ラムサール条約と言えば、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約のこと。日本国内でこの条約に認定された湿地というと、釧路湿原が有名です。ところが実は都内にも、ラムサール条約に認定されている湿原があるんです。都内の公園に詳しいエデュケーショナルライターの日野京子さんが解説します。

 過ごしやすい秋を迎え、休日は思いっきりリフレッシュしたいと思っても東京都内に住んでいると自然体験をしたり、世界自然遺産のような場所はないと思われがちです。

 しかし、実は東京都内、しかも23区内にラムサール条約に認定された湿原があるのをご存知でしょうか。

 今回は、東京都としては初となる「ラムサール条約湿地」に認定された葛西海浜公園や周辺スポットをご紹介していきます。

高度経済成長期末期に着工
 東京湾の大規模開発事業の中でも、トップバッター的な存在なのが「葛西沖開発事業」です。

 高度経済成長期の末期である1970年代初頭に着想、着工されました。単なる都市開発ではなく公害問題が深刻化していた時代に、地元住民や有識者から要望があった葛西沖の自然の生態系を守りつつ行われました。

 自然との調和や自然の眺望を大切にする考えは、その後の臨海開発事業でも受け継がれることになります。

 この事業によって葛西地域では埋め立てにより清新町や臨海町といった新たな町が生まれました。

 バブル経済真っただ中の1989(平成元)年、東京湾に面する葛西臨海公園が開園。約80.6ヘクタールという都内有数の広さを誇る葛西臨海公園には国内では2番目に高い「ダイヤと花の大観覧車」や人気スポット「葛西臨海水族館」といった施設があります。

 公園内は歩道も広く、手入れが行き届いた木々や花々が訪れる人々を出迎えてくれますが、ラムサール条約湿地に認定されているのは、より自然を感じる葛西海浜公園になります。

都市部にある野鳥の楽園
 葛西海浜公園は旧江戸川と荒川に挟まれ、この2河川が東京湾に流れ込む汽水域にあり、「西なぎさ」「東なぎさ」という二つの人工干潟で構成されています。その少し先には自然干潟「三枚洲」があり、周辺は自然豊かな地域です。

 野鳥も多く飛来することから、公園一帯は国指定鳥獣保護区域に指定されています。

 そして、このうち「東なぎさ」が2018年に東京都で初めてラムサール条約湿地に登録されました。海上を含め367ヘクタールが指定されています。

 東京都発行の「葛西海浜公園の歩み」によると、9つの国際基準のうち3つの条件、

・定期的に2万羽以上の水鳥を支えている湿地
・水鳥の1種、または1亜種の個体群の個体数の1%以上を定期的に支えている湿地
・生活環の重要な段階において動植物種を支えている湿地

をクリアしています。

 貴重な生態系の維持や飛来する野鳥を保護する観点から、「東なぎさ」を含むラムサール条約湿地登録区域は、より厳しい「国指定鳥獣保護区特別保護地区」となっており、原則立ち入り禁止区域になっています。

都内で唯一の海水浴場がある「西なぎさ」
 一方、「西なぎさ」は訪れる人々が海に親しみ、レクリエーション活動が出来る都市公園としての役割を担っています。

 東京湾の水質改善も進んだことから、2012年夏には東京都内としては50年ぶりとなる、海水浴場復活となりました。

 海の家が立ち並ぶといった世間一般がイメージする海水浴場とは異なりますが、概ね7月下旬から8月下旬にかけて海水浴体験が行われています。指定された時期以外は周辺での遊泳は禁止になっています。

 また、公園内にはバーベキューエリアもあり海を眺めながら解放的な気分でバーベキューを楽しむことができます。事前予約制で、大荷物を抱えて出かける必要もない手ぶらプランもあるので便利です。

 この他にも、干潟を学ぶイベントや体験会、野鳥観察が定期的に行われており、子ども達が東京湾を身近に、そしてよりよく知る機会が設けられています。

最寄り駅には昨年オープンした施設も
 都心からほど近く交通の便が良い葛西臨海公園や海浜公園は、JR京葉線の葛西臨海公園駅の目の前にあります。

 すでに公園としては30年以上の歴史を持つ地域であり、東京の臨海都市の開発事業では最古の部類に入る葛西地域ですが、駅の高架下には2021年1月に複合商業施設「Ff(エフエフ)」がオープンしました。

 「パークアウトドア」をコンセプトに掲げ、臨海公園の風景とマッチした自然的な趣を醸し出し、地域の特徴を大切にしています。

 フードコートもあり、家族で好きな物を選んで食べられるため、子ども連れのお出かけには便利です。

 また、施設内では大人も子どもも楽しめるワークショップも定期的に開催されており地域の人々の交流や、公園を基点とした人と人との交流の場の役割も担っています。

海風にあたり季節の移り変わりを感じよう
 東京は海に面した自治体ということもあり、臨海部には数多くの公園が設置されています。その中でも、葛西臨海公園にある海浜公園は東京湾の風景や自然保護の目的もあり、原風景を見ることができます。

 ギラギラとした夏の太陽も終わり、秋の虫の音が聞こえる季節になりました。海風にあたり季節が着々と移り変わっていることを感じに出かけてみてはいかがでしょうか。

■葛西海浜公園
住所:東京都江戸川区臨海町6-2
アクセス:JR京葉線 葛西臨海公園より徒歩11分

参照
葛西海浜公園の歩み
https://www.kouwan.metro.tokyo.lg.jp/kanko/kasaikaihinkouennoayumi.pdf