2023年の2月の海外出国者は、前年同月比で約11倍に。
コロナ禍で激減した日本からの海外旅行は今後どのように回復していくのか、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんに聞きます。
パスポート申請の簡易化 海外旅行者は徐々に増加

海外旅行者の推移
―――パスポート申請がより簡単になったのではないかと思いますが、なぜですか。
政府は様々な電子化を進めていく中で、今回マイナンバーの活用も活発になってきました。従来のパスポート申請では申請と受け取りで旅券事務所に2回出向かなければいけませんでした。特に申請については月曜日から金曜日しかできませんでした。代理人が申請することは可能ですが、平日しか申請できず、受け取りは日曜日もできるようになっていますが、会社を休まなくても24時間365日マイナンバーを活用することで申請でるようになりました。顔写真もスマートフォンで撮影したものを申請に利用できるので、かなり利便性が増すのではないかと思います。
―――平日休めない人たちにとってはとても有り難いですね。コロナ禍が始まってから2023年2月までの海外旅行者の推移をみると、確実に増えてきているかと思います。2020年1月はコロナ禍前のため多くなっていますが、コロナが始まり急に減りました。そこから、段々と元に戻ってきて直近の2023年の2月では53万7705人となっており、前年同月比で約11倍に増えています。海外旅行者の数は回復傾向だと捉えていいのでしょうか。
2022年9月から、ワクチンを3回打っていれば帰国する前のPCR検査が免除されたので、そこから旅行者が増え始めたのではないかと思います。インバウンドに関しては円安や日本の物価が安いということで既に6割以上回復している状況になりますが、日本人の海外旅行については現段階では3割から4割になるかと思います。それでも2022年に比べると11倍になっているということは、少しずつ海外旅行熱が過熱しているのではないかと思います。
国際線 当面はインバウンドの戻りが中心

およそ11倍
―――日本から旅行に行く人も増えているが、それよりも海外から日本に来る人が圧倒的に多いということですか。
やはり円安や物価が安いことも含め、日本ブームが海外では来ていますので、日本人の海外旅行の戻りは少し遅いのではないかと思います。逆に海外旅行に行く際は皆さん明確な目的を持っていることが多く、例えば韓国ですと韓流ドラマや映画、コンサートに行くという形で、お金を払う以上目的を持っていくことが多くなっています。アメリカですとハワイでも物価が1.5倍から2倍になってしまっているため、目的がある海外旅行が中心になっています。
―――気軽にこの国に行きたいから行こうという感覚に戻るのはもう少し先になりそうですか。
そうですね、2024年以降になってしまうのではないかと思います。当面はインバウンドの戻りが国際線の中心になるのではないかと思います。
―――鳥海さんはWBCの取材でアメリカのマイアミやニューヨークに行かれたとのことですが、現地の状況はいかがでしたか。
今回WBC準決勝と決勝を観戦させていただきましたが、スタジアムではほとんどマスクしている人はいませんし、コロナ前に現地で野球観戦したころとほぼ同じ状況に戻っているかと思います。肌感覚でいうと、日本に比べて半年から1年以上は先に進んでいるのはないかと思っており、滞在中にコロナのことを考えることすらなかったなという状況で、既に日常に戻っているというのが今のアメリカの状況かと思います。