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ピザ213円、カレー162円〜「みなさまのお墨付き」


東京・練馬区のスーパー西友練馬店。客からは「明るくなった。どこに何があるかわかりやすくなった」「お客を大事にしている感じ。活気が出ている」「ずいぶん変わりましたね。品揃えが増えました」という声が聞かれた。

口をそろえて必ず買うというのが「お墨付き」。たとえば3種類のピザはいずれも1枚213円。長時間熟成させた生地がおいしいと大人気だ。そのパッケージをよく見ると、「みなさまのお墨付き」とある。実は西友のプライベートブランドなのだ。

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「ポテトチップス」(各種84円)も「お墨付き」。「のりしお」や「コンソメ味」といった定番だけでなく、「火鍋味」「ルーロー飯味」まである。こんな「みなさまのお墨付き」には、熱狂的なファンが大勢いる。

商品化前に実施している第三者機関による消費者テスト。西友の商品とは知らせず、20代〜60代の100人以上の女性に、味はもちろん、容量・価格まで評価してもらっている。そして「非常に良い」「良い」が80%以上のものだけを商品化、だから「みなさまのお墨付き」というわけだ。

「みなさまのお墨付き」の中から番組が調べた人気商品は「つぶつぶ刻み野菜入りケチャップ」(267円)で支持率は93.6%。刻んだ玉ねぎと人参が入っており、ご飯に混ぜて炒めるだけでオムライスの中身が簡単に作れてしまう。

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一番人気の「カシューナッツ香るマッサマンカレー」(162円)は支持率97.3%。ココナッツミルクとカシューナッツをベースに煮込んだ本格的なタイのカレーだ。「お墨付き」のレトルトカレーは全部で17種類ある。

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一方、西友のホームページには不合格となったものも「みなさまのお蔵入り」と題して公開。「鈴かすてら」は4回連続不合格となり商品化を断念。「ポテトチップス・シーフードミネストローネ」に至っては「そもそもポテトチップスに合わない」と、一刀両断されていた。

1963年に誕生した西友は、かつてセゾングループの中核企業だった。「西のダイエー、東の西友」と称され、日本のスーパーをリードする存在だった。コンビニの「ファミリーマート」や「無印良品」も西友が生み出した。

ところがバブル崩壊後、経営が行き詰まり業績は低迷。2005年にはアメリカの小売り最大手ウォルマートの傘下となり、経営再建が進められてきた。ウォルマートの戦略は「エブリデー・ロープライス」。「毎日が安売り」を実現するため、店舗の作りを統一。チラシやPOPを減らすなど、コスト削減を徹底してきた。

だが、コロナ禍の去年、ウォルマートは西友から事実上の撤退。そこで西友を救うため、ある男に白羽の矢が立った。

ユニクロを展開する「ファーストリテイリング」の柳井正会長兼社長はその男を「経営者のプロなんじゃないか。そういう人は日本では少ない。本当に信頼できる人なんじゃないかと思いました」と評している。

西友の改革〜惣菜改革&スーパーヒーロー


全国330店舗、売上高7373億円のトップに立つ社長の大久保恒夫(66)は、全店舗の店長が集まる店長研修で「残念ながら私は社長なので、売り場を変えられない。私が一番やりたいのは店長。店長、ほんとやりたいんですよ」と言った。

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大久保はかつて低迷していたスーパー「成城石井」の業績をV字回復させた「小売りのプロ」。2021年3月、西友の社長に就任するやいなや、徹底した現場主義で全国の店舗を視察。「エブリデー・ロープライス」はそのままに、次々と改革案を打ち出し推し進めた。そしてわずか1年で2005年以降の最高益を叩き出した。

改革1「惣菜改革」

「みなさまのお墨付き」と並ぶ西友の人気商品といえば惣菜や弁当。全部で250種類ほどあるという。例えば「まごわやさしいバランス弁当」(429円)は、まめ、ごま、わかめ、野菜、魚、しいたけ、イモと、栄養バランスを考えた弁当。こうした健康を考えた弁当も増やしている。一番の売れ筋弁当は「だし香るロースカツ重」(429円)だ。

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大久保はこうした惣菜の開発の仕方を変えたという。この日は総菜の試食会。以前の試食は幹部を中心にやっていたが、幹部からパート従業員に変えた。

一品目は「鶏めしおにぎり弁当」。おにぎりは2つとも鶏めし、おかずは鶏の唐揚げと、あえて鶏にこだわったマニアックな弁当だ。さっそく試食すると、「おにぎり一つを別の味に変えてみた方がいいのかなと。おにぎりって一つ一つ買って違う味を楽しむものじゃないですか」という意見が。パート従業員の積極的な発言に、大久保は口をはさまず、熱心に聞いているだけだ。

続いて人気のポテトサラダの改良版。野菜のうまみを引き出すため、玉ねぎは炒め、ニンジンは蒸すなど、それぞれ調理法を変え、マヨネーズは低カロリーにした。こちらは「家庭でつくる味みたいでおいしい」「マヨネーズが抑えてあって野菜の味が強くておいしかった」と好評だった。

大久保はパート従業員を消費者に一番近い存在と考え、彼らの意見を取り入れることにしたのだ。

「お客様と同じような感覚を持った人が試食をするのが一番いい。その意見を見るとすごく参考になるので、やっぱりそういう人たちの意見のほうがいいかなと思います」(大久保)

改革2「スーパーヒーロー作戦」

売り上げを増やす「奥の手」は「スーパーヒーロー作戦」。売りたい商品をこれでもかと大量陳列することで、客の購買欲を刺激するのだ。練馬店にはうなぎ、スイカなど、夏のスーパーヒーローたちが勢ぞろいしている。

「下手をすると10倍売り上げが違う。今まで限界だと思っていたものが、それ以上の数字を叩き出すことを経験できて、まだまだ伸びしろがあると、自分自身の学びになっています」(練馬店店長・秦哲也)

大久保の改革で売り上げが増えると、従業員たちも前向きに働くようになってきた。練馬店の従業員は「1点でも多く買ってもらえればすごくうれしい」と言う。



ユニクロ柳井氏も認める〜「経営のプロ」とは?


1979年、大学を卒業した大久保が就職したのは「イトーヨーカ堂」。上司には「セブン−イレブン」の生みの親で小売りの神様と呼ばれた鈴木敏文氏がいた。大久保は鈴木氏のもとで小売りの何たるかを学んだ。

「ものすごく恵まれていたと思います。本当にどんどんいろんなことが革新されていくのを目の当たりにしました」(大久保)

鈴木氏から学んだことを活かそうと、大久保は90年、経営コンサルタントとして独立。するとその8年後、ユニクロから経営改革の依頼が舞い込んできた。

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「それまでのワンマン経営から科学的な経営に移行する、そういう経営改革をイトーヨーカドーでやられていたので、大久保さんがいいんじゃないかと思いました」(前出・柳井氏)

当時のユニクロは新規出店を急ぐ一方、既存の店舗の利益は伸び悩んでいた。大久保はユニクロを徹底的に調べ上げて作った改革案を柳井氏に見せた。それはこれまでのユニクロを否定するものだった。目を通した柳井氏は「これを全部やります」と言った。

「今日から大久保さんの言ったとおりにやるんだと。彼を副社長だと思って全部聞いてくれと言いました」(柳井氏)

柳井氏は大久保の改革案をすぐさま実行。98年にはフリースが大ヒットしたこともあって、当時60億円だったユニクロの利益は改革後3年で、1000億円を超えるまでになった。

大久保は2007年、業績不振に陥っていた高級スーパー「成城石井」の社長に就任。原料や味に徹底的にこだわったPB商品を次々に開発。4期連続の増収増益へと復活させた。その手腕を買われて、再建を目指す西友の社長に就任した。

西友の改革〜楽天とタッグ&驚きの地方グルメ


改革3「楽天とタッグ」

最近、西友の店内でよく目にするのが「楽天ポイント」の案内だ。西友は去年、ネット通販大手「楽天」と資本提携。登録数が1億を超える楽天の会員を新たな客として取り込めることになった。

さらに「楽天」と組んだことで強化されているのがネットスーパー。野菜や肉から総菜、冷凍食品まで、西友の商品が店とほとんど同じ値段で買える。

去年、横浜市に新設したのはネットスーパー専用の物流センター。注文ごとに自動で商品をピックアップする最新システムを導入。さらに、それまで店舗周辺だけだった配送エリアを店舗のないエリアにまで拡大した。

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「自動化をしたことで、人の作業を6割ぐらい削減できています」(楽天西友ネットスーパー・牧野幸輝)

大久保は楽天とのタッグでネットスーパーの売り上げを2024年には1000億円と、倍増させる計画だ。

改革4「ローカルフード改革」

その改革がもっとも進む長野市の長野北店。客が手に取ったのは「ビタミンちくわ」だ。ビタミン配合のちくわで、石川県のメーカーが作っているが、売り上げの7割が長野という長野県民のソウルフード。それを天ぷらにして「ビタミンちくわ天」(3本278円)を新たに売り出した。

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別の客が手に取っていたのは松本や塩尻の名物・山賊焼の「山賊焼弁当」(429円)。鶏もも肉をニンニク醤油に付け込んで揚げたご当地唐揚げだ。
大久保は、以前は重視していなかったローカルフードに力を入れ出した。これが地元の人の胃袋をつかみ始めている。

大久保が長野北店へ。ローカルフードがさらに増えたと聞いてやって来たのだ。店長の永沢寿士が案内したのはジンギスカンの売り場だった。

「これは私もびっくりしました、長野でジンギスカンが売れるのかと思ったら、すごく売れた」(大久保)

実は長野市周辺では古くから羊の飼育が盛んだった。だから地元ではジンギスカンが広く親しまれている。

一方、「塩丸いか」はイカの胴に足をつめて塩漬けにしたもの。海なし県の長野で保存食として生まれた郷土料理だ。

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「どんどん拡大しています。前に来た時よりもどんどん増えていいと思います。日本人は地方の食文化への関心がすごく高い。もっと積極的にやろうと思って進めています」(大久保)

〜村上龍の編集後記〜
何を聞いても、正確な答が返ってきた。びっくりした答が「小売業はリスクが少ない」だった。確かにメーカーだと生産ラインを変えるとかリスクが大きい。SⅤのサポートが入り、店舗が自分で考えて、計画を立てる、データを確認して、PDCAを回していく、回して売れたら、もっと売る、売れなければ、改善していく、売り場が良くならないわけがない、当然の話だ。食品スーパーとしては日本有数なのでさらに店舗運営力に磨きをかけて、さらに飛躍させていきたい。きっと飛躍する。欠点がない。

<出演者略歴>
大久保恒夫(おおくぼ・つねお)1956年、愛知県生まれ。1979年、早稲田大学法学部卒業後、イトーヨーカ堂入社。1990年、リテイルサイエンス設立。2003年、ドラッグイレブン社長就任。2007年、成城石井社長就任。2013年、セブン&アイHDS常務就任。2021年、西友社長就任。

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