釣りボートを手に入れた葉山の釣りライフを届ける連載5回目は、前回に続き「タイラバ」の奥深い釣法に迫ります。
ボートでのメインの釣りとして、シンプルな道具立てで、初心者でも魚の王様・マダイを釣ることができる「タイラバ」。その魅力と概要を前回お伝えしました。
ただ、この釣りはシンプルながらも、小さな選択肢やパターンの組み合わせがたくさんあり、実に奥が深い釣りでもあります。
海の状況で刻々と変わるこの組み合わせを丹念に検証し、どのようにして「正解」に近づけるかが、その日の釣果を左右するのです。
前回に引き続き、ボート釣りでのタイラバについてご紹介しますが、今回は僕が日頃特に気をつけていることを中心にお伝えします。
●季節によって変わる攻め方と深さ
タイラバはさまざまな釣り方の情報やヒントを、各サイトの情報で見ることができます。
無論、全国各地の情報ですので、海域ごとに釣り場の特徴や、マダイの生態も微妙に変わります。
相模湾の場合は、砂や泥の海底が広がる比較的フラットなエリア。海図では一見変化が乏しそうに見え、とっかかりがないようにも見えます。
実はこんなところでも、データをとっていけば、「再現性」のある場所=連チャンで釣れる場所と、釣れるタイミングが見えてくるものです。
また、季節によって釣れやすい深さも傾向が見えます。マダイは水温15℃から活発に摂餌行動をとるとされています。またマダイは春〜初夏に産卵という一大イベントを頂点に、一年の間で食性を変えながら体調を整え、産卵までを過ごしていると考えられています。
いまのところ冬〜春→70m〜120m、初夏〜夏→20m〜50mが主戦場です。たとえば春から初夏までは朝場に入ってきた小さなベイトフィッシュなどのおこぼれを食べていることもあるので、波動が強いタイラバで早巻きしたり中層まで巻いたりして探ります。
逆に冬の間は深場の底で甲殻類などを食べており、深い場所を弱めのタイラバでゆっくりと攻めます。
●自分で船を操って楽しむタイラバで気にしたい3つのこと
このように、いろいろと考える要素があるタイラバですが、釣りをしているときに気をつけることは3つほどに絞られます。おちから丸ではその日の海流と風の強さ、太陽光に応じて、①ネクタイ②シンカーの重さ③流すラインの3点の組み合わせを調整しながら魚を探しています。

①ネクタイ:カラーより重視するのは「シルエット」と「波動」
タイラバが奥深いと言われる要因は、状況によって使い分けるネクタイの組み合わせが、無数にある、ということが上げられます。ネクタイの長さ、形状、カラー、本数…。
メーカー各社から毎年のように新商品が出されるため、僕も一時期この無限の選択肢による泥沼にハマり、しばらくマダイが釣れないというスランプ状態になったこともありました。
この暗黒時代を経て、一年を通してたくさんのマダイを釣れるようになった今。カラーそのものを重要視していません。むしろ重要だと感じているのは、太陽光線を通して水中で見える「シルエット」と、ゆらめき方の「波動」の強弱です。
ほとんど光が届かないであろう150mの深さで釣れるマダイは、何でタイラバをエサだと思ったのか……。
これが考え方を変えるヒントでした。確実に伝わっているのは、側線から伝わる振動と、ぼんやりとした光に照らされたシルエット(魚類は色覚がないとも言われています)です。
そのため、タイラバは「マッチ・ザ・ベイト(食べているものにマッチしている)」の考え方よりも、そのときに魚が「反応しやすい波動」とシルエットの強弱、あわせて4パターンをざっくりと持っていれば、対応できることが多かったのです。
しかも自分のボートなので、好きなようにひと流しずつ試していき、反応があるものを絞り込んでいきました。
ちなみに使うことが多く重宝しているのは、ダイワの「紅牙 中井チューン」のネクタイ。細身のカーリーやストレートのネクタイを組み合わせていて、厳冬期のシビアな時期も、活発な初夏でも、先発として使うことが多いです。
②シンカーの重さ:ラインの角度を適度な斜めに保てる重さに調整!
風や潮流に乗せていくドテラ流しでは、海底まで落として巻く……を何度か繰り返すと、ラインの角度が徐々に広がっていきます。この角度の基準はおよそ45度前後に保って斜めに引いていくイメージで、タイラバのヘッド(おもり)の重さを微調整していくのが基本の釣り方になります。
持っていくシンカーは季節ごとに偏りますが、45g〜250gまでで、タングステン製と鉛製をそれぞれもっていきます。ヘッドの色はなるべく水中で目立たない赤系をメインに使っています。

③流すライン
逗子葉山沖は、あまり大きな根がなく、フラットな地形。底質は砂地の中にところどころ泥混じりなのが、海図アプリ「海釣図」の底質表示で確認できます。
ただ沖合3kmのところで80m、その先ではいきなり200m〜300m台の相模湾の深海へ続く急峻な谷が落ち込んでいて、急激に深くなっているような変化のある部分もあります。
まずはこの地形をヒントにして、ボートで流しながらマダイを探していきます。
関東の遊漁船での釣りでは、風に向けて船先を向けて微速前進をかけながら船を止めて(もしくは少しずつ流しながら)釣る「スパンカー立て」で、潮の流れにシンクロさせて釣るのが一般的です。
しかし、僕のボートにはスパンカーがつけられないため、船を風に向けて立てるのが困難です。そこでスパンカーを使わず、船の横で風を受けながら風下に流す「ドテラ流し」の釣り方を選択しています。
これはボートの操船を行いながらでも釣りができるので、おちから丸をはじめ、スモールボートでは主軸の流し方になります。
ドテラ流しでの釣りは、広範囲を探れるため、タイラバのような「魚探しの釣り」にはすごく向いているように思います。
●「ゾーン」を見極めるため潮流や風速を常にチェック

この釣りでは、現在地と航跡の確認が重要になってきます。例えば何度か流してアタリがあった場所や釣れたポイント、海図にのっていない海底変化を魚探で確認できたポイントなどをマーキングします。
次の流しでは、ここから少しズラして航跡を描くようにします。風を計算し、少し風上に流しはじめのポイントを決めて操船。イメージとしては、ひとつ前の航跡と、並行な線を描くようにして流すのです。
こうすることで、その日に反応があった「点」を、より確率の高い線につなげて、少しでも効率いい答え探しをしていきます。僕がアプリ「海釣図」をiPadで駆使している理由は、この航跡と流すラインが非常に見やすく、海上でも陸でも確認できるからなんです。

風向きや潮の流れの変化で、このラインがずれ、またポイントを過ぎていく速度が速い場合には、パラシュートアンカーというアイテムを放り込み、流れる速度にブレーキをかけたり角度を調整したりすることもあります。
「おちから丸」流の流し方ではありますが、タイラバのみならず、もうひとつの大好きな釣りであるアオリイカのティップランでも応用できる方法です。漫然と流すよりも戦略性があがって、ボート釣りがより楽しくなりますので、ぜひ試してみてください。
感覚的に、マダイが釣れるときは、潮止まりの前後と、潮の動き出し。タイドグラフの頂点の前後あたり。このあたりを「ゴールデンタイム」と考え、そこまでのプロセスで見出した反応がいいラインと、その日のヒットパターンを重ねていくのが、マイボートのタイラバでもっとも面白いところです。
また、潮流と風が適度な強さで逆方向になり、水中のタイラバがググッと引っ張られている状態のときに、なぜかアタリが集中します。この状態を勝手に「ゾーン」と呼んでいます。こうした現場ならではの感覚がわかってくると、タイラバがさらに楽しくなりますよ!