セブン&アイHD傘下の大手百貨店「そごう・西武」が売却され、米ファンド×ヨドバシ連合が全株式を取得しました。そのため近い将来「そごう・西武」旗艦店へのヨドバシカメラの出店が見込まれています。サービスや店舗構成はのように変わっていくと予想されるのでしょうか。都市総合研究所の若杉優貴さんが解説します。今回は後編です。


「そごう・西武」の店舗網、どう変わる?
 今年(2022年)11月11日に発表された流通大手「セブン&アイHD」(本社:東京都千代田区)による傘下の大手百貨店「そごう・西武」の売却。今後「そごう・西武」の全株式はソフトバンク系の投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」(本社:米国)が取得、さらにパートナー企業としてヨドバシカメラの持ち株会社「ヨドバシHD」(本社:東京都新宿区)も取得するための資金を拠出しており、近い将来「そごう・西武」旗艦店へのヨドバシカメラの出店が見込まれています。

 現在、「そごう」「西武」の国内店舗は大型店10店舗、小型店3店舗。また、海外にも多くのFC店舗を抱えています。これらは今後どうなるのでしょうか。


わずか10店となった「そごう・西武」、都心旗艦店は残りそうだが…。
 2022年時点で、国内のそごうの大型店は「そごう大宮店」(埼玉県さいたま市)、「そごう千葉店」(千葉県千葉市)、「そごう横浜店」(神奈川県横浜市)、「そごう広島店」(広島県広島市)の4店舗、西武の大型店は「西武秋田店」(秋田県秋田市)、「西武所沢S.C.」(埼玉県所沢市)、「西武池袋本店」(東京都豊島区)、「西武渋谷店」(東京都渋谷区)、「西武東戸塚S.C.」(神奈川県横浜市)、「西武福井店」(福井県福井市)の6店舗(秋田店は規模縮小により現在3フロアのみで営業していますがここでは大型店に含む)となっています。

 そごう・西武の店舗はかつて両社合わせて約70店舗ほど、セブン&アイ傘下に入った2006年時点でも国内に28店舗あったことを考えると隔世の感を禁じ得ない状況といえますが、それだけに現在首都圏に残っている店舗は多くが「旗艦店級」であり、そうした店舗は「商業施設として存続できる可能性」が高く、さらに「ヨドバシカメラの出店候補になりうる」ともいえます。

 11月時点では、今後そごう・西武の各店舗をどのように扱うかについては「一部店舗にヨドバシカメラが出店する方針」だということ以外は明かされていません。

 とくに、ヨドバシカメラにとっての最大のライバル「ビックカメラ」の本拠地でありヨドバシの店舗が無いエリアの「西武池袋本店」、同じくビックがあるもののヨドバシが無いエリアの「西武渋谷店」、そしてヨドバシ現店舗(千葉そごうの旧店舗だった「塚本大千葉ビル」)が老朽化しており手狭であるためビックカメラよりも見劣りがする「そごう千葉店」の3店舗は「ヨドバシカメラが優先的に出店したい店舗」であるといえるでしょう。


地方店・郊外店は「経営方針次第」か
 現在、ヨドバシカメラはほとんどの店舗が「首都圏を中心とした大都市圏の駅前一等地」にあります。そのため、地方店や郊外店がある街ではヨドバシカメラの出店を期待する声よりも「店舗ごと閉鎖になってしまうのではないか」と危惧する声が多く聞かれます。

 地方都市や大都市郊外での百貨店運営が厳しさを増すなか、そごう・西武の地方店や郊外店はいずれもここ数年のあいだに店舗存続を目指した店舗改革を進めており、3フロアのみで縮小営業することになった「西武秋田店」、2021年に全館改装を終えたばかりの「西武福井店」、現在進行形で改装計画を進めている「そごう広島店」など、さまざまな異なる事情を抱える店舗があります。なかでも「西武福井店」「西武所沢S.C.」「西武東戸塚S.C.」の3店は、近年の改装で若者を呼び込むべく百貨店直営売場以外のテナント割合を高めており、そのうち後者2店には大型テナントとしてヨドバシ以外の家電量販店が出店しています。(このほか「そごう大宮店」の別館にはビックカメラが出店中)

 現在も営業を続けている地方店・郊外店は比較的経営状態が良い店舗であるといえますが、こうした「ヨドバシカメラの出店が難しいと思われる店舗」が今後も存続できるかどうかについては、「新体制での経営方針次第」になるといえそうです。

 とくに地方の店舗は「県内唯一の百貨店」として県全体からの集客や取引がある店舗もあり、百貨店が地域経済に与える影響も非常に大きなものとなっています。それゆえ、地域としても何らかの動きがあるならばできるだけ早期の発表を行って欲しいでしょうが、果たして――。

 また、2022年時点で「そごう・西武」の小型店は、「そごう・西武アリオ柏」(千葉県柏市、そごう柏店の後継)、「西武武蔵小杉」(神奈川県川崎市、一旦閉店したのち2021年再出店)、「西武三島」(静岡県三島市、西武沼津店の後継)の3店舗。こちらもかつてはそごう・西武の両社を合わせると全国各地に100店舗以上もあったため、一時期よりは大きく数が減ってしまいました。こうした小型店はそれぞれコンパクトな売場でありながら、銘菓や贈答品のほか百貨店向けのコスメやアパレルを扱う店もあり、「出店地域でここだけでしか買えないもの」を数多く取りそろえています。

 これら「そごう・西武」の小型店3店は、現在いずれもイトーヨーカドーを核とするセブン&アイ系列のショッピングセンター内にテナントとして出店しています。そのため、残念ながら大型店よりも「業績如何によっては閉店となる可能性が高い」と言わざるを得ないでしょう。

 なお、先述したとおり「そごう・西武」は近年多くの店舗を閉鎖していますが、なかには閉店後も同社が不動産の一部を所有し続けているものがあり、こうした旧店舗跡がヨドバシカメラの手によって再活用・再開発されることもあるかも知れません。
個人的には2021年に閉店した「そごう川口店」(埼玉県川口市)の跡は立地環境的にも家電量販店向きだと思うのですが…。


海外の「そごう・西武」は…?
 アジア各地には「そごう」「西武」の名前を冠する百貨店が2022年時点で約40店弱あり、台湾や香港などではそごうの新規出店も計画されています。いずれも現地社会に溶け込んだ地元住民向け百貨店として運営されており、海外旅行の際にお土産購入や地元グルメを楽しむためにお世話になったことがある人も多いのではないでしょうか。

 2022年現在、これらの海外店舗は全てそごう・西武の「フランチャイズ店」(商標貸与店)として運営されており、そごう・西武との共同販促などが行われることはあっても資本関係はありません。

 もし仮に今後「そごう・西武の日本の旗艦店が消滅」となって「のれんの価値」が大きく損なわれることとなればFCから離脱する店舗が出てくる可能性もないとは言えませんが、海外の各店は多くが現地で老舗百貨店として親しまれているため、今回の買収劇の影響によって閉店となったり、すぐに屋号が変わってしまうということはないでしょう。


憶測飛び交うそごう・西武の将来像
 ヨドバシHDは米ファンドによるそごう・西武買収に際して「そごう・西武の百貨店と連携した新たな店舗の出店をはじめ、最先端の情報システム活用や、豊富な品揃え等により、お客様のご期待にお応えするよう、より一層、価値ある店づくりに努めてまいります」としている一方、改装計画などについては「詳細が決まり次第適宜発表をさせて頂く」と述べるに留まっています。

 そごう・西武の店舗はその多くが大都市の駅前一等地にあり、「街の顔」として永年親しまれてきました。それゆえ今回の買収劇は注目度が高く、さまざまな憶測が飛び交う状況となっています。
今の段階では、当面は各店とも百貨店のまま営業を続けるとみられますが、今後の具体的な「そごう・西武の将来像」についての発表が待たれます。

 現在、ヨドバシカメラでは札幌市(西武跡)、仙台市に新店舗を建設中であるほか、昨年開業したばかりの甲府市の店舗にも空き床がありますが、これら3都市はいずれも「かつて西武の店舗があった」という共通点があります。ヨドバシカメラの店舗を活用するかたちで、こうした都市に「西武の売場が再登場する」という未来もあるかも知れません。