年齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を「ユニバーサルツーリズム」といいます。
この普及に力を入れている松江市の老舗旅館がいま、全国から注目されています。
すべての人に旅行を楽しんでもらうために、設備や食事メニューなど細部にこだわった「おもてなしの心」を取材しました。

「松江市のなにわ一水です!おめでとうございます」

3月7日、東京で開かれた表彰式。
東京のマーケティング会社が2022年から行っている、観光の観点からより良い社会を目指す企業や地域を表彰する「ジャパントラベルアワード」で、松江市の老舗旅館「なにわ一水」が、バリアフリーに重点を置くアクセシブル部門の部門賞と、宿泊施設部門の特別賞のダブル受賞を果たしました。
一体、何が評価されたのでしょうか。

取材した坂西美香アナウンサーを出迎えてくれたのは、勝谷有史社長です。

坂西美香アナウンサー:
「ダブル受賞されましたけれども、今のお気持ちはいかがですか?」

なにわ一水 勝谷有史社長:
「これまで、私共が取り組んできたこと、それがすべて評価された。これは非常にうれしいことです。(今後ますます)頑張っていかないといけないなと、気を引き締めているところです」

1918年創業の「なにわ一水」。
評価されたのは「バリアフリー」に力を入れている点です。

なにわ一水 勝谷有史社長:
「こちらがお身体の不自由な方でも大浴場をご利用いただける、自動昇降付きのシャワーキャリーです」

大浴場には障害の有無にかかわらず温泉を楽しめるよう、自動昇降付きのリフト付きシャワーキャリーを設置。

このほかにも、全23部屋のうち10部屋が、車椅子の人に配慮した「バリアフリー客室」です。

2006年からバリアフリー化にかかわる国の補助金を活用して少しずつ改修を続け、誰もが旅行を楽しめる空間を作り上げました。
ここまでするのにはワケがありました。

なにわ一水 勝谷有史社長:
「さらに、多様性とかサスティナビリティが観光に求められていくと思っている」

年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる「ユニバーサルツーリズム」に対応するためです。

観光庁によると「ユニバーサルツーリズム」の市場規模は、金額ベースで年間2兆円以上と推計され、さらに高齢化が進めば、ニーズは一層高まると予想されています。

ここに目をつけた「なにわ一水」。
こだわりは設備だけではありません。

坂西美香アナウンサー:
「なにわ一水では、肉や乳製品などの食品を食べない、ヴィーガンの人に対応した会席や、特定原材料を使わない食物アレルギー対応の会席もメニューに加えるといった、食のバリアフリーも行っています」

茶碗蒸しに見立てた南瓜蒸しや、お肉ではなく黒豆や野菜を使ったつくねが入った鍋が並びます。
肉や魚を使わない「ヴィーガン対応会席」など、2023年11月から食の多様化に合わせた食事メニューを開発しました。

なにわ一水料理部 勝部賢一課長代理:
「(ほかの料理と)一緒にやるのは大変ですけど、作るのは地物の野菜を使ったりとか、盛り付けもほかの人と遜色ないように満足感があって、食べても味付けもというところは気を付けている」

今回の受賞で全国から注目された老舗旅館。
これからも「おもてなしの心」ですべての人に安心、快適な旅を提供します。