コードネーム「LB744」と呼ばれていたランボルギーニ新世代PHEVスーパーカーが「レヴエルト」という車名となって世界初公開されました。6.5リッターV型12気筒エンジンに3つのモーターを組み合わせ、システム出力はじつに1015馬力を誇ります。
0-100㎞/h加速は2.5秒という怒涛の加速性能
2023年3月29日、イタリア・サンタガータボロネーゼのランボルギーニ本社で、新時代の到来を告げる革新的ニューモデルが発表されました。
注目のモデル名は「REVUELTO」。日本語ではレヴエルトと表記します。
これまでモデル名には闘牛で活躍した牛の名前を用いることが多かったランボルギーニですが、レヴエルトが闘牛に由来するかどうかは、現時点では不明。
ちなみにスペイン語の形容詞としては「かき混ぜた」「雑然とした」という意味のほか、「(天候が)荒れている」「(馬が)御しやすい」といった表現にも使われるようです。したがって、敢えていえば「波乱に満ちた新時代」というような意味ということでしょうか。
レヴエルトのハードウェアは既報のとおりで、ボディ構造はバスタブ式のカーボンモノコックを中心として、それを下側から支えるロッカーリング、上からカバーするルーフ、Aピラー、Bピラーなどで構成されます。
エンジンは自然吸気式の6.5リッターV12エンジンですが、ランボルギーニV12モデルの伝統的な搭載方法とは前後が逆となり、前方からエンジン、ギアボックスの順となります。
なお、ギアボックスはランボルギーニV12モデルとして初めてデュアル・クラッチ・トラッスミッションを採用。それも、通常の縦置きミッドシップとは対照的に横置きとされています。
モーターをフロントに2基、リアに1基積む3モーター方式のプラグインハイブリッドを採用したことも既報のとおり。左右の前輪を独立することで、ホンダの2代目「NSX」やフェラーリ「SF90ストラダーレ」などと同じように、モーター駆動のトルクベクタリングを実現したのも特徴のひとつ。
システム出力は実に1015psに達し、0-100㎞/h加速は2.5秒、0-200km/h加速は7秒以下で走り抜けるという途方もない加速性能を手に入れています。
「ランボルギーニの価値を何も変えないために、ランボルギーニのすべてを変える」
今回、ようやくヴェールを脱いだエクステリアデザインは、チーフデザイナーのミティア・ボルケルト氏がゼロから手がけたランボルギーニ初のカタログモデルである点が注目されます。

そのプロポーションは、ボディ前端から後端までがよどみのない“一筆書き”で描かれ、ドアが上方に開くシザードアを採用している点などでいかにもランボルギーニらしいのですが、いっぽうでボルケルト氏らしさが随所に表れているようにも感じます。
なかでもとりわけ特徴的なのが、フロントマスクのデザインでしょう。デイタイムランニングライトをY字型とするいっぽう、これを中心としてヘッドライト部とエアインテーク部を異形の四角形でまとめ、左右両端に配置したデザインは極めて大胆かつユニーク。ボルケルトは、できるだけシンプルな造形で迫力であったりワイド感であったりを演出することを得意としてきたデザイナーなので、この点は、いかにもボルケルトらしいといえます。
ちなみにY字型は、六角形とともにボルケルト氏が「ランボルギーニの伝統的なデザイン・モチーフ」と位置づけているもので、デイタイムランニングライト以外にもテールライトなどに用いられています。
このエクステリアデザインは、エアロダイナミクスの追求にも熱心に取り組んでいる点にも特徴があります。
先ほど私は全体的なプロポーションは従来のランボルギーニとよく似ていると指摘しましたが、実はエンジンフード部分の傾斜は、前作アヴェンタドールに比べて水平に近づいています。この結果、ボディ後端はアヴェンタドールよりもいくぶん高い位置で終わっており、これが空力面にも見逃せない効果を与えました。
というのも、横置き式ギアボックスを後車軸に近い位置にレイアウトしたことで、リアデューザー部分の容積を大幅に拡大することが可能になったほか、その立ち上がり角度をより強くすることで、リアのダウンフォースを格段に増強することに成功したのです。ちなみにリアのダウンフォースはアヴェンタドールと比べて74%も増えているといいます。
なお、通常時は格納されるリアウィングは、ドライビングモードなどに応じて立ち上がり、より大きなダウンフォースを発生させることも可能。この場合、ルーフ部分に設けられた窪みがリアウィングへと効果的にエアフローを導く役割を果たすようです。
いっぽうのフロント部分では、チンスポイラー部のスプリッターが空気を鋭く切り裂き、エアロダイナミクスの効率を高めるのに役立っている模様。そして前輪後方に設けられた垂直の整流板は、リアフェンダー部に設けられた大型のエアインテーク部にエアフローを流し込む役割を担っているといいます。
いっぽうのインテリアも、ランボルギーニの伝統とボルケルトの個性を融合したようなデザインで仕上げられています。
そのメインとなるコンセプトは「Feel Like a Pilot(パイロットのような気分が味わえる)」というもので、たとえばエンジンのスタート・ストップスイッチには、「ウラカン」や「ウルス」と同じようにジェット戦闘機のミサイル発射ボタンを想起させる赤いカバーが取り付けられています。同じくジェット戦闘機のスロットルレバーを思わせるリバース・セレクターのデザインも、ウラカンやウルスなどで用いられたのと似た発想です。
なお、ハイブリッドシステムなどをコントロールする必要性から、ステアリングホイール上には4つのダイヤルが新たに設けられ、ハイブリッドシステムやドライビングモードなどが切り替えられます。
さらに注目されるのが、助手席の正面にもディスプレイが設けられたこと。ちなみに、この助手席用ディスプレイやドライバー正面のメーターパネル上に表示する情報は、2本指でスワイプすることでセンターコンソール上のディスプレイから移し替えることができるそう。
レヴエルトはADASも充実していて、車線逸脱を警告するアクティブ・レーン・デパーチャー・ウォーニング、斜め後方に車両が存在していることを報せるレーンチェンジ・ウォーニング、後退時に車両後方を横切る車両の存在を報せるリアクロス・トラフィック・アラートなどが装備されます。
「ランボルギーニの価値を何も変えないために、ランボルギーニのすべてを変えます」 2021年にステファン・ヴィンケルマンCEOは電動化されたランボルギーニについてそう語ったが、彼の言葉がウソではなかったことを、レヴエルトは証明しているかのようです。