2023年11月に東京メトロ銀座線・丸ノ内線の駅設備などが「登録有形文化財」に登録されました。その中には鉄道ファンにとって、なじみの深いあのスポットも。今回は、それぞれの施設の歴史や成り立ちを都市商業研究所の若杉優貴さんがひもといていきます。


東京メトロ、新たに4施設が「文化財」に

 文化庁は、今年(2023年)11月24日付で「東京メトロ」の建築物・土木構造物4カ所を新たに「登録有形文化財」に登録しました。どういったものが文化財として認められることになったのでしょうか。


観光客におなじみの浅草駅や御茶ノ水の撮影スポットも

 今回、登録有形文化財として登録されたのは、銀座線浅草駅の「浅草駅4番出入口上家」(台東区)、そして、丸ノ内線の御茶ノ水駅周辺にある「丸ノ内線御茶ノ水駅出入口上家」(文京区)、「丸ノ内線御茶ノ水橋りょう(橋梁)」(文京区・千代田区)、丸ノ内線四ツ谷駅にある「丸ノ内線四ツ谷こ線橋(跨線橋)」(新宿区)の4施設です。

 そのうち、銀座線浅草駅の4番出入口は1931年ごろに完成。寺院建築をモチーフとした鉄筋コンクリート造りで「近年観光用に造られたものではないか」と思っていた人もいるかもしれませんが、実は間もなく築100年を迎える歴史建築なのです。

 浅草寺は1945年に大部分が空襲で焼失しており、現在の本堂や雷門は1950年代から60年代にかけて鉄筋コンクリート造りで再建されたもの。浅草寺にとって、浅草駅出入口は鉄筋コンクリート造り寺社建築の「先輩」であるといえます。

 また、御茶ノ水駅近くにある「丸ノ内線御茶ノ水駅出入口上家」は1953年に、「丸ノ内線御茶ノ水橋梁」は1955年に完成したもの。

 神田川に架かる御茶ノ水橋梁は「地下鉄が地上に顔を出して中央・総武線と出会う場所」として、今や都心を代表する景観の1つとなっており、珍しい臨時列車などが走る日には鉄道ファンが聖橋からカメラを構える姿も見かけます。

 「丸ノ内線四ツ谷跨線橋」は1959年に完成。JR中央本線を跨ぐ形の跨線橋で、橋上に丸ノ内線四ツ谷駅が設置されるという特殊な構造になっています。


間もなく創業100年、東京メトロの「歴史スポット探し」をしてみては

 さて、「東京メトロの文化財」といえば、忘れてはならない「車両」もあります。

 その車両とは2017年に国の重要文化財に指定された「旧東京地下鉄道1000形1001号車」。1927年の銀座線一期開業時にデビューして1968年まで使われた電車で、現在は地下鉄博物館(江戸川区)に収蔵されています。

 銀座線では2017年から旧1000形をモチーフとした「1000系特別仕様車」が2編成運行されており、この特別仕様車は車体色やライト形状、車内化粧板、シートモケット色、つり革などが通常車とは異なる旧1000形を模したものとなっているほか、かつてポイント通過時に用いられた予備車内灯も設置されています。

 また、銀座線では浅草駅のほかに稲荷町駅(台東区)でも開通当時に造られた駅入口が現役。こちらは浅草駅とは異なり、タイル張りのモダンな雰囲気で、当時流行した丸窓がアクセントとなっています。

 東京メトロ銀座線の一期開通から間もなく100年。「新時代の交通機関」だった地下鉄も、今や「文化財」としてその価値が認められるようになりました。

 近年、東京メトロの各駅ではホームドアの設置などを含めたリニューアル工事が行われており、内装が一新された駅も少なくありませんが、そうした駅であってもさまざまな場所に昭和の面影を感じるモノが残されていることがあります。

 皆さんも、いつも利用している地下鉄で「歴史スポット」を探してみてはいかがでしょうか。

参考:東京メトロリリース
銀座線・丸ノ内線の建築物・土木構造物が 登録有形文化財として登録されました!
https://www.tokyometro.jp/news/2023/216631.html
地下鉄博物館所蔵「日本初の地下鉄車両1001号車」が国の重要文化財に指定されました!
https://www.tokyometro.jp/news/2017/190051.html