6月、浜松市の浜名湖で溺れていた小学生を助けようとしたブラジル人の男性が溺れて死亡した事故で現場で、救助にあたった男性が私たちの取材に応じました。

事故当時の緊迫した状況、そして今も男性が抱える葛藤は…。

この事故は6月8日、浜松市中央区の浜名湖で水辺で遊んでいて溺れた小学4年生の救助に向かったブラジル人の男性が溺れ死亡したものです。事故があったのは浜名湖の観光スポット・弁天島。

先週、現場で救助にあたった50代の男性が私たちの取材に答えてくれました。事故当日、釣りをしていたところ“ある異変”に気付いたといいます。

(救助にあたった男性)

「ここで釣りをしているときに向こうの方で遊んでいたグループ」「子ども6人と大人1人ぐらいのグループが水遊びをしていたが」「最初は泳いで遊んでいるのかと思ったが、だんだん切羽詰まった声をあげたので『大丈夫ですか?』と声をかけたら『大丈夫じゃないよ』と返事を子どもからされて」

浜名湖情報カメラに事故の一部始終が映っていました。小学生が流され岸に戻れなくなります。これに気付いたブラジル人男性が救助に向かいますが…。岸に戻ってくることができません。

(救助にあたった男性)

「見ている目の前で大人(ブラジル人男性)と子どもが離れ離れになってしまって、大人は何とか岸にあがろうとしていたが、子どもは本流にのって」「水の流れにのって流されていくという光景を見た」「(子どもが)1回沈んで2回沈んで必死にもがいている姿を見て、1回1回頭の上がってくる角度が浅くなって」

これは事故当日の午前10時、事故の6時間半前の映像です。画面左に向かって潮が流れています。その5時間後の午後3時。潮の流れは穏やかに…。そして、事故が起きた午後4時半ごろになると、今度は画面右に向かって潮が流れ始めました。また、事故の前日は満潮と干潮の潮位の差が大きくなる“大潮”で事故が起きた時間帯はだんだん潮位があがってきていました。

よく遊びに来ていて浜名湖特有の潮の流れを知っていたという男性。「助けに行かなければ」と思いながらもぎりぎりまで葛藤したといいます。

(救助にあたった男性)

「浮かせられるもの、探したけれど、浮き輪もクーラーボックスも何もなくて、近くに人もいなかったので」「助けたいが救助は水の中に入ってはいけないという鉄則は知っていて」「でも何とか救ってあげたいという、次沈む前に何とか水面にあげて自分の泳ぎでも10分ぐらいは持つだろうと」「それでも服を脱ぎながら『本当は行きたくないな』自分にも子どもや家族がいますし、そう思ったけれど、子どもが水の中に1回沈み切って手首だけ見えたときに、それでも子どもが頑張ってはい上がってきた、それ見たときに」「スイッチが入った感じで泳ぎだしました」

男性は浜名湖に飛び込み溺れている小学生のもとへ。

(救助にあたった男性)

「船舶の免許を取ったときに講習を受けて、沈んでいる人間を助けるのが一番危ない。なぜなら引きずり込まれるからだと、子どもでも簡単に大人を引きずり込む力があると知っていたので」「子どもに向かって『しがみつくなよ』子どもにそうやってもらわないと自分も沈んでしまうので」

流される小学生に追いつき何とか岸まで連れていきます。そして、今度はブラジル人男性が溺れていることに気づき再び救助へ。わずか3分半の間に起きたことでした。しかし、男性は救助の途中に目の前で意識を失ったブラジル人男性の姿を見て絶望したといいます。

(救助にあたった男性)

「浜名湖は何回も来てよく遊んでいるところだが、こんなところで事故があるのかと、がくぜんとしていて、本当は2人とも助けたかったです」「自分がもっと早く気が付いて泳ぐ方向を指示したりしていれば、こんなことにならなくてすんだ、そんなことを何度も考えると、なかなか眠れない日もあって…苦しいところです」

男性は事故が起きてから毎日、現場を訪れ花を手向けています。なぜブラジル人男性を助けることができなかったのか。自らを責め続けています。

(救助にあたった男性)

「最初、気づくのが遅れたという意味の『ごめんね』もありますし、横を通り過ぎるときに…何もできなかったという…申し訳ないと思います」

今回、カメラに胸の内を打ち明けたのは「悲劇を繰り返してほしくない」という思いからでした。現場は遊泳が禁止されている場所ではありませんが、男性は「危険を周知してほしい」と訴えます。

(救助にあたった男性)

「自分でもこうだろうと思っても、次の日に来ると全然違う状況になっているので、いつも意外なことが起こる、だから知っていても十分危険だと思います」「危険についての周知という意味で、立て看板、できれば日本語だけではなくてポルトガル語でも危険を警告するような何かがあってもいいと思います」