英国は、ウクライナに供与した武器を対ロシア向けに使用を容認することを示唆した。フランスのマクロン大統領も「あらゆるオプションを排除しない」と発言しており、ロシア優勢下の状況で、欧州各国の首脳陣の姿勢に変化が出てきている。

タイトル

1)ロシア優勢に強まるヨーロッパの危機感 イギリスの支援は新たな段階へ

プーチン大統領は、5月9日の戦勝記念日での演説で、「ナチ継承者の正当化などは西側エリートの共通政策だ。ロシアは全面的衝突を防ぐため、あらゆる努力を尽くし、我々を脅す者は誰も許さない。我々の戦略的な力(核部隊)は常に戦闘状態にある」と述べた。

こうした発言の背景には、欧州首脳が、ロシアに対しこれまでにない強硬な姿勢を見せ始めている現状があるとみられている。

プーチン大統領

イギリスのキャメロン外相は5月2日、ウクライナに供与した兵器について、「ウクライナ人がどのような行動を取るかについて、我々の見解では、支援した兵器をどのように使うかは彼らの判断であり、我々は、注意事項は何もつけません」と述べた。

さらに記者から「ロシア領内への使用も含めてか」と問われ、「それはウクライナが決めることだ。そして、ウクライナにはその権利がある」と応じた。

キャメロン

多くのメディアはこの発言について、イギリスが供与した兵器をロシア領内に向けて使うことを容認したと受け取った。秋元千明(英国王立防衛安全保障研究所日本特別代表)氏は以下のように分析する。

最近、フランスのマクロン大統領が、「部隊をウクライナに出す。あらゆるオプションを排除しない」という発言をしており、イギリスも同じ立場をとり始めたということだ。
西側は、これまでエスカレーションを防ぐために抑止的な姿勢だったが、この2年間、弱さを見せることがかえって状況を悪化させてきたという側面がある。
しかし、NATO加入国で核も保有するフランス軍がウクライナに入ったら、ロシア軍が攻撃できるか疑問が残る。ウクライナが、イギリスの供与したミサイルでロシア領内の軍事施設を攻撃したらエスカレーションが起きるというのも西側が懸念しているだけだ。プーチン氏は西側の懸念を捉えて強気な発言を行っている。
エスカレーションを恐れ、自己規制的な戦略をとるより、“あらゆるオプションはあり得る”という堂々とした姿勢をとろうとマクロン大統領が示し、イギリス側も足並みをそろえてきている。
マクロン大統領

プーチン大統領はこの状況をどう考えているのか、小泉悠(東京大学先端科学技術研究センター准教授)氏は、以下のように述べた。

アメリカが援助再開を決め、マクロン大統領やキャメロン氏の発言など、欧米は強気に転じている。プーチン氏は、それなりに面白くなく思っているのではないか。
戦争開始から2年間、ロシア側は、西側が軍事援助を行ったことに対して、何らかの軍事的報復を加えると言い続けてきた。その牽制が効かなくなれば、さらなる強烈な脅しをかけなければならなくなる。最近のロシアの戦術核部隊の演習指示や、プーチン氏が戦勝記念日の演説の開始早々に戦略核戦力の話をしていることもその現れと見る。ロシアは西側の変化に対して、核の牽制をかけてきた、ということではないか。


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