エアバス社の工場では、まず日本では見ることができない不思議な形の飛行機を日常的に見ることができます。胴体の上がコブのように大きく盛り上がった輸送機「ベルーガ XL」です。この機体はどのようなものなのでしょうか。

2024年6月に「全機就航」

 ヨーロッパの航空機メーカー、エアバスは2024年6月、同社が保有するユニークな胴体形状をもつ貨物機「ベルーガXL」の最後の1機が就航したと発表しました。これで「ベルーガXL」は当初の計画通り、6機体制で運用される予定です。

 ただ、少なくとも現状では、そのユニークな機体を日本で見られる確率は限りなくゼロに近いといえるでしょう。この機はどのようなものなのでしょうか。

 この機の最大の特徴といえば、胴体の上がコブのように大きく盛り上がっていること。このコブはまるごと巨大な貨物室となっています。貨物室は最大で幅約8.1m、高さ7.5mの物体が入る大きさ。そしてなんといっても、その強みは長尺貨物への対応力で、約47mの物体が入る奥行きをもっているのです。

 なお、同機の全長は約63m、全幅は約60m。このサイズ感は、ジェット旅客機であれば標準的ともいえますが、コブの高さがあるためか、それ以上に大きく見えます。

「ベルーガXL」のデビューは2020年。ベースとなっているのは、日本でも遭遇率の高いエアバス社の双発旅客機「A330」ですが、その胴体上部はもちろんのこと、尾翼などの胴体後部、胴体下部のコクピット部分など、各所に大きな改造が施されているようで、パッと見たところA330の面影はありません。

 この不思議な飛行機は、どのように使われるのでしょうか。用途を知ると、日本での遭遇率が限りなくゼロに近い理由もわかります。

なぜ「ベルーガXL」日本では見られない?

 エアバス社の工場はヨーロッパ各地に11か所点在しており、それぞれで各部分のパーツが組み立てられたのち、最終組立工場へと運ばれます。「ベルーガ XL」は、この工場間で旅客機のパーツを輸送すべく作られました。

 こういったパーツ輸送用の巨大輸送機がエアバス社で用いられるのは、「ベルーガ XL」が最初ではありません。この歴史は1970年代の同社草創期、A300旅客機のパーツ輸送を目的としたターボプロップ輸送機「スーパーグッピー」の導入から始まり、1990年代に入るとA300をベースとした「ベルーガST」がデビュー。「ベルーガ XL」はいわば3代目にあたる存在です。

「ベルーガ XL」は、業績を伸ばし続けるエアバス社の生産率向上に対応するため、そして同社の双発機「A350」シリーズの立ち上げにともない開発されました。

 スペックの向上も図られています。これまでの「ベルーガST」と比較し30%輸送能力がアップ。「ベルーガ ST」では1枚のみだったA350の主翼を、「ベルーガ XL」では2枚同時に運ぶことができます。また、ターンアラウンドタイム(到着から次のフライト出発までの折り返し時間)も「ベルーガ XL」は1時間。既存の「ベルーガ ST」の半分の時間まで短縮されているとのことです。

 ちなみに「ベルーガ」は日本語でいうと「シロイルカ」の意味。「ベルーガ XL」には目が描かれ、機首のコックピットの窓あたりからは「口」をイメージした黒いラインが引かれています。

 なお、「ベルーガ XL」のデビューに伴って、先代の「ベルーガST」は完全にお役御免となったかというと、そうではありません。

 エアバスでは、パーツ輸送業務から外れた「ベルーガST」を利用し、その胴体を生かして他社からの大型貨物の空輸サービスを提供する事業をスタート。サービス開始発表時、これらの機体の離着陸回数に相当する「総サイクル数」が、設計限度である3万回に満たない(サービス開始時1.5万サイクルと公開)ことが背景にあります。

 日本ではその事業の一環で、日本の顧客ヘリコプターを輸送すべく、不定期で神戸空港へと飛来してくることがあります。2024年時点では同空港へは、4回の飛来が確認されています。