ドゥンツォワさんはモスクワの北西トベリ州で2022年まで3年間、地方議員を務めていたが、その前には長年、地元のジャーナリストとして活動していた。メディアや言論に対する圧力にも忸怩たる思いを抱いている。 当局から圧力をかけられ、当局の意向にそった報道を半ば強制されている現状を理解している。実際に独立系メディアや記者はスパイを意味する「外国代理人」や「好ましくない組織」に次々と指定され、ロシア国内での活動が制限・禁止されている。 プーチン大統領の再選後の3月から弾圧はあからさまに厳しくなり、連日のように多くの記者やカメラマンが、不明確な理由で拘束される。 プーチン政権が「過激派」とみなすナワリヌイ氏の団体に200ルーブル(=300円ほど)寄付していたという理由で罪に問われる人もいる。 「外国代理人」に指定された作家や記者の著作、LGBTに関する描写がある書物の多くは書店から撤去される。 人口減少を国家的な危機と捉えている政権とロシア正教会は、女性に子供をもっと産めとあからさまに迫り、LGBT運動は国家の敵だとして弾圧の対象にされる。 いまのロシア社会にその少女を理解し、受け入れてくれる居場所はなかった。 ウクライナへの侵攻からすでに2年2カ月が過ぎている。 少女が居場所を求めたように、高齢女性が「反戦」を口にすることを恐れるように、いまのロシア社会は「閉塞感」に包まれている。 ドゥンツォワさんは自分のために集まった人たちが仲間意識や連帯意識を持ち、一体感を失わないよう政党の立ち上げを決意する。 その活動にも、プーチン政権は圧力をかけ続けていく。 「プーチン大統領に挑んだ反戦候補が語る(後編) 新党結党までの戦いと今後の可能性」に続く■ロシアを覆う様々な圧力 書物も次々撤去
かろうじて置かれていてもビニールで封をされ「18歳未満禁止」とシールが貼られる。■居場所を求めた少女の告白
「私がここに来たのは自分勝手な理由なんです」
私は尋ねました。
「なにが自分勝手なの? 」
彼女はこう答えました。
「私はあなたを理解し、助けてくれる人たちの中にいたいのです」
そして彼女は泣きました。
閉塞感に包まれた社会で、こうした人たちに自分は間違っていないと感じられる居場所をつくるためにも、ドゥンツォワさんは自分が新しい党を作ろうと思ったという。
今、彼らに必要なのは、それぞれの地域で、人間らしく話し、心配していること、望んでいること、夢について話し合うことができる相手を見つけることです。
一向に帰宅を許されない動員兵の妻らは、動員解除を求めて声を上げている。
出口の見えない状況は多くの人に強い不安とストレスを与えている。
いつ終わるのか、夫や子供はいつ戦地から戻れるのかということです。
ゴールはなんなのでしょうか?
いつ終わるのかも何も明らかではなく、この理解不能な感覚の中で、様々な国内の問題が無視されています。
まるで真綿で首を絞められるように、人びとは自由な表現や発想を奪われる。
各地の支部設立のためロシア全土を飛びまわり、住民らの声に耳を傾けた。