もし大都市でライフラインが断絶し、自宅の電気や水道が使えず、物流も止まった時、私たちは、どこで、どう生き延びればいいのでしょうか。そこには、人口密集地ならではの課題もあります。(5月18日OA「サタデーステーション」)

■繰り返される“ライフライン断絶”

2018年に北海道・胆振(いぶり)地方で、最大震度7を観測した地震。数日間にわたり最大295万戸が停電、水もおよそ6万8千戸で途絶えました。

発災の翌日に、マンションで在宅避難をする住民を取材した映像では、給水した容器を次々と運んでいきます。

在宅避難する住民
「ポリタンク2つ抱えて5階まであがるんで、手がちぎれるような痛さで、はあはあ言ってる」

足元には何往復もして運んだ容器が並び、ランタンの明かりを頼りに運んできた水を使いながら頭を洗います。別のお宅では。

在宅避難する住民
「ライト照らして」
「見えないんだよ中が、全然まだまだいれないとダメだ」
「まだ足りない」
「全然足りないよこんなの」

トイレのタンクに、繰り返し水を注いでいました。

「あー流れたあー1日ぶりだ」

また、今年元日に起きた能登半島地震。発生後、店に立ち寄ってみると。

動画撮影者
「閉まってる。『地震のため営業中止しております』…ダメですね」

コンビニに寄ってみても、商品棚はからっぽに。水や食料の確保は命を左右する問題です。

■都市部では“避難所不足”懸念

過去の大きな地震では、このような「電気」「水道」「物流」などのライフラインの断絶が度々起きてきました。そんな時、多くの住民の助けになってきたのは避難所の存在でした。ですが都市部の場合、そう簡単にいかない事情があります。背景にあるのが、避難所不足です。訪ねたのは、東京23区の中で一番人口が多い世田谷区。

世田谷区災害対策課 河野雄治課長
「こちらは世田谷区立の中学校の体育館で、避難者の方が避難してくる場所」

区には95か所の避難所があり、収容数はおよそ12万人。ただし区の想定では、自宅が被災したり備蓄がつきるなどしピーク時には避難者が17万人程になるとしています。およそ5万人が収容できないというのです。そのため、区が大きく呼びかけているのが。

世田谷区災害対策課 河野雄治課長
「在宅避難という考え方をここ数年ずっと推奨してきていまして、被災後もご自宅で過ごせるような備えをしていただきたいと」

しかし去年行ったアンケートでは、『区が在宅避難を推奨していることを知っている』と答えた区民はおよそ3割にとどまっています。

世田谷区災害対策課 河野雄治課長
「なるべく避難所に来る避難者の方を減らして(避難所の)過密な状態を少しでも解消する。もちろんご自宅が住めないような状況になれば避難所に来ていただくということで、避難所の方の体制の整備も進めている」

能登半島地震を受けて、テントや簡易ベッドなどの備蓄を、当初の予定より前倒して購入するなど地震に備えているといいます。

■マンションでの在宅避難も課題に

そして、首都圏ならではの事情がもう一つ。それはマンションなどの集合住宅に住む人が多いという点です。東京都ではおよそ900万人が集合住宅で暮らしています。

これは2011年の計画停電の時の様子ですが、首都直下地震が起きた場合、首都圏の5割にあたるおよそ1220万軒で停電が発生します。電力の回復には4日、水道の回復には3週間かかると想定されています。

そこで、東京都が進めているのが『東京とどまるマンション』という制度です。防災対策を充実させ、災害時に在宅避難を行えるマンションとして現在およそ250か所を認定しています。

シャンボール三田 防災対策検討委員長 田中一宏さん
「こちらが非常用発電機ですね。停電時に共用部に対して電源を供給するものでして、例えばエレベーターとか給排水のポンプ、あと集会室、そのようなところに対して72時間分の電源を供給できるようになってます」

こちらのマンションでは、2011年の東日本大震災を受け、非常時の電気や水に関するハード面を整備してきました。また、災害時の在宅避難を見据え、避難訓練を行うなどソフト面の準備も進めています。例えば、フロアごとに安否確認シートを設置。

シャンボール三田 防災対策検討委員長 田中一宏さん
「震度5以上の地震が来たときには、各フロアで、そこにいらっしゃる方がフロアごとの安否確認をしていこうと決めていまして、そのときに使うようになっています」

他にもパンフレットを作成し、各家庭に備蓄の呼びかけを行ったり、災害時には住民たちでマンション内の災害対策本部を設置するといいます。

シャンボール三田 防災対策検討委員長 田中一宏さん
「SNSの導入や備蓄の啓蒙、そういった周知・広報的なところは今後の課題だというふうに思っています」

■“在宅避難” 何がどれだけ必要?

高島彩キャスター
「VTRでも備蓄の重要性が指摘されていましたが、では実際に、何をどれだけ備えておけばいいのでしょうか?」

板倉朋希アナウンサー
「参考になるのが、『東京備蓄ナビ』という東京都のサイトです。人数や、性別、年代、住まいの種類などを入力していきますと、在宅避難で必要な備蓄品の種類や量が分かるんです。例えば、4人家族で小学生以下の子どもが二人いた場合は、1週間分これぐらい必要になるというのが、一目で分かるということなんです。実際、どれになるのかというのをスタジオに用意してみました」

高島彩キャスター
「これすごい量、畳二畳分くらいありますね」

板倉朋希アナウンサー
「ちょっとびっくりするくらいの量になりますが、例えば水でいうと、2リットルのペットボトルが38本で、計76リットル必要。電気ガス水道などが止まったと仮定しますと、カセットコンロは2台。更にカセットボンベは19本必要だということです。トイレも使えなくなることを考えると、携帯トイレは必須で、4人分で140回分は用意しておいたほうがいいということなんです」

高島彩キャスター
「うちにもカセットコンロ準備してありますけど、ボンベも19本必要だとは思ってなかったですし、携帯トイレも用意はあるんですけれども、使ってみたことがないので、どのくらいの頻度で消費していくものなのか分からなかったですが、140回分が必要ということ?」

板倉朋希アナウンサー
「140回分で、4人家族ですと1週間分だということなんです」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「この量をどこに置くか…一部屋つぶれてしまいますね」

板倉朋希アナウンサー
「なかなか置くところがないという感じもしますし、これだけの量みると、『さすがにこんなには』と思ってしまいますが、やはり1週間分は必要なのかどうかという点を、備え・防災アドバイザーの高荷智也(たかに ともや)さんに聞きました。発災後3日間は人命救助が最優先されることが予想されるので、避難者への支援になかなか手が回らない。なので、まずは最低限3日分の備蓄が必要だということなんですが、発災から1週間経つとインフラも復旧し、コンビニやスーパーなどの営業が再開される見込みなので、そこまではなんとか自力で生き抜けるよう1週間分の備蓄をすすめていらっしゃいます」

高島彩キャスター
「柳澤さんもおっしゃったように、これを置いておくスペースっていうのがなかなか難しいんですよね」

板倉朋希アナウンサー
「高荷さんによると、まずはやっぱり備蓄ナビにありましたように、『わが家の一週間分』をまず考えるということが大切とのことで、例えば、各家庭で普段多めに食べるものや使うものを、少し多めに用意しておいて、賞味期限が近いものから食べて、なくなった分だけ、使った分だけ買い足していく。こういうサイクルを続けていくと、それほどスペース的にも気にならないはずということです」

高島彩キャスター
「“ローリングストック”なんて言い方しますよね。好みのものを食べながら備えておけば、無理なく置いておけるかなという感じがしますね」

板倉朋希アナウンサー
「本当に各家庭によってというところがありますよね」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「分かっちゃいるけどなかなかそれができない」

板倉朋希アナウンサー
「今一度考えてみるというのも大事かもしれませんね。それから、こうした在宅避難の備えをサポートする取り組みも進んでいるんです。それがVTRにもあった世田谷区なんですが、今年8月以降に、全世帯に防災用品のカタログギフトを配布しまして、一人あたり3000円相当のポイントも付けて、在宅避難の際に必要だと思うものを自分で選べるということなんです」

高島彩キャスター
「これはいい取り組みですよね」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「きっかけになりますよね。でも在宅避難というのはきめ細かい情報が限られるとか、あるいは避難物資が思うように届いてこないということもあるので、これだけの備蓄があっても実際に使ってみたらどうなるかってことを、1年に1回か2回くらいはシミュレーションをしてみる必要もある」

高島彩キャスター
「家庭の状況とか住んでいる地域によっても違いますし、私の娘の社会科の宿題で、家でレトルトを食べて、ランタンを使って過ごすみたいなのをやったんですけども、でも携帯電話は横にありますし、トイレも水を流して使ってましたから、本当にまる一日やってみるっていうのもありですね」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「どうですかこの夏休みに。家族みんな揃って携帯電話もなし、電気もなしで続くかなっていうのをやってみませんか」

板倉朋希アナウンサー
「いざという時のことを、いかにイメージして備えておくかが大事ですよね」

高島彩キャスター
「やっぱり日ごろの備えが大事だと感じます」