全店が千葉県にある地域密着型スーパー、「全店閉店」の衝撃

 千葉県の地場大手スーパーマーケット「フードプラザハヤシ」(以下、ハヤシ)が、今年(2022年)9月末までの「全店閉店」を発表しました。

 今後、店舗の跡地はどうなるのでしょうか。

 

「外房エリアの冷蔵庫」的存在だったハヤシ

 「ハヤシ」は1971年4月に千葉市の東側に隣接する茂原市で精肉販売店「林商店」として創業、のちにスーパーマーケットへと転換。1990年ごろからは千葉市に近接する地域のベッドタウン化とともに成長を遂げ、2001年9月には同社初のショッピングセンター「茂原マーケットプレイス」(茂原市)を開業させるなど経営規模を拡大します。

 「千葉県の地場大手」といえども千葉市民や船橋市民などは「ハヤシというスーパーは一度も見たことが無い!」という人も多いかも知れませんが、それもそのはず。ハヤシの店舗の多くは本社がある茂原市をはじめ大網白里市や勝浦市などJR外房線の沿線に立地しており、千葉市や船橋市など県内で多くの人口を抱える東京湾岸の都市には出店していませんでした。一方でその立地ゆえ、東京都民であっても九十九里方面までサーフィンや釣りに行く人にとっては馴染み深い店だったことでしょう。

 千葉都市圏の拡大もあり順調に成長を続けて来たかのように思えたハヤシでしたが、昨年8月に本納店(茂原市)、9月には白里店(大網白里市)を閉店させるなど、近年は店舗数が減少傾向に。もともとハヤシが地盤とする外房エリアは大手スーパーの店舗が比較的少ない地域でしたが、近年は大手ドラッグストアも含めるかたちで競争が激化しつつあったことも影響したとみられます。

 2022年5月現在、ハヤシは千葉県内で食品スーパー「フードプラザハヤシ」11店舗、商業施設「マーケットプレイス」「セントラルモール」など6施設を展開。とくに、鮮魚コーナーに地元・銚子や勝浦から直送した丸魚が並ぶ様は「外房エリアの冷蔵庫」であることを感じさせられる光景でした。


ハヤシ跡にはイオングループの「カスミ」などを誘致

 気になるのは、閉店後の店舗跡地です。最初に述べたとおりハヤシの店舗は6月7日に閉店する「ハヤシ茂原本店」を皮切りに2022年9月末までに全店閉店、ハヤシは今後「不動産事業に経営資源を集中する」計画とのこと。全ての店舗が千葉県内、そして多くが外房エリアにある地域密着型スーパーとして成長を遂げたハヤシだけに「全店閉店」が地域に大きな影響を及ぼすことは必至ですが、ハヤシは閉店に際して、店舗跡に他業種ではなく主に「カスミ」をはじめとしたイオングループの店舗をテナントとして誘致することも発表しています。

 カスミは茨城県土浦市に本社を置くイオングループの老舗スーパーですが、2000年ごろから外房エリアでも複数の店舗を展開。近年はハヤシにとって「一番のライバル」といえる存在でした。

 ハヤシの店舗の多くは閉店後に改装され、カスミの主力業態である食品スーパー「フードスクエアカスミ/フードマーケットカスミ」やディスカウントスーパー「フードオフストッカー」に転換されるものとみられます。カスミは2022年より会員制優待サービスを充実させた新業態ショッピングセンター「ブランデ」の展開を開始しており、大型店はこの新業態へとリニューアルされる可能性もあるでしょう。

 その一方で、先述のとおりハヤシにとってカスミは「一番のライバル」だっただけに、カスミが隣接するハヤシアスモ店(茂原市、9月閉店予定)のようにカスミをはじめとしたイオン系スーパーが近くにある店舗も少なくありません。千葉県内では2021年にイオングループのドラッグストア「ウエルシア」が食品を強化させた新業態1号店を出店させており、すでに競合するスーパーがある地域ではこうした食品強化型ドラッグストアなど別業態の導入や、もしくはイオングループではない全く別の企業が出店することも予想されます。

 残念ながら一部の店舗はそのまま閉店となるかも知れませんが、ハヤシは不動産会社として新たなテナントの誘致を図るとしていることから、多くの地域では買い物客の利便性と従業員の雇用が守られることになりそうです。