レクサス初の電気自動車として誕生した「UX300e」が商品改良を受けました。その最大の目玉は航続距離の延長です。しかし、進化したのはそれだけではありませんでした。ドライブフィールも劇的にブラッシュアップされていたのです。
航続距離が従来モデル比で約4割アップ
2020年にレクサス初のEV(電気自動車)として誕生した「UX300e」が商品改良を受けました。その目玉は、なんといっての航続距離の延長です。
航続距離の延長を実現できた要因は、新たに開発された電池パックの導入。バッテリー容量を従来の54.4kWhから72.8kWhへと増強し、1充電当たりの航続可能距離も512kmへと伸長しました。
ちなみに、先ごろ誕生したレクサス初のEV専用モデル「RZ」は、バッテリー容量71.4kWh、1充電当たりの航続可能距離は494kmですから、UX300eはより大きなバッテリー容量と、より長い航続距離を獲得しています。
1充電当たりの航続距離はEVにとって重要な性能のため、プレスリリースにも大々的にうたわれています。それを見て筆者は、「なるほど、乗り味は変わっていないのか。一部改良だしね」と思っていました。
しかし、試乗車を受け取って数百メートル走らせただけで、自分の考えの誤りに気づきました。商品改良を受けた新型は、信じられないほどのレベルで乗り味が変わっていたのです。
特に大きく進化したのが乗り心地。従来型UX300eでは、路面の凹凸に応じて車体が上下に動くシーンを頻繁に経験しました。とはいえこれは、従来型UX300eに限った話ではなく、重いバッテリーを積むEVではよく見られる挙動です。むしろUX300eは、そうした動きを「よく抑えている方」でした。
しかし、商品改良を受けた新型UX300eに乗ってみると、従来モデルとの差は歴然。上下動はグッと収まり、昨今のレクサス車らしいフラットライドなドライブフィールを獲得しています。これなら同乗者からも、乗り心地に関するクレームは出ないでしょう。この進化には正直驚きました。

「それは、サスペンションをソフトにしたからでは?」
そんなうがった見方をする人もいるかもしれません。しかし、声を大にしてお伝えしたいのは、新型UX300eはハンドリングもよくなっている、という事実。特に、ドライバーとクルマとの一体感、スッキリとした乗り味が印象的です。
例えば、ステアリングを切り始めてからクルマが曲がり始めるまでの動きのつながりがよく、特にS字コーナーなどでは右に左にと切り返す際のクルマの挙動がスムーズで、「グラッ」とくるような挙動は皆無。気持ちよくコーナーを曲がってくれるのです。雑味のない澄んだ水のようなスッキリとした挙動は好感が持てます。
実はUX300eは、今回の商品改良でサイドドアとリアゲートの周辺、つまり一般的に“弱い”とされるボディ開口部を中心に、スポット溶接の打点を20か所増やすことで車体剛性を向上させています。
さらに、パワーステアリングの制御やサスペンションのチューニングも磨き上げてきたとのこと。そうした効果がハンドリングフィールやクルマの挙動に現れているのです。
開発陣の意気込みを感じる使い勝手の向上
今回の商品改良で、UX300eはインテリアもブラッシュアップされました。

例えば、ナビ画面などを表示するセンターディスプレイは12.3インチへとサイズアップされ、タッチパネル操作も可能になりました。それに伴いセンターコンソールのレイアウトも変更。シートヒーターなどのスイッチが操作しやすい場所へと移動したほか、スマホの“置くだけ充電”スペースも拡大されています。
「神は細部に宿る」ではありませんが、ユーザーの使い勝手に直結する細かい進化の数々に、「少しでもいいクルマにしよう」という開発陣の意気込みを感じます。
さらに新型は、ナビのシステム自体も刷新。コネクテッドナビと車載ナビとを組み合わせたハイブリッド型に進化しています。音声認識機能も進化し、無線接続によるソフトウェアのアップデートにも対応するなど、システムを全面刷新しています。
また、クルマの周囲を360度映し出す“パノラミックビューモニター”も、合成映像で車両の下回りまで表示。レクサスの最新版へとアップデートされています。
加えて、新型UX300eは安全面も進化を遂げています。プリクラッシュセーフティシステムの検知範囲を拡大したほか、交差点右折時の対向車検知や左右折時の歩行者検知もおこなうようになるなどバージョンアップ。さらに、ドライバーの異常を検知するとドライバーに操作を促した後に自動で減速・停車するなど、事故を防ぐ仕掛けも盛り込まれています。
一方、EVシステムの出力やトルクに関する変更はなし。加速フィールは輸入EVにありがちな「ドン!」とくる過激なものではなく、あくまでアクセル操作に対してリニアな味つけ。この辺は従来モデルと変わっていません。
爆発的な加速を感じられるタイプではありませんが、しっかりと速さはあり、エンジン車のようなコントロール性とリニアな伸び感を味わえる点は好印象です。
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EVの性能といえば、とかく航続距離に目が向きがちです。しかし、そこをしっかり押さえた上で動的質感も高めた新型UX300eは、まさにプレミアムブランドのEVらしい乗り味を実現しています。一段とレクサス車らしいモデルになった……進化した新型UX300eは、そう断言することができます。
●LEXUS UX300e“version L”
レクサス UX300e“バージョンL”
・車両価格(消費税込):685万円
・全長:4495mm
・全幅:1840mm
・全高:1540mm
・ホイールベース:2640mm
・車両重量:1820kg
・駆動方式:FWD
・電気モーター:交流同期電動機
・最高出力:203ps
・最大トルク:300Nm
・駆動用バッテリー総電力量:72.8kWh
・交流電力量消費率(WLTC):141Wh/km
・1充電走行距離(WLTC):512km
・サスペンション:(前)ダブルウイッシュボーン式、(後)ダブルウイッシュボーン式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ベンチレーテッドディスク
・タイヤ:(前)225/50R18、(後)225/50R18