BMWのMモデル(Mハイパフォーマンスモデル)「M3」「M4」や、Mパフォーマンスモデルの「M135i xDrive」「X4 M40i」などを開発するのがBMW M社です。いったいどんな会社なのでしょうか。

1972年に創立されたBMW M社

 2022年9月、欧州で「XM」が世界初公開されました。

 このモデルは、独BMWのハイパフォーマンスブランド、BMW M GmbH(BMW M有限会社=以降BMW M社)が開発したモデルで、伝説のスーパーカー「M1」以来のBMW Mオリジナルモデルとなります。

 2022年はこのBMW M社創立50周年の記念すべき年のため、このXMをはじめ「3.0CSL」や「M4 CSL」などスペシャルなモデルが欧州で発表されています。

 BMW M社とはどんな会社なのでしょうか。あらためて見ていきます。

BMWの本社はドイツ・ミュンヘン市内にありますが、M社の現在の本社は、ミュンヘン市内からミュンヘン空港に向かうアウトバーンの途中にあるガルヒングという場所にあります。

 BMW M社の設立は1972年で、当時は「BMWモータースポーツGmbH」という社名でした。

 そもそもはその名のとおり、BMWのモータースポーツ部門を担当していました。その後、レース用のエンジンの開発部門をイギリスに拠点を移したことから、1993年に現在の社名に変更しました。もちろんBMW M社のMには、モータースポーツの意味も含まれています。

 M社の事業は5つの柱から成り立っています。

 まずはMモデルの製作です。M社が最初に手がけたスーパースポーツカー「M1」は1978年に誕生しました。次に登場したMモデルは、「3シリーズ」の2ドアモデルをベースにブリスターフェンダーを装着し、2.3リッター直列4気筒エンジンを搭載、初代「M3」として1986年に登場しました。

 今では「M2」「M3」「M4」「M5」「M8」「X5M」「X6M」が揃い、サーキットを走るマシンで一般道も走れる、ということをコンセプトとしてそのイメージは定着しています。これらは「M ハイパフォーマンスモデル」と呼ばれます。

 これらは、以前はBMW M社の社内工場で作られていましたが、いまはBMWの工場でノーマルのBMWと同じラインで流れています。これにより、多くの台数をこなせるようになりました。

 通常のBMWとMモデルの中間に位置するスポーティカーとして「M パフォーマンスモデル」も高い人気を誇ります。これは1シリーズからXモデルまで、各シリーズに用意されています。
 
 これらはボディ、シート、カーボンパーツ、計器、エンジン、タイヤなど、Mモデル専用パーツが組み込まれます。工場で製造する前の開発段階の企画、デザイン、テストなどは、BMW M社で独自開発されます。BMWのデザイナーとは別に、BMW M社のデザイナーもいるそうです。

 Mモデルの製作に付随して、1985年からMスポーツパッケージが始まりました。これが2本目の柱になります。

 ノーマルのBMW車でもっとスポーティな雰囲気を味わいたいという要望に応えて、車高を6mmから10mm下げたサスペンションを設定したり、Mデザインのホイールを用意したり、スポイラー類も用意しています。薄い青色と濃い青色と赤色の斜めの3色カラー目印になっています。じつはこの3色の設定も途中で色が変わっていて、昔は青色、紫色、赤色でした。

世界各国でドライバートレーニングも開催している

 3つ目の柱は、1978年から始まったBMWドライバー・トレーニングで、いまはBMWドライビング・エクスペリエンスと名称を変えています。

 1970年代のドイツでは交通事故が多く、BMWはカーメーカーの立場から、安全なクルマの扱い方を広めるために開催しました。

1972年当時のBMW M社。当時は「BMW モータースポーツ社」という名前だった

 警察や軍隊などもこのトレーニングを採用し、保険会社もその効果を認め、受講者には保険料を割り引くなどの特典を設けました。半日コース、若者向けコース、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェなどのレーストラックコース、スウェーデンやオーストリアのウインターコース、アフリカの砂漠を走破するコースなど、世界中でバラエティに富んだメニューを用意しています。

 またインストラクターのための高度なトレーニングも用意しています。ちなみに日本では1987年11月と1988年3月にラウノ・アルトーネン氏が来日して試験開校し、1988年5月に筆者はインストラクター研修のために2週間ドイツに行きました。

 1989年から一般のドライバーが参加できる正式開校したため、すでに30年以上の歴史があります。このように各国のBMWのインポーターが自国でBMWドライビング・エクスペリエンスを開催しています。

 4つ目の柱は、1991年から始めたBMW Individual(BMWインディビデュアル)です。

 オプションパーツでは対応しきれない、ユーザーの難しいオーダーを一手に引き受けてくれるのがインディビジュアルです。スペシャルオーダーのボディカラーを塗装してくれるのはもちろん、シートも革の種類や色、ステッチのカラー、刺繍も施すことが可能です。納車する国のレギュレーションに違反しない限りは対応してくれます。

 ただしそのオーダーにより、通常よりも半年から1年くらい待つ覚悟は必要になってきます。

 5つ目の柱は、あまり知られていませんが、特殊車両の製作です。

 テロに巻き込まれても、車内の人が安全にいられるようにするためのセキュリティカーなどがその一例です。分厚い窓ガラス、床下で爆弾が爆発しても耐えられるようにした丈夫なフロア板を張り、ボタンひとつで外部からの攻撃に耐えられるようにするスイッチも付きます。これらはランフラットタイヤよりも強力な、パンクしないタイヤを履いています。「7シリーズ」ベースの車両が4トン車ほどの重量になるといいます。

2022年9月に世界初公開された新型「XM」。伝説のスーパーカー「M1」以来のBMW Mオリジナルモデル

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 こうしてBMW M社の事業を見てみると、単にスポーティなクルマ、サーキットを走ることが得意なクルマだけを作っているだけではないということがわかります。

 BMW M社と立場が似ているのが、アウディの「アウディスポーツ」社やメルセデス・ベンツの「メルセデスAMG」社です。

 アウディスポーツ社はもともとクワトロ社という名前で、アウディ「RS」モデルや「R8」などを開発していました。

 メルセデスAMG社は、メルセデスAMGの各モデルを開発しているから、BMWのM社と同じ位置にいるようにみえます。ただしMモデルは、専用エンジンをつくるなどMモデル専用パーツを多数採用し、ノーマルモデルとはかけ離れた尖ったポジションにいるところが特徴になっています。