型)」は9595万円でした。入札に参加したほかのメーカーの見積金額はおおむね1億円前後だったため、これぐらいが妥当なのでしょう。

 なお、救助工作車(II型)というのは、レスキュー車と呼ばれる消防車のなかでは最もポピュラーなもので、4〜7tクラスのトラックシャシーを用いて、ホイールベース3m以上、キャビンはダブルシート、発電照明装置を標準で搭載しているものになります。

やっぱり億超え「はしご車」どこまで届く?

 それでは、消防車両のなかでも屈指の大きさを誇るはしご車の金額を見てみます。

 木更津市の公開情報によると、2018年度に購入した40m級はしご付消防自動車は、価格が2億2248万円だったそうです。

 ちなみに、はしご車は15m級でおおむね4〜5階、35m級で9〜11階、40m級で11〜13階、50m級のものであれば15〜18階の高さまで対応します。

 なお、日本国内で最も高いのは54m級はしご付消防自動車です。これは石川県金沢市や愛知県岡崎市、徳島県徳島市、埼玉県朝霞市(埼玉県南西部消防局)などに配備されています。

 消防車は金額だけで捉えると、高く感じてしまうかもしれません。しかし、万一の際にひとりでも救うことができたら、整備にかかったコストは賄えるとも言われています。それだけ人命は尊いということ。出動しないに越したことはありませんが、いざというときのために全国の消防組織はこれら消防車を揃え、常に訓練をしているといえるでしょう。


※誤字を修正しました(6月12日9時23分)。