東京都心から続く青梅街道が、突如として車線減少する箇所があります。それは別の道路が分岐する“はず”の場所だから。東京の道路計画のなかでも重要な位置づけなのに、現状ほとんどできていない道路です。

青梅街道が突然車線減少 その場所は

 新宿から北多摩地域へと続く主要街道のひとつ「青梅街道」。東京23区内は4-6車線、練馬区から西東京市に入ると6車線になるものの、市内で唐突に車線が減少し、田無以西は旧道と新道(新青梅街道)に分かれて並行していきます。

 23区内から西東京市までの青梅街道で車線が減えたり増たりする箇所は、交差する主要道路に応じて「この交差点からこの交差点まで」という形になっていますが、西東京市内の「西武柳沢駅南」交差点を過ぎて6車線から4車線に減じる箇所は、中途半端な感を否めません。

 実はここは交差点の予定地で、ある重要な幹線が分岐する計画があるのです。

 その幹線とは「新五日市街道」。青梅街道の南側、玉川上水沿いを通ってあきる野市(武蔵五日市)方面へ通じる五日市街道のバイパスです。西東京市の道路計画図などを見ても、この新五日市街道が当たり前のように描かれているものがありますが、実際には全く整備が進んでいません。

 新五日市街道は、東京都が整備推進を掲げる「多摩東西主要4路線」、すなわち新青梅街道、新五日市街道、東八道路、新奥多摩街道のひとつに数えられますが、そのなかで唯一、“幻の路線”状態が続いています。

 とはいえ、「将来こうなるのか」と分かる、すでに開通している箇所が、いくつかあります。

ここが「新五日市街道」なのか! わずかな開通区間とは?

 その一つが、西武新宿線の花小金井南口(小平市)で東西に延びる約300mの道路。大きな中央分離帯のある道路が、小金井街道などから南口バスロータリーのアクセス路として整備されています。小金井街道から先もわずかに用地が確保されているものの、いまは自転車駐輪場として機能しています。

 このほか、同じ小平市の武蔵野美術大学構内を含む約500m、立川市北部の都営立川松中アパートを貫く「松中団地通り」約800mの区間も新五日市街道に該当しますが、いずれも短い区間で、とうてい1本の街道として認識できるものではありません。

 計画上の新五日市街道は、青梅街道から分岐したのち、現五日市街道の北側に並行し、立川市内で現道に合流、拝島駅の西側で国道16号と一部重複しつつ、そこから武蔵五日市駅前へ通じます。国道16号から武蔵五日市駅までは拡幅された4車線道路として完成しており、「睦橋通り」の愛称がついています。

 2024年現在、新五日市街道として事業が進んでいるのは国道16号の東側、米軍横田基地を通る福生市内の1.1km区間で、ここは現五日市街道を拡幅しています。

 このほか2022年から、バイパス区間にあたる小平市内の府中街道に接続する444m区間も事業が始まりました。ここは地下を通るJR武蔵野線を地上で横切ります。

 他方、その計画がほとんど進んでいないのが、バイパスの起点部にあたる西東京市内です。前出した青梅街道の6車線部は新五日市街道が重複する区間にあたりますが、青梅街道から分かれたバイパス部は未着手で。その計画線は田無駅南側の住宅街を貫くことになります。

 市は2024年1月に道路整備計画の素案を公表し、市民からは「なぜ、優先整備路線になっている新五日市街道が事業化にならないのか」という意見のほか、もはや必要なしという反対意見も寄せられています。これに対し市は「東京の発展に寄与する路線として、今後も必要であると評価されています」「早期事業化を施行主体である東京都に要請します」と回答しています。