「それでも昨季よりはマシなのかしら」そんな風に私が自分を慰めていたのは金曜日、3年ぶりのタイトル獲得の期待が懸けられていたコパ・デル・レイ準決勝敗退が決まり、ほぼほぼ、アトレティコの今季が終わってしまったのを実感していた時のことでした。いやあ、1年前を振り返れば、ヨーロッパの大会からCLグループリーグ最下位で年内に完全撤退した後、コパも1月末の準々決勝でお隣さんに負けて終了。それ以来、CL出場権のもらえる4位以内に喰い込むため、ひたすらリーガの闘いに邁進するだけの彼らでしたからね。
比べて今年はまだ、たとえ、1stレグで1-0と負け、相手は今年になって、11連勝しているセリエA首位独走チームとはいえ、再来週の13日(水)にはCL16強対決インテル戦2ndレグを今季はまだ1敗しかしていない、ファンの心の拠り所、メトロポリターノでプレーできるだけ、僅かな希望は残っているんですけどね。とはいえ、CL決勝トーナメントにしろ、リーガの残り試合にしろ、半分は昨今、シメオネ監督のチームが超苦手にしているアウェイゲーム。そう思うと、お先真っ暗な気がしてくるんですが、折しもリーガ4位争いの相手でもあるアスレティックはこの先、4月6日のコパ決勝まで、40年ぶりの悲願の優勝が叶うかもと頭がいっぱいになっている可能性が。
その分、リーガが疎かになってくれたら、有難いんですが、まあ、とりあえず、今週の試合を振り返っていくことにすると。火曜に先行して行われたコパ準決勝のもう1つのカードではレアル・ソシエダがマジョルカをホームに迎えたんですが、あちらは1stレグもスコアレスドローでしたしね。ガッツリ五分で始まった試合は前半終了間際、久保建英選手のクロスがエリア内でライージョの手に当たり、ソシエダがPKで先制のチャンスを掴んだものの、ブライス・メンデスがマジョルカのコパ専任GKグレイフに弾かれ、0-0のまま、ハーフタイムに入ることに。
すると後半5分、左SBジャウメ・コスタのクロスを右SBのジオ・ゴンサレルがヘッドで決めて、アギーレ監督のチームが先制点をゲット。レアル・アレナのファンを凍りつかせたんですが、大丈夫。18分にイマノル監督が満を持して、ここ3週間、負傷で休んでいたオジャルサバルを投入したところ、26分にはブライス・メンデスのスルーパスから、同点ゴールを挙げているんですから、頼れるキャプテンとはまさにこのこと?それが後半残りも1-1のまま、延長戦でも両チーム得点がなかったため、決着がPK戦にもつれ込んだところ、最初のキッカーに立ったオジャルサバルがグレイフに弾かれてしまうとは!
結局、続く9人のキッカー全員が成功したため、最後はダルデルが5本目を決めたマジョルカが4-5で21年ぶりの決勝に進出し、2003年にレクレアティボ(当時は1部、現在はRFEF1部/実質3部)に勝利して、初優勝を遂げた大会で2度目の戴冠を目指すことになったんですが、いやあ。2021年にはコロナ禍で1年遅れとなった2019-20シーズンのコパに優勝したソシエダですが、こちらもアトレティコ同様、来週火曜のCL16強対決PSG戦2ndレグで、2-0で負けた1stレグのremontada(レモンターダ/逆転突破)だけが、今季の楽しみを長引かせる命綱になってしまったのは辛いところですよね。
そして翌水曜にはコパはなかったんですが、スペイン女子代表がセビージャのカルトゥーハでフランスを2-0で下し、昨年のW杯に続き、第1回女子ネーションズリーグ優勝を遂げて、スペイン中が沸くことに。いやあ、私もあまり、女子サッカーは見ないんですが、W杯優勝表彰式でルビアレス前サッカー協会会長がジェニ・エルモーソ(パチューカ)に同意のないキスをした件でFIFAから処分を受け、停職処分になった煽りを喰らい、ホルヘ・ビルダ監督(現モロッコ女子代表)が解任に。その後、モンセ・トメ監督体制になってもスペインの強さにまったく翳りは見えず、ええ、準決勝でもオランダを3-0で退け、余裕でこの夏のパリ五輪出場権も勝ち取っていましたからね。
とにかく、バロンドール&FIFAベスト受賞のアイタナ・ボンマティ(バルサ)を擁するこのチームは、フランス女子代表のルナール監督にして、「2018年男子W杯で私はモロッコ代表監督を率いて、イニエスタ、ブスケツ、イスコを中盤に配したスペインと対戦したが、その時と同じような感覚がした」と言わしめるぐらい、ボール扱いが巧み。だからこそ、翌日のアトレティコが尚更、稚拙に見えたなんてこともあったんですが、これは同日、北朝鮮に勝って、五輪出場を勝ち取った日本女子代表にとっても、いえ、W杯グループリーグで彼女たちはスペインに4-0で大勝しているんですけどね。当たりたくない相手ではないかと思いますが、まあそれはそれ。
翌木曜にマドリッドに戻った女子代表は恒例の大統領官邸、マドリッド市庁舎、州庁舎巡りの後、市内パレードはなしで、夕方から、ビスタ・アレグレ(バスケットボールアリーナ兼マルチイベント会場)に大勢のファンを集めて祝賀イベントを開催。まあ、この辺は昨年ネーションズリーグに初優勝した男子代表と同じ扱いだったため、女子選手たちにも不満はなかったかと。それが終わってしばらくしてから、いよいよ、サン・マメスでアスレティックvsアトレティコ戦の2ndレグが始まったんですが…。
どうもコパ準決勝を地元で開催できるのが久々とあって、アスレティックの過激なファンたちがエキサイトし過ぎてしまったみたいで、まあ、チームバスのお出迎え時に大量のbengala(ベンガラ/発煙筒)を焚くなんてことはアトレティコのウルトラグループもしょっちゅうやっているため、珍しくはないんですが、警官隊と市街戦状態になってはねえ。おまけに試合前にはビルバオのバル(スペインの喫茶店兼バー)にいたアトレティコファンが襲われて、2人が病院送りになったなんて聞くと、試合の結果も相まって、ホントに現地観戦に行かずに良かったと小心者の私など、自分の選択を正当化することができたんですが、それにしたって、あそこまで失望させられるとは!
ええ、インテル戦の1stレグで捻挫したグリーズマンが出場できず、ヒメネス、アスピリクエタ、レマル共々、スタンドで応援となるのはわかっていたとはいえ、それでも一応、立ち上がりはアトレティコもまず、1stレグで0-1と負けていたスコアを同点にしようと、攻めていたんですけどね。サムエル・リノとエルモーソのシュートが外れたのは2人共、前日、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場の外から、私が覗いていたセッションの最後にやっていたシュート特訓に加わっていなかったため、仕方ないと諦めもついたんですが、もしやシメオネ監督が力を入れるべきだったのは最近、特に磨きのかかったザル守備改善の方だった?
というのも13分にはニコ・ウィリアムスが左サイドを上がり、そのクロスから、反対側にいたイニャキ・ウィリアムスにvolea(ボレア/ボレーシュート)でまんまと先制ゴールを挙げられてしまったからで、実際、兄の方は完全にフリーでしたからね。おまけにシュートの軌道上にいたエルモーソなんて、体をかがめて、ボールが当たらないようによけているとなれば、当人が今季で終わる契約を延長しなくても、残念がるファンは少ないかと。ただ、それでもアトレティコが2点取らないといけないのは変わらなかったため、選手たちが根性を見せてくれるのを祈っていたんですが…。
全然です。それこそ、前日のシュート特訓に参加していたジョレンテ、コレアもシュートを外してしまう有り様で、ええ、26分の兄弟連携プレー、イニャキのラストパスから、ニコのシュートは幸い外れてくれたんですけどね。42分には再びイニャキがゴール前の弟にボールを送り、この時はサビッチがマークしていながら、逃げられてしまい、アスレティックは2点目をゲット。そのまま2-0で後半開始となったんですが、うーん、それがスタンドのファンが担架で運ばれるアクシデントがあって、15分程、キックオフできず、ピッチで待機せざるを得なかったのもアトレティコの反撃精神に水を差したんでしょうかね。
珍しくハーフでの選手入れ替えをせず、9分になってから、モリーナ、エルモーソ、コレアをレイニウド、バリオス、メンフィス・デパイに代えたシメオネ監督だったんですが、とうとう16分にはアウェイのダメダメ守備がGKオブラクにまで伝染してしまったから、さあ大変!そう、サンセットのシュートは弾いたものの、そのボールが丁度、サビッチとビッツェルの間、グルセタが1人でいた場所に行ってしまい、3点目を取られてしまったとなれば、もう延長戦に持ち込んでやろうという気力だって、湧きはしませんって。
実際、その後はシュート特訓メンバーだったモラタもヘッドを2回外し、デパイにも、リケルメにも名誉の1点さえ、奪うことさえできなかったんですから、え?もしかして、シメオネ監督が常々、スタジアムのプレッシャーや120分間プレーした後の疲れなど、再現できないのだから、PKの練習はしないと言っているのと同様、シュートを練習してもムダなんじゃないかって?うーん、リーガ前節のセビージャ戦でエリア外から決勝ゴールを挙げたモドリッチなど、毎日の練習の賜物とのことでしたが、それが試合で決まるのは才能があってこそかもしれませんからね。
もちろん、今季19得点挙げているモラタに才能がない訳ないはずですが、ここ8試合ノーゴールと、それがコンスタントに顕現できないのも問題で、結局、試合は3-0、総合スコア4-0でアトレティコは完敗。しかも怖いのはもう中2日で、日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)にはリーガのベティス戦がやって来ることで、いえ、コパ決勝進出で二日酔いモードになっているアスレティックはバルサ戦ですから、勝って、アトレティコとの差を縮めるのは難しいはずなんですけどね。
シメオネ監督は「Cuando la situación no se da, hay que estar tranquilos/クアンドー・ラ・シトゥアシオン・ノー・セ・ダ、アイ・ケ・エスタル・トランキーロス(状況が悪い時には落ち着いていないといけない)」と言っていたものの、相手のベティスは今週試合がなかっただけでなく、その前の週にコンフェレンスリーグのプレーオフでディナモ・ザグレブに敗退。来週の16強対決もないため、リーガに全集中していますからね。となると、いくら今季リーガではまだ不敗のメトロポリターノでも決して、安心はできないんですが…。「Vamos a intentar por lo menos cambiar la imagen de hoy/バモス・ア・インテンタール・ポル・ロ・メノス・カンビアール・ラ・イマヘン・デ・オイ(せめて今日のボクらのイメージを変えるように試みる)」(コケ)ぐらいは、ファンにインテル戦2ndレグ前に愛想を尽かされないためにもやってくれたらと思います。
そして今週末のマドリッド勢の予定も見ておくと、他3チームは皆、土曜試合となり、最初にキックオフするのはエスタディオ・バジェカスでのラージョvsカディス戦。前節はジローナに3-0と完敗し、デビュー戦もレアル・マドリーと1-1の引分けと、まだイニゴ・ペレス新監督就任後の初白星が掴めていない弟分ですが、とにかく相手は18位ですからね。ここで勝っておけば、降格圏との差も勝ち点差7から広がって都合がいいんですが、何はともあれ、ゴール日照りが解消されないことにはどうしようもないかと。
続く時間帯でスタートするのはもう1つの弟分、ヘタフェでコリセウムにラス・パルマスを迎えるんですが、実は彼らも前節はバルサに4-0とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らってきたばかり。その試合でジェネとアルデレテの2人のCBが累積警告となり、今回は出場できないのは痛いですが、10位の彼らと8位の相手の差はたったの勝ち点2だけですからね。3月のスペイン代表招集リスト発表まであと2試合となり、夏のユーロを見据えて、デ・ラ・フエンテ監督にアピールしたいボルハ・マジョラル辺りが頑張ってくれれば、いい結果を出せるかもしれませんよ。
一方、土曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、ラストを飾るのがマドリーで、メスタジャでのバレンシア戦に挑むんですが、実はこれ、昨季はビニシウスに人種差別的な野次が飛び、大きな問題になったカードでねえ。その時はクラブに厳しい処分が下り、バレンシアも該当のファンをスタジアムから永久追放するなど、まあイロイロあったんですが、果たして今回、何も騒ぎがなくて済むのかはちょっと気になるところ。ただ、いい知らせもあって、ミッドウィークフリーだったおかげで、マドリーではとうとう、ジローナ戦で足首を痛め、3試合休場していたベリンガムが「Está al cien por cien/エスタ・アル・シエン・ポル・シエン(100%の状態)」(アンチェロッティ監督)となって復帰することに。
ええ、彼のいない間、マドリーはどの試合も1得点しかしていませんからね。加えて、ホセルも回復し、前節セビージャ戦では出場停止だったカルバハルとカマビンガも戻るとなれば、逆にスタメン選びに困ってしまう?とはいえ、相手のバレンシアは先週末、地元で10人が犠牲になった集合住宅全焼火災でグラナダ戦を延期していて、体力の余り具合ではマドリーの上を行きますからね。来週水曜のCL16強対決ライプツィヒ戦2ndレグも気になるだけに、ここはアンチェロッティ監督のローテーションの腕の見せどころとなりますが、今は2位ジローナとの差も勝ち点6ある彼らだけに余裕を持ってプレーできるんじゃないでしょうか。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
逆転どころじゃなかった…/原ゆみこのマドリッド
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