静岡市で違法な盛り土をした疑いで残土処分会社の前社長と息子の現社長が逮捕された。2人は、約5年間で1億円以上の利益をあげていたとみられている。
県の砂防指定地管理条例違反などの疑いで逮捕されたのは、静岡市の残土処分会社の前社長で84歳の男と、その息子で現社長の41歳の男。
警察によると、2人は共謀の上、2018年3月ごろから約5年間に、静岡市葵区の「杉尾地区」と「日向地区」の2か所で、県の許可を得ず盛り土をした疑いなどが持たれている。
2人は、少なくとも5年前からダンプ1台あたり1万円〜2万円ほどで、静岡市内で出た建設残土の処分を請け負い、計1億円以上の利益を得ていたとみられている。
(提坂 貴文カメラマン)
「こちらが今回逮捕された容疑者が造成したとみられる盛り土です」
造成された2か所の盛り土があるのは、静岡市葵区の山間部。この場所は、盛り土などの行為のためには県の許可が必要となる砂防法の「規制区域」に指定されている。このうち「日向地区」に造成された盛り土は約37万立法メートルで、これは熱海土石流災害の起点部分に造成されていた盛り土の約5倍の量だ。
(近隣施設の人)
「ダンプカーが走っていた。腐敗臭、においがしてくることがあってどこからしているのかなと思っていた」
7日逮捕された現社長の男は…。「県や市から行政指導は受けていたが現場に県や市の職員が来ていなかったので搬入を続けた」などと話し、おおむね容疑を認めているという。
行政は今回の事態に適切に対処できていたのか。県は「日向地区」については2005年に、「杉尾地区」については2019年に不適切な盛り土の存在を確認していた。県の担当者は、口頭や文書で指導を行なっていたものの、強制力のある「措置命令」を出すまでには至らなかったと話す。
(静岡県 河川砂防管理課 鍋田 航平 課長)
「応急対策であっても、業者が指導に応じる姿勢は見せていたので、対応はできるというのはあった。命令まではしなかった。放置されたということを考えれば、毅然とした対応をするべきだった」
一方で、残った土砂の今後の対応については…。
(静岡県 河川砂防管理課 鍋田 航平 課長)
「基本は無許可で行った者に対して是正を求めるのが県の姿勢。そこでも是正されないようなら、行政代執行を視野に入れて対応していく」
逮捕された2人は、県の砂防指定地管理条例、森林法、そして県の盛り土新条例の3つに違反した疑いがもたれている。
2人の罪はどの程度になるのか。エブリィしずおかのコメンテーターでもある嶋田弁護士に聞いた。
(嶋田 麗子 弁護士)
「根拠となる法律のなかで一番重いものが、森林法。森林法で定められている量刑が『3年以下の懲役又は300万円以下の罰金』となっている」
また、前科がない場合、執行猶予がついたり、罰金にとどまる可能性もあるという。
(嶋田 麗子 弁護士)
「量刑が執行猶予で済んでしまう可能性があるとすると、得られる金銭に比べてデメリットが少ないと判断して、一般予防効果が薄まっている可能性がある」
また、嶋田弁護士は違法な盛り土を防ぐためには、「行政代執行の費用を、業者から確実に回収できる仕組みを作っていくことが重要」と話しす。