能登半島地震で液状化の被害を受けた新潟市の自治会が、対策を求めて動き始めています。住民たちの思いを背負い奔走する自治会長の活動を取材しました。

能登半島地震による新潟市の住宅被害は1万7000棟あまり、その多くが液状化によるものと見られています。江南区の天野地区も大きな被害受け、発災直後、住民たちは土砂の撤去に追われていました。
■住民
「エライことになったなという感じ、ただ皆さんと助け合って土砂の除去とか協力してやっていこうと思う。」

天野地区中前川原自治会の増田進会長、地震発生直後から住民たちの相談に乗ってきました。4月に開かれた自治会の会議では、市に対して液状化対策の早期実現を求める考えを示しました。
■天野地区中前川原自治会 増田進会長
「これから私たちが取り組んでいかなければならないのは、液状化の根本的な対策。一日も早く液状化対策の調査をして工事をしてほしい。」

新潟市は、今後の地震に備え、地盤改良などを実施する方針です。被害状況の調査などを経て地域を選定するため、工事の着手までには2年〜3年を要するとしています。
■住民
「(住宅を)直してもまた地震がきて液状化の被害があるんじゃないかとなると、どのタイミングで直したらいいのだろう?2〜3年も待っていられないのが正直なところ。」
■天野地区中前川原自治会 増田進会長
「新潟市は初めて(液状化対策)事業に取り組む訳なので、非常に難しいと思うが私たちがここに住んでいる以上は、一日も早く(対策してほしい)というのが本音、難しいことがあったとしても一日も早くお願いしたい。」

天野地区は、かつて信濃川が流れていた旧河道、特に液状化しやすい地盤です。地震の度に被害を繰り返す恐れがあり、家の修復をためらう住民もいます。

■天野地区中前川原自治会 増田進会長
「あっ鈴木さん、自治会長の増田ですー、よろしくお願いします。」

増田さんが訪ねたのは、鈴木栄吉さん・77歳。自宅は半壊の判定を受けましたが、再び液状化の被害を受けることを恐れて修復や建て替えを断念。妻・順子さんとアパートに引っ越しました。

■天野地区中前川原自治会 増田進会長
「お体の具合などは大丈夫ですか?」
■鈴木栄吉さん
「まぁ、家の家具の整理で、引っ越しで持ってくるには、今までと違う訳ですよ、スペースが。風呂もあるけど引っ越してからシャワー1回浴びたきりで、風呂はここ来て入っていない、お母さんも風呂入っていないもんな?」
■妻・順子さん
「シャワーだけ。」
■鈴木栄吉さん
「使い勝手が慣れなくて。この年で環境が変わるのはキツイ。」

不慣れなアパートでの暮らし。風呂は使わずに、車で10分ほどの入浴施設を利用しています。さらに、今後の生活への不安も。
■鈴木栄吉さん
「月々の家賃があるが、それを考えると中々払っていけない感じ(年金生活の)状況だとね。」
■天野地区中前川原自治会 増田進会長
「例えば液状化対策でこの地区が地盤大丈夫ですよって、言われた場合…また元の場所にお住みになるとかそんな気持ちってどんなもんでしょうかね?」
■鈴木栄吉さん
「地盤がしっかりすれば少し小さな家に建て替えたい、(再び被害を受ける可能性があるので)今のところは無理ですよね。」

鈴木さんの自宅は、築50年ほど。液状化の影響で家と排水溝の高さが逆転し、地下室に水がたまるようになりました。今も週に一度、ポンプで排水を続けています。家の中は、柱のひび割れの他、床が大きく傾き、妻の順子さんが船酔いのような症状に襲われました。
■鈴木栄吉さん
「(地震発生時に)メリメリメリメリって音がして、その時にたぶん沈み込んだと思う」
■妻・順子さん
「あの恐怖は今までの地震で最高だった」

増田さんは、鈴木さんの話しを聞き、液状化対策実現への決意を新たにしました。
■天野地区中前川原自治会 増田進会長
「ぜひ、戻ってくるのをまってますので。(鈴木さんから)液状化対策が成されて、安全な土地になれば、同じ場所で建て替えをしたいというお言葉を頂きました。自治会長の立場としても、出来るだけ前に進めたいと考えています。」

新潟市は、液状化対策の実施ついて、住民の合意形成と費用の一部負担を求めています。特に課題となるのが住民の費用負担です。かつて液状化に見舞われた地域で、柏崎市の山本団地や千葉県の浦安市では、住民の議論の末、なんとか費用負担することがまとまり、対策を実施しました。

一方、札幌市や熊本市では費用負担がなく、スムーズに対策が進められました。
■天野地区中前川原自治会 増田進会長
「(高齢者が)正直、あと何年も生きられないから、(液状化対策に)何十万も払うの嫌だよという人もハッキリ言って居ります。出来る限り、住民負担がゼロになるような対策、施策をお願いしたいと思う。」

新潟市が開いた液状化対策などの説明会。増田さんは、早期の実施と住民負担をなくすことを要望しました。
■新潟市 中原市長
「(Q.負担なしという要望がありましたが)出来るだけ負担が少なくなるようにしたいと考えているが、全く負担がないとなると他の地域との不公平感も出てくるので、行政としては、(他地域の事例を)十分調べた上で、決定してく必要がある。」
■天野地区中前川原自治会 増田進会長
「一番大切なことは被災者に寄り添った施策、対策をもっともっとお願いしたい。出来る限り住民負担のないようにお願いしたい、そのように頑張っていただきたい。私も声を上げ続けていきたい、あくまでもお願いですけど、自治会長としては。」