東京都には約2,000社の神社があると言われています。初詣や祈願成就で参拝したり、散歩がてらに立ち寄ったりと神社に行く機会は何かと多いのでは。そこで本シリーズでは、写真家の石津祐介さんが神社の見どころや土地とのつながり、オススメの授与品を紹介し、神職の方からお話を伺います。第21回は「上野東照宮」です。

●徳川家康を祀る東照宮

 上野東照宮は、上野公園に鎮座する日光や久能山の東照宮と同じように徳川家康を祀る神社です。今回は、禰宜の嵯峨まきさんに神社を案内していただきました。

 「上野東照宮は、1616年に危篤の徳川家康が信頼していた天海僧正と藤堂高虎に『三人の魂が一つに鎮まるところを作ってほしい』という遺言により、1627年に藤堂高虎の屋敷があった上野の地に寛永寺の施設の一つとして創建されました。その後、徳川家康公の他に徳川吉宗公、昭和には徳川慶喜をお祀りするようになりました」(嵯峨さん)

●境内の見どころ

 金色殿と呼ばれる社殿は、1651年に徳川家光によって改築されました。それから幾多の災害から奇跡的に被災を免れ、創建当時の姿をとどめています。また社殿を囲む「透塀(すきべい)」には上段には野山の動物や植物、下段には海川の動物が彫刻されています。

 「日光の東照宮までお参りに行けない江戸庶民のために、現在の建物に建て替えさせたといいます。幕末には戊辰戦争の一つの上野戦争が起こり、さらに関東大震災や東京大空襲からも社殿は崩壊を免れました。そのことから強運の神様として、また御祭神の家康公から出世・勝利・健康長寿の神様として信仰されています」(嵯峨さん)

 社殿に向かう参道には、御神木の樹齢600年の大楠を眺められるように「静心所(せいしんしょ)」というスペースが設けられています。

 「大楠と共に樹齢400年の御銀杏(おんいちょう)の木がありましたが、幹が割れたために伐採されました。静心所の屋根に使われています。伐採されましたが、切り株から新芽が伸びて今では3mほどの高さに成長しています」(嵯峨さん)

●ぼたん苑とダリア

 境内にあるぼたん苑では、毎年1月1日から2月中旬、4月中旬から5月中旬までぼたん苑が開催されています。秋には、9月16日から10月29日の期間で「ダリア綾なす秋の園」が開催されます。

●人気の授与品や御朱印をいただこう

 さまざまな御守がそろう上野東照宮ですが、徳川家康の命日である17日に限定で授与される「昇龍守」は行列ができるほどの人気だといいます。

 「御守は、唐門に彫られた左甚五郎作の『昇り龍』がモチーフになっています。17日限定ですが、今は感染対策のため16、17、18日の3日間授与しています」(嵯峨さん)

 他には、上野動物園のパンダにちなんで生活安全を祈願した「パンダの御守」や、たぬきを祀る境内社の栄誉権現社にちなんだ「他抜(他を抜く=たぬき)守」と「子だぬき守」、秋に授与される御銀杏の木片が入った「御銀杏守」、新型コロナ終息と無病息災祈願の「無病息災守」、社殿の装飾を織り込み未来を祈願した「輝守」などが人気です。

 御朱印には通常のものと他抜(たぬき)御朱印があり、そのほか季節や神事にちなんだ限定の御朱印があります。御朱印帳は、社殿をモチーフにした紺色、社紋をあしらった白色、ぼたんの写真入りの3種類が用意されています。

■上野東照宮(うえのとうしょうぐう)
住所:東京都台東区上野公園9-88
TEL:03-3822-3455
参拝時間:夏季(3〜9月)9:00〜17:30※社務所17:00まで
冬季(10〜2月)9:00〜16:30※社務所16:00まで
料金:社殿拝観(栄誉権現社、御神木など)500円/ぼたん苑800円(※季節により変動)
アクセス:JR「上野駅」 公園口より徒歩5分
京成電鉄「京成上野駅」 池之端口より徒歩5分
東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分