東武伊勢崎線の獨協大学前駅が最寄りとなる草加松原団地が大きく姿を変えています。駅名も「松原団地」だった頃とは一変し、利用者のさらなる増加が見込まれます。各駅停車のみの駅は、今後どう変わるのでしょうか。

20年以上におよぶ団地再生事業

 東武スカイツリーライン(伊勢崎線)の獨協大学前駅が最寄りとなる草加松原団地(埼玉県草加市)は、かつて「東洋一のマンモス団地」と呼ばれた巨大な団地ですが、現在は大きく姿を変えつつあります。2024年5月9日には、草加市と獨協大学、都市再生機構(UR)、東武鉄道、トヨタホームが5者連携協定を締結しました。今後は主にコミニュティ形成など、主にソフト面の街づくりが加速する見込みです。

 松原団地は1962年、広大な水田地帯に敷地面積約54ha、324棟5926戸の巨大団地として建設。同年12月には最寄りとして東武線に「松原団地駅」が開設されました。これが2017年に改称し、獨協大学前駅(副駅名は草加松原)となっています。
 
 団地の建て替えは2002年から5期に分けて段階的に進められ、UR賃貸住宅は既に「コンフォール松原」として生まれ変わっています。敷地の一部は東武鉄道やトヨタホームなどの民間事業者に譲渡され、現在はマンションや戸建て住宅の開発が行われている最中です。

 2023年には、駅から離れた4期エリアに、獨協大学が学術研究や地域との交流の場として開設したコミニュティスクエアや、東武鉄道の商業施設「トーブ イコート」が整備されました。このエリアは駅から徒歩10分ほどかかりますが、周辺には東武鉄道が参画する分譲マンションや戸建て住宅が立地することから、商業施設の整備を決めたといいます。

 さらに、駅から最も離れ、団地再生事業の総仕上げとなるのが5期エリアです。ここにはトヨタホームが東武鉄道などと連携し、省エネ性能に優れた373区画の戸建て住宅を開発します。戸建て住宅は統一感のあるデザインで、電線が地中化されるなど街全体が再構築されます。

団地の再生が順調に進行 駅利用者も増加…?

 獨協大学前駅のホームに降りると、多くの学生が改札口に向かっていき、「大学の街」であることを実感します。街をひと通り歩くと、かつての「団地」のイメージとは大きく異なり、多世代が住む文教都市・スマートシティに生まれ変わりつつあることがわかります。

 今後は東武の分譲マンション「ソライエ テラスウエスト」の竣工などが控え、最終的には松原団地エリアの住宅は約6000戸となり、建て替え前と同規模になります。そうなると、駅の利用者はさらに増加が見込まれます。

 さて、獨協大学前駅は松原団地駅の時代から、普通列車のみが停車しています。隣の草加駅に特急や座席指定列車「THライナー」以外の列車が停車することもありますが、伊勢崎線で普通列車のみ停車する駅としては2番目に利用者が多い駅です。1990年代をピークにいったん減少したものの、コロナ前は増加傾向にあり、1日平均の乗降人員が6万人に迫る勢いでした。

 東武鉄道はこれまで、野田線の清水公園駅や日光線の南栗橋駅など、住宅開発を進めている駅に特急を停車させて有料着席サービスを提供する施策を展開してきました。獨協大学前駅の場合は「現時点では特急などを停車させる予定はありませんが、今後の需要次第では検討していきたいと考えています」(広報部)と話します。

 獨協大学前駅は複々線の内側にあるため、停車が実現するとすれば、日比谷線に直通する「THライナー」が考えられるのではないでしょうか。