2022年9月に全世界1000台、日本限定25台で登場したBMW「M4 CSL」は、「M4クーペ」をベースに徹底的に軽量化。ニュルブルクリンク北コースでは7分20秒207というBMW量販車最速のタイムを叩き出しています。そんなレアなモデルを試乗しました。

 サーキットを走るマシンで一般道も走れるというBMW Mの「Mモデル」のコンセプトは、1978年にM1が誕生してから現代まで貫かれています。

 その中でも「M3セダン」、「M4クーペ」は、Mモデルとして軸になるモデルであり、世代が変わっても毎モデル高い人気を誇っています。

 今回紹介するのは新型「M4 CSL」です。

 CSLというのは「Competition(コンペティション=競争)、Sport(スポーツ)、Lightweight(ライトウェイト=軽量)」の略だとプレスリリースに書かれていますが、20年前の2003年に誕生したE46型「M3CSL」のとき、さらに遡って50年前の1973年に登場したBMW「3.0CSL」のときには「クーペ、スポーツ、ライトウェイト」と説明を受けた覚えがあります。

 このように頭文字のCの意味がクーペからコンペティションに変わった理由は、もしかすると今後クーペのM4だけでなく、セダンのM3でも登場する暗示なのかと勘繰りたくなります。

 なにせ新型M4 CSLは世界で1000台、そのうち日本では25台限定で抽選販売するくらいの人気があるので、M3セダンをベースにしたCSLが誕生してもおかしくないからです。

 メーカーの公表値では、「M4クーペ コンペティション」(RWDモデル)に比べて、約100kgの軽量化ということで1630kgに収めています。

 さらに「M4クーペ コンペティションxDrive」(AWDモデル)の車両重量1790kgと比べると、160kg軽量化されています。

 この違いは大きいです。一般道でも感じますが、特にサーキット走行では、大人2人分に近い重量が増えると「走る、曲がる、止まる」という運動性能に大きく影響が出るのを感じます。反対にこれだけ軽くなることで、非常に大きなアドバンテージになることが想像できるでしょう。

 M4CSLの軽量化のメインは、軽量で高剛性のCFRP(炭素繊維強化樹脂)の大量採用です。

 外から見えるところでは、ボンネット、ルーフ、トランクリッドのボディ上部、キドニーグリル、エアインレット、ドアミラーカバー、ディフューザーなど多くのパーツがCFRPに置き換わっています。

 室内で大きいのはシートです。レースでも使えるMカーボン・フルバケットシートが2席しっかりと装備されています。リアシートを省いたことも大きな軽量化になっています。センターコンソールもCFRPに替わった大きなパーツです。ハンドル周りもスポークの加飾部分やパドルシフトのパドルなどもCFRPになっています。

 そしてM4用エンジン「S58B30B」では480psだったものが、M4コンペティション用エンジン「S58B30A」では510psに上げられ、このS58B30Aからさらに40psアップして550psになってM4 CSLに搭載されました。

 ボディの軽量化をした上で、エンジンもパワーアップしているのだから速くなるのは当然です。

BMW量産車ではニュル最速のタイムを持つM4CSL

 0-100km/h加速は、M4クーペが4.2秒、M4コンペティション(RWD)が3.9秒、M4コンペティションxDriveが3.5秒のところ、M4CSLはRWDで3.7秒まで詰めています。

 ゼロ発進のところでは、ホイールスピンしないでロケットスタートができるxDriveが速いですが、0-200km/hのように長い距離を走るとCSLの軽さのメリットが出てくると思います。

 その証拠に250km/hオーバーで走る場所が何箇所があるニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(公認北コース=20.832km)のラップタイムは、BMW量産車最速の7分20秒207をマークしています。

BMW新型「M4 CSL」のインテリア。右ハンドル/AT仕様だ

ちなみにM4CSLの標準タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2R☆で、前275/35ZR19 100YXL、後285/30ZR20 99YXLです。タイヤが冷えている雨の日にはアクセルは慎重に扱わないと、簡単にホイールスピンを起こします。この状況では通常の溝があるタイヤを履くM4やM4コンペティションの方が楽に走れます。

 今回、新型M4CSLでは、走行距離2000kmを超えたところから2900kmを過ぎたところまで試乗させてもらいました。距離を伸ばしていくにしたがってエンジンもサスペンションも馴染んできて、どんどん良くなっていくのを感じました。

 エンジンはオイルが暖まっていることを油温計でチェックしてから、高めの回転数を使って走るとどんどん気持ちよく回っていくのが感じられました。イエローゾーンの手前まで回していくと、直列6気筒のバランスの良い回転感が音と振動の変化により感じられます。

 低回転域でもトルクは十分あるので、ハイパフォーマンスエンジンの乗り辛さは一切ありませんでした。パドルシフトが楽しくてついつい遠出をしてしまいます。

 タイヤの空気圧管理は大事ですが、空気圧と温度がインパネ上に表示できるので、走りながらもチェックできるようになりました。最初は硬い乗り心地でしたが、空気圧を調整し、距離が進むとともにどんどんサスペンションのストロークが出るようになって快適になっていきました。

 走行距離が5000kmを超え、10000kmくらいまで走ったときがM4CSLの一番美味しい時期ではないかと想像しています。

 納車された時点ではまだ仕上がっていないので、ドライバーが躾けていくのがM4CSLなのです。エンジンとサスペンションが仕上がったときに、新型M4CSLが、M4クーペやM4クーペ コンペティションとの差を大きく感じることになるでしょう。

BMW新型「M4 CSL」

BMW M4 CSL
・車両本体価格(消費税込):2196万円
・全長:4805mm
・全幅:1920mm
・全高:1385mm
・ホイールベース:2855mm
・車両重量:1630kg
・エンジン形式:直列6気筒ツインターボ
・排気量:2992cc
・駆動方式:FR
・変速機:8速AT
・最高出力:550ps/6250rpm
・最大トルク:650Nm/2750−5950rpm