ホンダジェットは成功作といえるほど堅調な売上を獲得しています。にも拘わずアジア最大のシンガポール航空ショーでも“常連”で展示されています。なぜでしょうか。

200機超えの売上 ホンダジェット

 ホンダグループのホンダ・エアクラフト・カンパニーが米国で開発・生産するビジネスジェット「ホンダジェット」シリーズは、2010年に量産型初号機が初飛行して以降、堅調に販売を重ね、2024年現在で200機以上が世界で売れています。もはやこの機は“成功作”といってもよいほどです。

 2024年2月に開催されたシンガポール航空ショーでも、初期型に比べて航続距離を伸ばすなどした能力向上型の「ホンダジェット エリートS」が展示されました。

 同航空ショーは西暦の偶数年に開かれ、ホンダジェットの展示は2018年に始まり今回が4回目。実績を着実に積んでいると見られます。主翼の上面にエンジンが付く独特の姿は、小型の機体ながら会場でも目立ちました。

 機体の小ささから分かる通り、ホンダジェットはビジネスジェット機の中でも最も軽い「VLJ(ベリー・ライト・ジェット)」(最大離陸重量が4.54t未満)に分類されます。

 そのようななかでも客室を快適かつ機能的に活用しようと、テーブルは昇降ドア内側に設けられたタラップ(乗降用の階段)の裏側を利用するといった工夫が凝らされています。

座席も4席配置の場合は、向かい合って座る際に膝が当たらないよう十分に間隔が開けられ、ほかのビジネスジェット機と同じように、通路も一段下げて後部のトイレまで通されています。

 ここまで好調に売れているにもかかわらず、なぜシンガポールにホンダジェットを何年も連続して展示する必要があるのでしょうか。

「ホンダジェットの受注数」実は国によって傾向あり?

 ホンダジェットがシンガポール航空ショーの“常連”であるのは、アジア地域での販売を増やしたい戦略があるからです。

 ホンダによるとこの機のもっとも多い納入先は北米、それについでアジア地域とのこと。現在最大のカスタマーは日本で、2018年に1号機が納入されて以降16機です。今後も成長が見込まれるアジアにおいて、日本以外に広く販売を拡大させるため、アジア最大の航空ショーであるシンガポールで出展を続けているのです。

 もちろんホンダ側は、ただ売り込みを続けているだけはなく、機体のシリーズ化にも取り組んでいます。

2023年10月には、2026年の初飛行を目指す新型機の名称を「ホンダジェット・エシュロン」と発表しました。「エシュロン」は、これまでより最大離陸重量が重くなる一つ上の「LJ(ライト・ジェット)」にクラス分けされる機体で、11人を乗せて北米大陸を横断できる性能となります。

 開発と並行して、今後の成長市場であるアジアに照準を定めていることから、将来は日本のみならず近隣国でもフロントに「H」を付けた自動車と同じようにホンダジェットを見ることができるかもしれません。