近いようで遠かった、羽田と川崎。川をはさんでいるため、この両者間を行き来するには公共交通機関で1時間ほどかかっていました。2022年3月にこの2地域をつなぐ「多摩川スカイブリッジ」が架かったことで、状況は大きく変わりました。都県境の新しい見どころについて、旅行ジャーナリストのシカマアキさんが解説します。

公共交通機関で所要1時間が徒歩たった10分に
 2022年3月12日15時、「多摩川スカイブリッジ」が開通しました。東京都の大田区と神奈川県の川崎市をつなぐ、多摩川の河口に架かる全長675メートルの橋です。羽田空港エリアと川崎市の臨海部が徒歩たった10分の距離で結ばれたことは、実は非常に画期的なことでした。

 多摩川に架かる、人が通れる橋としても最長を誇るこの橋。しかも、車だけでなく自転車や徒歩でも通れるのも魅力の1つです。この多摩川スカイブリッジが開 通する前は、どちらも対岸へ移動するのに車だと20分ほど、電車とバスで約1時間かかっていました。特に神奈川県にとって、橋の開通は「長年の悲願」と言われていた時代も。

 車・自転車・徒歩などで、無料で通ることができる「多摩川スカイブリッジ」の魅力を紹介します。

橋を歩いて渡るととても気持ちいい、飛行機も見える
 多摩川スカイブリッジは、車道と・歩道・自転車道がはっきり分けられています。橋は24時間、無料で通行可能です。ただし、原動機付自転車(50cc未満)と自転車を除く軽車両は通行できません。

 橋の上から、羽田空港を離着陸する飛行機、駐機する飛行機もよく見えます。多摩川の川沿いには、観光クルーズ船や定期船などが停泊する船着き場、ウォーキング向けの歩道なども。春と秋の天気がいい日に橋を歩くと、海と川からの風がとても心地良いです。

 大田区の側には「ハネダグローバルウイングス」、川崎市の側には「キングスカイフロント」という国家戦略特区があります。キングスカイフロントには数々の医療産業が集積している一方、ハネダグローバルウイングスでも最先端の医療施設を誘致しようと開発が進められています。

 橋の途中には、川崎市と大田区の都県境案内プレートもあります。多摩川スカイブリッジを通過する京急大師橋駅〜天空橋駅・浮島バスターミナル〜天空橋駅のバスも運行されています。

ずっと不便だった両エリア、昔は「羽田の渡し」があったが…
 羽田空港のある大田区と川崎市は、どちらも多摩川の河口に位置し、川を挟んで対岸がよく見えます。しかし、人が歩いて通れる橋はこれまで、羽田空港付近から約5キロメートル離れた「大師橋」までありませんでした。この橋の名称は、川崎市にある真言宗智山派大本山である平間寺(へいけんじ)、通称「川崎大師」に由来します。大師橋のそばには「羽田の渡し跡」の石碑があり、昔は渡し船が行き来していました。

 多摩川の河口付近に、首都高速1号線羽田線の「羽田トンネル」もあります。しかし、高速道路のために通行できる車両は限られています。1964年(昭和39年)の開通前、多摩川に橋をかける計画があったものの、空港を離着陸する飛行機の妨げになると管制官から指摘があったことなどから、トンネル化されたとのことです。

 筆者は、羽田空港の国内線ターミナルから、対岸にある川崎市の「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」に泊まるため、公共交通機関を使って移動したことがあります。京急で川崎駅まで行き、路線バスに乗り換えてホテル最寄りの停留所で下車。所要1時間ほどかかりました。ホテルは新しくてきれい、周りも静かで、客室から羽田空港も見えました。しかし周辺は工場地帯でやや殺風景、店舗もコンビニのみ。現在は空港〜ホテル間はシャトルバスで約10分とのことで、多摩川スカイブリッジで便利になったと実感します。

橋の近くに「足湯」やサイクリングコースがある
 この橋を渡って数分のところにある羽田イノベーションシティに「足湯」もあります。羽田空港の南風運用時、ここから離陸機が近い場所で眺められる時間帯も。特に天気が良い日や夕暮れ時などはこの足湯は人気スポットで、多くの人々が足湯に 漬かりながら空港ならではの景色を楽しんでいます。

 一方、川崎市の側にも、川沿いに公園やサイクリングコースがあります。休日をのんびり過ごすのに良いでしょう。

 東京そして神奈川のウォーターフロントとして、今後も開発が進む注目のエリア。開業したばかりでまだきれいな多摩川スカイブリッジを歩いて渡ってみてはいかがでしょうか。