なでしこ対ノルウェーで思い出した選手/六川亨の日本サッカーの歩み

なでしこ対ノルウェーで思い出した選手/六川亨の日本サッカーの歩み

アジアのクラブNo1チームを決めるACL決勝第2戦が10日にテヘランのアザディ・スタジアムで行われ、第1戦を2−0で勝っていた鹿島は、第2戦もペルセポリスに0−0で引き分け、初のアジア王者に輝いた。

国内タイトル19冠と日本最強クラブと言ってもいい鹿島にとって、唯一足りないのがACLのタイトルだった。Jリーグの黎明期である93年から95年は無冠に終わったものの、その後は黄金時代を築く。4−4−2の布陣から堅守速攻というスタイルは25年間変ることがない。むしろACLを勝ち抜くには格好のスタイルだとも思っていた。それがなぜかACLでは早い段階で脱落してきた。

しかし今大会は準決勝のアウェー水原戦で1−3から同点に追いつく粘りを見せた。準々決勝からの6試合で5ゴールを稼いだ途中加入のセルジーニョの活躍が示すように、今大会は持ち味である堅守よりも攻撃的な姿勢が実を結んだと言える。

12月12日からUAEで開催されるFIFAクラブW杯での活躍が楽しみだが、その前に鹿島は来シーズンのACL出場権獲得のためのリーグ戦と、天皇杯の準々決勝という負けられない試合も残っている。これまでも過密日程の中でACLを勝ち上がってきただけに、今回の優勝がプラスと出るのか、選手のメンタリティーにも注目したい。

翌11日は鳥取のとりぎんバードスタジアムでなでしこジャパン対ノルウェーの親善試合が開催された。現コーチで、中学生でL(女子)リーグにデビューした天才少女の大部由美さんが鳥取出身のため地元での開催となったのだろう。

試合は横山のFKから先制すると、岩渕も2ゴールをあげる活躍で4−1の大勝を飾った。ノルウェーは北欧のスウェーデンと並んで女子サッカーが盛んな国だ。95年の第1回女子W杯で優勝すると、00年シドニー五輪では金メダルに輝いた。過去の対戦成績は4勝3敗とほぼ互角。日本は96年アトランタ五輪、99年第3回W杯はいずれも0−4と大敗した。

しかし07年の親善試合で初勝利(1−0)を奪うと、その後のなでしこジャパンは澤や宮間、永里らが中心選手となってチームを牽引しノルウェーに3連勝と立場は逆転する。そして08年の北京五輪ではベスト4に進出するなど、後のW杯制覇やロンドン五輪銀メダルの礎を築いた。

前出した大部コーチが現役時代にデビューしたチームは日興證券ドリームレディースという名のチームだったが、そのチームで忘れられない選手がいる。ノルウェー代表として152試合出場64ゴールを記録したリンダ・メダレンという選手だ。92年に来日すると、いきなり最多ゴール、最多アシストの記録を達成。95年の第1回女子W杯でも優勝の原動力となっていた。

そんな彼女の本職は婦人警官で、フルタイムで働きつつ、空き時間をサッカーに費やしていた。来日後は5ヶ月ほどLリーグでプレーすると、帰国後の7ヶ月は母国での警察官という生活を送っていたものの、94年からは日興證券ドリームレディースのプロ選手としてプレーし、96年にはチームを初優勝に導いた。

96年から日本人選手もプロとなり、日興證券ドリームレディースはリーグ3連覇を果たしたものの、社業の業績悪化のため絶頂期である98年のシーズン中に廃部を決定。大部を始めサッカーを続ける選手は他チームへの移籍を余儀なくされた。

98年といえば、横浜フリューゲルスの出資会社の1つである佐藤工業が本業の経営不振のためクラブ運営からの撤退を表明。さらに親会社の全日空も赤字に陥ったことで、単独でクラブを支えることができない窮地に陥った。クラブを消滅させないためにJリーグが下した決断は、横浜マリノスとの合併だった。LとJで2つのクラブが消滅した98年でもあった。


【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。


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