冬眠の時期が終わり、クマの被害が全国で相次いでいます。

秋田県と青森県との境にある十和田湖の南にある山林で、タケノコ採りに山に入り行方不明になった男性の遺体が見つかり、運び出そうとしていた警察官2人がクマに襲われ、大けがをしました。

秋田県内では、今年に入ってすでに198件の目撃情報が寄せられていて、県は、先月、早々にツキノワグマ出没警報を発令。人が襲われたのは、今回が3件目で、県は21日、緊急の会議を開きました。
秋田県ツキノワグマ被害緊急対策会議:「4月から出没のペースが非常に早かったというのが今年の特徴。5月についてもペースが早いと言える」

その後も遺体の搬出は進んでいません。現場がやぶになっていて見通しが悪く、再び、クマに遭遇するおそれがあるためです。21日、現場近くまで車で入れるようにするため、重機を使って道路を広げる工事が行われました。

地元では、困惑が広がっています。
地元の人:「タケノコ(採り)にも行ったりしているが、タケノコはもうやめた。怖いからやめた」
地元の人:「家では、畑にトウモロコシとか植えるのはやめました。実がなる木は、みんな切った。クマが来るので。家の畑に来たときは、この距離で爆竹鳴っても無視されました。食べるのに夢中で、全く効果なかった」

鹿角市では、8年前、タケノコ採りの男女4人が相次いでクマに襲われ、死亡する事件が起きました。鹿角市の頭文字をとって『スーパーK』と名付けられたクマ。8年前の被害の大部分に関わったとされています。

当時、追跡調査に携わった専門家は、こう話します。
日本ツキノワグマ研究所・米田一彦理事長:「スーパーKと、その母親である120キロ級の赤毛の強い母グマと、このとき3頭の子グマを連れていた。主犯の個体、その子どもたちもずっと追跡していたが、3年前にほぼ駆除されたと判断」

今回は、スーパーKの関与はないとしますが、遭難者が多い、この地域特有の事情も指摘します。
日本ツキノワグマ研究所・米田一彦理事長:「何かの形で、行方不明者などを食べた経験がある。経験がないと人間を食べるところまでは行きつかないと思う。そういう攻撃性の強いクマが、鹿角市一帯にいるのは間違いない」

県によりますと、クマによる人身事故は、3つのパターンに分類できるといいます。
まず、クマが、自身や子グマを守るために攻撃する場合。次に、何かに驚いたクマが、たまたま人とぶつかってしまうような場合。そして、クマが、積極的に人を攻撃する場合です。

秋田県ツキノワグマ被害緊急対策会議:「人が持っている食べ物を奪う。人そのものを“食べ物”と認識して、攻撃する個体が、まれにいます」

人と食べ物を結びつける特殊な学習をしたクマ。鹿角市のクマは、このタイプだと判断したというのです。
秋田県ツキノワグマ被害緊急対策会議:「人がいるとわかっていて、人の食べ物や、人そのものを食べ物と認識して攻撃しますので、同一個体が連続して、事故を起こす危険性が高い。気をつけていても、このタイプの事故は防げません」

今回、亡くなった男性がクマに襲われたかはわかっていませんが、県は、入山禁止の地域には絶対に立ち入らないよう呼びかけています。

◆これまでにわかっていることをまとめます。

今回クマの被害があったのは、秋田県鹿角市の十和田大湯というエリアで、かなり山深く、注意が必要な場所でした。

2016年、同じエリア、同じ時期にクマによる被害が相次ぎ、4人が死亡しました。いずれもクマに襲われたとみられ、遺体は大きく損傷していました。

主犯格のクマは、鹿角市のKから『スーパーK』と名付けられました。スーパーK以外にも、人を襲ったクマが複数いて、その後、駆除されたとみられています。

今回もスーパーKと関係があるように思えますが、どうでしょうか。

クマの生態を研究していて、スーパーKの名付け親でもある米田一彦さんは「2016年に人を襲ったクマが関連しているとは考えにくい。追跡調査の結果、スーパーKと、その子どもたちは、3年前までに駆除されたと考えている。ただ、秋田から青森にかけての山間部エリアでは、過去にもクマによる重大事故・死亡事故があった。“攻撃的な性格”が引き継がれているのでは」と指摘。「このエリアは遭難者などが多く、クマが人の肉を食べる機会もあるのではないか。母親が食べるのを見て、子どもが学習するため、シカやイノシシと同様、人を獲物と認識するようになった可能性がある」としています。

21日、クマ対策の緊急会議を開いた秋田県も「人が持っている食べ物を奪う、人そのものを食べ物と認識して、攻撃するというパターンの個体がまれにいる」としています。

実は、亡くなった人たちには共通点があります。
2016年に亡くなった4人と、今回、亡くなった男性は、全員、山菜やタケノコ採りのため現場を訪れていました。
このタケノコというのは、一般的なタケノコよりも細くて小さい『ネマガリダケ』のこと。東北や長野などでは、ネマガリダケを採って食べる習慣があり、5月〜6月にかけてが収穫期。地元の人によりますと、1キロ400円ほどで買い取ってもらえるため、一般の人が山に採りに行くこともあるということです。

米田さんによりますと、実は、クマもネマガリダケが大好物なので、これを狙った可能性もあるといいます。

秋田県によりますと「被害者の行動別に見ると、山菜・タケノコ採り中のクマの事故が最も多い。今後、タケノコシーズンがしばらく続くので、要注意の時期が続く」としています。