スズキのフラッグシップバイクとして世界的に認知されている「ハヤブサ」。1999年誕生の初代モデルが市販車初の300km/hオーバーを実現して以来、多くの偉業を成し遂げてきた栄光の系譜を振り返ります。
市販モデルで初めて300km/hの壁をクリア
1999年誕生の初代モデルから現行モデルに至るまで、スズキのフラッグシップモデルに君臨し続けている「ハヤブサ」。
今回は世界最速のマシンと讃えられながら、いわゆるスーパースポーツマシンとは異なる世界観を築き上げた「ハヤブサ」の系譜を振り返ってみましょう。
「GSX1300R HAYABUSA(ハヤブサ)」の名で登場した初代は衝撃的なモデルでした。1299ccのエンジンは最高出力175psを発生。最高速度は312km/hと、市販モデルで初めて300km/hオーバーを達成しました。それに合わせ、スピードメーターは350km/hスケールのものを採用。その後、ヨーロッパで300km/h規制が導入されたのは、このモデルがきっかけともいわれています。
車体のデザインもユニークで、空力を徹底追求したカウリングの形状は、レーシングマシンとも異なるどこかヌメッとしたもの。ひと目でそれと分かる、他に似ているものがないルックスは、最新モデルまで受け継がれるアイデンティティにもなっています。ちなみに、カウルのサイドに漢字で「隼」と描かれる点も、海外のライダーたちから高い支持を集めたようです。
2008年に登場した2代目モデルは排気量を1340ccまで拡大。最高出力は197psに向上し、フレーム剛性もアップしました。そして2015年には、日本でも待望の正規販売が決定。それまで逆輸入でしか手に入れることのできなかった憧れのモデルが身近な存在になりました。
さらに2021年には、13年ぶりのフルモデルチェンジで3代目モデルが登場。この最新モデルにも、やはり「ハヤブサ」らしい流麗なフォルムが受け継がれています。新しいユーロ5の排ガス規制に対応したこともあって、最高出力こそ190psにスペックダウンしましたが、それでも最高速度を落とさないよう空力性能を徹底的に磨き抜いています。さらに、電子制御スロットルやトラクションコントロール、エンジンブレーキコントロールなど、電子制御系のデバイスが充実したことも最新モデルの特徴といえるでしょう。
●スーパースポーツとは一線を画すアルティメットスポーツを追求
初代モデルから「ハヤブサ」に貫かれるコンセプトは“アルティメットスポーツ”。直訳すれば、“究極のスポーツ”性能を追求したマシンであり、単なる直線番長ではありません。コーナーリング性能も高く、高速域だけでなく低速域で走る街中などでも扱いやすい特性を備えています。
ユニークなのは、サーキットなどでの速さを追い求めるスーパースポーツとは一線を画す運動性を備えていること。高い重心位置から一気にバンクするような動き方をするスーパースポーツとは異なり、重心位置が低く、それでいてよく曲がる特性に仕立てられています。また、着座位置が低めで足つき性がよい点もツーリングライダーにはありがたいところでしょう。
スズキには「GSX-R1000R」という高い評価を得ているスーパースポーツがありますが、「ハヤブサ」はそれとの棲み分けを考慮した結果、独特のハンドリング特性になったといえるでしょう。
しかし「GSX-R1000R」は、2021年をもって生産終了に。リッタークラスのスーパースポーツマシンがなくなったことで、フラッグシップマシンとしての「ハヤブサ」の存在感はますます高まっています。今後「ハヤブサ」はどのような進化を遂げていくのか、注目したいところです。