戦闘機などでちょっとした手荷物を積むのに用いられる「トラベルポッド」ですが、F-35用のものがこのたび披露されました。ただ、F-35ゆえに既存のものは使えず、かつ一般人はまず見ることができないそうです。

戦闘機乗りにはオリジナル荷物入れが必須なワケ

 アラスカ州にあるアメリカ空軍アイルソン空軍基地はこのたび、F-35A「ライトニングII」戦闘機専用のトラベルポッドが納入されたと、公式SNSで明らかにしました。

 戦闘機は輸送機と違って荷物を搭載する貨物スペースがなく、パイロットが荷物を積む場合にはコクピットと空いた空間を利用するしかありません。そのような戦闘機の荷物積載スペースを確保するために作られた容器がトラベルポッドで、現在では多くの種類の戦闘機で実際に使われています。通常は兵器や燃料タンクを搭載するパイロンに取り付けられ、その外見もドロップタンクや爆弾とよく似ています。

 ただ、F-35はステルス機のため、通常は機外にトラベルポッドを含めた装備品を搭載することはできません。そこで、アドバンスド・トラベルポッドは機体内部に設けられた兵器搭載用のウェポンベイの中に搭載できるようになっています。これにより、この機体が持つ高いステルス性や飛行特性に影響を与えることなく利用することができます。

 最新鋭ステルス戦闘機に合わせてつくられたこのトラベルポッド、名称にわざわざ「高度な」「進歩的な」という意味の「アドバンスド」というフレーズが付いています。その構造は一体どのようになっているのでしょうか。

一般人が目にすることは限りなく難しい理由

 F-35A用のアドバンスド・トラベルポッドを開発・製造するのはアメリカのキオマック社です。メーカーの公式サイトによれば、型式名称はMXU-1072/Aとなっています。

 形は筒状で、全長は10フィート(約3m)。側面に2枚の出し入れ用の大型ドアがあるものの、後部の蓋部分を取り外せば、長尺物をスムーズに入れることも可能です。内部の収納スペースには、搭載物を固定するためのレールとピンも下側に用意されており、機体が横転するなどの激しい動きをしても、内部の物品が荷崩れしないようにデザインされています。

 最大積載量は300ポンド(約136kg)で、このポッドをF-35は左右のウェポンベイで2個まで搭載することができます。

 このアドバンスド・トラベルポッドは、F-35に関するすべての運用計画を管理する「F-35『ライトニングII』共同計画事務局」(JPO)の承認を受けており、キオマック社も700万ドルの契約を結んでいます。そのため、今後は継続して部隊への納入が続けられる模様で、今回アイルソン空軍基地が行った投稿もその一環だったのでしょう。

 アメリカ空軍でのF-35の配備拡大に伴い、さまざまな場所でアドバンスド・トラベルポッドが多用されるようになるのは間違いないでしょう。とはいえ、この新装備も、搭載されるのは機内であることから、それが収納されている限りは外部の人間が使っている姿を見るのは難しいかもしれません。