2024年1月に初飛行から50年を迎えたF-16「ファイティングファルコン」ですが、まだ新造機が量産され続けています。もうすぐ傑作機F-4「ファントムII」の生産数を上回りそうな同機の魅力は、どこにあるのでしょうか。

初飛行から50年迎えたF-16戦闘機

 世界的ベストセラー戦闘機の1種であるアメリカ生まれの戦闘機F-16「ファイティングファルコン」。同機は、2024年2月現在も6か国から新規生産のオーダーを抱え、残受注数は見込みを含め約200機にもなるとか。しかも、今後5年間でさらに100機以上の需要が見込まれるなど、その量産計画に終わりの兆しは見えません。

 いまだ、多くの国の次期主力戦闘機の調達計画にも名を連ねる同機ですが、その初飛行は1974年1月であり、今年で50周年を迎えています。実は、F-16は今から6年ほど前に一旦生産を終了したものの、2023年に引き渡しを再開し、2025年度末までに年間最大48機を生産する見込みです。

 年産48機という数字は、F-16の派生型の1つである三菱F-2戦闘機が、約10年をかけて94機を量産したことを考えると驚異的です。この数値は、2024年時点においてF-35の年産200機弱に次ぐものだそう。いうなれば、F-16はもはや旧式機の部類に入るのに、なぜこんなにも人気があり、売れ行きが衰えないのでしょうか。

 F-16が売れ続ける理由、それは登場時点から卓越した飛行性能を有しており、加えて様々なアップグレードが逐次施されているため、第一線級戦闘機としても使える能力を維持し続けていることにあります。

「ステルス性ないF-35」と呼ばれる最新型

 現在の主力製品ともいえる最新型は、F-16ブロック70/72と呼ばれる性能向上型です。F-16Vとも通称されるこのタイプは、新型のレーダー・センサーに加え、ネットワークシステムやミッションコンピューター処理装置を持っています。ゆえに、「ステルス性のないF-35」とも形容されるほど高性能な機体で、だからこそ第一線級の戦闘機として十分すぎる能力を持っているといえるでしょう。

 戦闘機そのものは、ミサイルなどの各種武装を運ぶだけの乗りものに過ぎませんが、これまで重ねた量産効果により、機体そのものが非常に安価な点もポイントです。しかも、アメリカ製の多様かつ優秀なミサイル類を自由に選択でき、空中戦や対地攻撃、対艦攻撃、偵察任務など、あらゆる作戦に適応可能な多用途性を持っています。

 端的にいえば、F-16Vは「安価なのに何でもでき、しかも最新鋭機に劣らない」機体で、だからこそ世界の戦闘機市場を制し続けているのです。

 ロッキード・マーチン社は2017年に、フォートワース工場におけるF-16の生産を4588号機(うち3620機がフォートワース製)で完了し、一旦は量産ラインを閉鎖しました。しかし、このときライン閉鎖した理由は、フォートワース工場を最新鋭のF-35「ライトニングII」戦闘機の生産拠点にするための措置であり、F-16の生産はサウスカロライナ州のグリーンビル工場に移転のうえ再開されています。

F-4「ファントムII」の生産数を上回るか?

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどの影響により、グリーンビル工場製の機体引き渡しは大幅に遅延しましたが、2022年に同工場でロールアウトしており、その後は比較的順調に推移しています。

 2024年2月時点でのF-16Vの発注状況は、バーレーン、ブルガリア、スロバキア、台湾、モロッコ、ヨルダンから計148機で、まもなくトルコの40機がこれに加わる見込みです。また、既存の古いF-16A/B/C/DをF-16V仕様にアップグレードする改修プログラムが、新規生産よりも先行して実施されています。

 機数が膨大であることと運用期間が長く、予備保管されている機体も一定数あることから、現役使用されているF-16の数というのは推定3100機と推測されます。ただ、今後もウクライナを始めとして中古機(現在のところF-16Vではない)を調達する国が複数控えているため、ユーザー数は増えることはあれど、減ることはなさそうです。

 ちなみに、F-16の総飛行時間は現時点で1950万時間にも達するそうです。なお、新規生産されるF-16Vの設計耐用年数は約60年とされていることから、それを考慮すると、F-16の歴史はまだ折り返し地点さえ過ぎていないと言えるでしょう。

 そこから推察すると、名機と謳われたF-4「ファントムII」戦闘機の生産数5100機をF-16が超えるのも、それほど遠い未来ではないかもしれません。