近年、鳥取砂丘の広い範囲で繁茂して問題となっている外来種の雑草。問題解決の一つの手段として、ボランティア活動で取り除いた雑草を因州和紙の技法で「レターセット」に加工する取り組みが2024年から始まりました。厄介者がきれいに生まれ変わります。

鳥取砂丘未来会議事務局・玉野俊雅さん:
この白い穂をつけている植物が「チガヤ」という砂丘にとっての外来種の草になります。

外来種の雑草に浸食される鳥取砂丘。中でも管理者が頭を抱えるのが、繁殖力の高い外来植物「チガヤ」です。

鳥取砂丘未来会議事務局・玉野俊雅さん:
このチガヤが、オアシスの周りにどんどん繁茂していって、本来砂丘に生えている砂丘植物が追いやられている状況。

チガヤの繁茂により在来の植物の数が減少しているといい、景観はもちろん生態系にも影響を及ぼしています。

杉谷 紡生記者:
チガヤを抜いてみます。これは茎の途中で切れているんでしょうか。

鳥取砂丘未来会議事務局・玉野俊雅さん
そうですね、ぷちぷち切れているその下には縦横無尽に根が張り巡らされていて、それが生きている状態。

鳥取砂丘にとっては歓迎されない「緑化」を防ごうと、20年前から活動を続けているのが除草ボランティアです。砂丘の環境保全に取り組む団体が毎年募集していて、5月下旬から9月にかけて重機やスコップを使ってチガヤを根ごと掘り起こし、回収しています。「緑化」のピークの1991年には、砂丘全体の4割以上が雑草やマツで埋め尽くされていましたが、懸命な除草活動により現在は2割程に減少しました。しかし、課題となっているのが参加者の確保です。コロナ禍以降、地元企業の応募が減るなどして参加者が激減。5類に移行された2023年も回復せず、最も多かった年の半分以下でした。
こうした中、どうにか関心を持ってもらおうと県が始めた取り組みがあります。

鳥取砂丘未来会議事務局・玉野俊雅さん:
2023年までは(雑草は)すべて焼却処分していたが、チガヤが和紙になることがわかった。

厄介者「チガヤ」を「和紙」に変えるというもの。ボランティア活動などで取り除かれた雑草は、年間7トンから8トン。23年まではそのほとんどを焼却処分していましたが、24年から新たな使い道を見出しました。

因州和紙伝承工房かみんぐさじ・岡村日出正さん:
砂丘のもので、というのに感銘を受けまして。

鳥取市佐治町の因州和紙の工房。県からの依頼を受けてこの取り組みに協力しています。水の中でかき混ぜられているのが、数週間乾燥させたあとに1週間ほど煮詰めたチガヤです。いくつかの工程を経て一枚一枚漉いていき、しばらく乾燥させると和紙が完成します。

杉谷紡生記者:
もっとざらざらしているかと思いましたが、表面はつるつるとしていて書きやすいですね。

通常の因州和紙と比べても遜色ない出来栄え。しかし一筋縄ではいきませんでした。

因州和紙伝承工房かみんぐさじ・岡村日出正さん:
原料自体が未知のもので、どんな紙になるかわからなかったので、その辺が1番苦労しました。

この工房にとって、雑草を使い和紙を作るのは初の試み。普段使うコウゾやミツマタなどの原料とは繊維の長さや構造が違うため、和紙に適したチガヤの配合率にたどり着くまでに約4か月かかりました。

因州和紙伝承工房かみんぐさじ・岡村日出正さん:
鳥取のイメージとして、砂丘というのは大事にしたい。いろいろな方に持っていただいて、砂丘の草で作ったというイメージができるのではないかと思う。

出来上がった和紙をはがきやメッセージカード、しおりに加工。レターセットとして24年の除草ボランティアの参加者に返礼品として渡されます。

鳥取砂丘未来会議事務局・玉野俊雅さん:
未来の鳥取砂丘を考えた製品なんだと思いながら使ってほしい。(レターセットを機に)より多くの方にボランティアに参加いただいて取り組みを継続したい。

厄介者が地元の伝統工芸の技できれいに変身。ボランティアの増加にどれだけ貢献するのか期待がかかります。