6月9日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「使う電気は自分で創る!〜ゼロエネルギーへの挑戦〜」。
エネルギー価格の高騰が、家計や経営を圧迫している。この夏も電気代値上げに加え、需給ひっ迫の懸念が…。
そんな中、流通大手「イオン」が、最も注力するのは“省エネ&創エネ”だ。施設内の食品生ごみを活用し、エネルギーに変える最新プロジェクトを追った。

また、災害時も3日間は自前の電力で避難生活ができる「ゼロエネルギーの街」も登場。
エネルギーの自給自足はどこまで可能なのか。

流通の巨人「イオン」 最新モールで“省エネ&創エネ”


日本の総電力の約0.8%を使う流通大手「イオン」(約1万8000店)が、“省エネ&創エネ”に注力している。

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4月に愛知・豊川市にオープンした「イオンモール豊川」は、東京ドームの約2.5倍ある延べ床面積に約190の専門店が軒を連ねる。
豊川店はこれまでの店舗とは違い、常にAIカメラが館内を分析し、混み具合を計算。自動で空調や換気をコントロールする最新の省エネショッピングモールだ。
エリアごとに照明の明るさやエレベーターの稼働数も調整。最新鋭の省エネシステムで、エネルギー消費量を、これまでの50%以下に削減することができる。

節電だけでなく、電気を創り出すことでも最新だ。飲食店やフードコートなどで1日に発生する食品生ごみは約1トンで、この生ごみから発生するガスを電気に変えてモールで使用。

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駐車場の屋根にも太陽光パネルを設置し、モールで使う電気の約8%を賄っている。

さらに、全国の店舗で急ピッチで進められているのが、冷凍冷蔵ショーケースの入れ替え。
フタつきの最新型冷凍ケースに変えると、消費電力を約50%カットできる(カタログ値)。

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こうした取り組みの背景にあるのは、「イオン」が2018年に出した、脱炭素への宣言。
「イオン」は、2040年までに店舗で出すCO2をゼロにする目標を掲げている。そのきっかけの一つが、自然災害だ。
2018年6〜7月、西日本を襲った集中豪雨では、15店舗が営業休止に追い込まれ、特に浸水被害の大きかった店は、営業再開までに1年以上かかった。

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「イオン」吉田昭夫社長は、「環境への取り組みは社会貢献のレベルではない。事業そのものにならないといけない時代。グリーンエネルギーを創出する、いわゆる〝創エネ〟をする、自ら創る」と話す。

余った電力をポイントと交換!? 地域のエネルギー供給網をつくる!


実は、「イオン」のCO2排出量の9割が電力によるもので、今後はCO2を出さない電力に切り替える必要があった。
その難しい課題を託されたのが、イオンモールの太陽光発電を推進してきたイオンモール地域サステナビリティ推進室長の渡邊博史さん。再生可能エネルギーへの転換でカギを握る人物だ。

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「地域で一番電力を使うわれわれの施設は、使う電気は自分たちで創る。それも地域で創る。2040年までに電気の自給率を100%にする」と話す。
この日、渡邊さんは千葉市役所を訪れた。「イオン」は全国各地に自前の太陽光発電所を約740カ所作り、すでに去年から約30のモールに電気を供給し始めている。しかし、この太陽光発電所を建設する土地の確保が難しく、千葉市に相談に来たのだ。

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「全国で先進的に取り組んでいる会社がある」との情報を得た渡邊さんが向かったのは、千葉市緑区にある「千葉エコ・エネルギー」の自社農園。この農場では、1ヘクタールの畑の上に約3000枚の太陽光パネルを設置し、その下では、多種多様な野菜を栽培していた。
農場の運営者・馬上さんによると、猛暑だった去年も太陽光パネルのおかげで、質の良い野菜を作ることができたという。しかも、太陽光で作った電気は、年間約2400万円になった。
これなら、電気に加え、収穫した野菜も「イオン」の売りになるかもしれない。

一方、東京大学大学院の複数の研究室が、地域のエネルギーシステムについて、イオンモールと共同で研究を始めていた。そこでは、ある地域の時間帯別太陽光発電のグラフから、昼間の時間帯に充電しきれず、無駄にしている電力があることが分かった。渡邊さんは、蓄電されず、余っているこの電力を「イオン」で使いたいと考えていた。

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5月、「イオンモール堺北花田」(大阪・堺市)に不思議な箱が設置された。そこにやって来たのは、電気自動車。家庭で余った太陽光発電の電気を自動車に充電してもらい、イオンモールで買い物がてら、放電してもらおうと考えたのだ。気になるそのシステムとは……。

日本初のゼロエネルギーホテル「いとまちホテルゼロ」の全貌


瀬戸内海に面した人口約10万人の工業都市、愛媛・西条市は、3年連続「住みたい田舎ベストランキング全国1位」に選ばれた人気の街。日本一に輝いたおいしい水と、もう一つの魅力が、約3年前にオープンした商業施設「いとまち」だ。

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地元で採れる新鮮な野菜や果物が並ぶマルシェ、旬の野菜を生かしたイタリア料理店が人気。この日広場では、餅つきイベントが行われていた。
この「いとまち」を経営するのが、1995年に西条市で創業した「アドバンテック」(従業員455人)。半導体を作る上で欠かせない装置の部品製造というニッチな分野で、世界トップシェアを誇る。

もう一つの主軸が、2010年に立ち上げた太陽光発電事業で、全国100カ所以上の設置と運営を手がけている。その中心人物が、取締役の石本祐子さん。石本さんは、地元に再生可能エネルギーを根付かせるため、農家が作物を作らなくなった広大な耕作放棄地を入手。自分たちの手で開発してきた。

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「いとまち」の屋根には太陽光パネルを敷き詰め、自分たちで使う電気は自ら創ることに。
実はこの建物、デザイン性だけでなく省エネ効果が抜群で、同じ規模の商業施設に比べ、90%以上のエネルギー消費量を抑えられるという。

マルシェの横には住居エリア80区画が整備され、5月には、日本初のゼロエネルギーホテル「いとまちホテルゼロ」が誕生。エネルギー消費量がゼロというホテルで、日本初のZEB(ネットゼロ・エネルギー・ビル)認証を受けた。
基準値よりも50%の省エネした上で、残り50%分の再生可能エネルギーを自前で創り、エネルギー消費量を実質ゼロにする。

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デザインしたのは、新国立競技場などを造った隈研吾。ホテルに必要な電力は、広大な屋根全面に張られた太陽光パネルで、すべて賄えるように作られている。

ゼロエネルギーに挑む石本さんが、「いとまち」 を作る上で最もこだわったことがあった。
コンテナの中に大量の蓄電池を備え付け、災害の停電時に3日間は電気が使えるようにしたことだ。

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太陽光で発電した電気を蓄電池にため、いざという時には、商業施設や住宅に電気を送るシステムを構築。いま注目の「防災のまち」だ。

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この日、高知・黒潮町の松本敏郎町長が「いとまち」を訪れた。海が自慢の美しい黒潮町は、南海トラフ巨大地震の甚大な被害が想定され、どう備えるべきかヒントを探っていた。
松本町長は、「いとまち」が掲げるエネルギーの自給自足に関心があるようだが……。

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番組ではその他、「いとまちホテルゼロ」の全貌や食事を紹介。徹底したこだわりを伝える。

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