昨2022年に前身である「アテンザ」の時代を含めて誕生20周年を迎えた「マツダ6」。現行モデルはデビューからすでに10年以上が経過していますが、見ても乗っても古さを感じさせません。その秘密とは?

3代目「アテンザ」として誕生してからすでに10年以上が経過

 見た目も乗り味も古さを感じさせないな……。最新の「マツダ6」に乗って、そう感じました。

 マツダのフラッグシップセダンである現行のマツダ6が誕生したのは2012年末のこと。つまり、前身である3代目「アテンザ」として誕生してから、すでに10年以上が経過しているわけです。

 にもかかわらず、そのルックスは古さを感じさせません。特に、深みのあるボルドーのボディカラーをまとった試乗車は落ち着いた雰囲気を放ち、気品のよさが際立っていました。

 そもそも論として、マツダ6が古く感じない要因は、そのエクステリアデザインの美しさにほかならないでしょう。まずは完成された美しさが太い芯としてビシッと存在し、その上で、時代に合わせて細部に手を入れることでリフレッシュを重ねる……だからマツダ6は今も古さを感じさせないのです。そのデザイン力の高さは、さすがというほかありません。

 もうひとつ驚くのは、運転していても古さを感じさせないことです。

 実はクルマの味つけにはトレンドがあり、10年も経つと運転していて古さを感じてしまいがちです。

 具体的には、パワーステアリングの操作感やサスペンションの味つけといったトレンドが変わるのですが、マツダ6の場合、この点においても古さを感じさせないのです。

 どうしてなのでしょう? マツダがしっかりと改良を繰り返し、マツダ6をきちんと育ててきたからにほかなりません。

 例えば2022年12月の商品改良で、開発陣はパワーステアリング系の制御を変更してきました。その理由について開発責任者は「路面に対するタイヤの接地感を、ステアリングを通じてより感じられるよう検知性を高め、クルマの進む方向をよりドライバーが意図するとおりに向けられるようにするため」と語っています。

 結果、最新のマツダ6は、ドライバーがより気持ちよく操れるクルマとなり、いつまでも走り続けたくなる、より運転が楽しいクルマに仕上がっています。

先進安全機能や使い勝手もイマドキのものにブラッシュアップ

 また同じタイミングで、ディーゼルエンジンの制御も変更されました。これにより最高出力と中間トルクがアップしています。

デビューから10年が経過したとは思えないほど古さを感じさせない「マツダ6」。20周年記念の特別仕様車は大人っぽいコーディネートがおしゃれ

 ディーゼル車は発進時の力強さが特徴ですが、従来、マツダ6のディーゼル車はその力強さが加速の途中で収束する傾向にありました。高回転域で力感が盛り上がるガソリン車とは対照的に、加速中に加速度が落ちてしまっていたのです。

 これはディーゼルエンジンの特性上、仕方がないことですが、最新のマツダ6は高回転域までの伸び感と力強さが高まっているのです。

 さらにディーゼル車のATモデルは、「CX-5」などに先行採用されたアクセルのコントロール性をよくする“操作力の重いアクセルペダル”を新採用。これらの改良により、ドライビング時の高揚感が高まっています。

 ドライバビリティ以外の面でも、高速道路において通常走行時だけでなく渋滞時においても追従走行とステアリングアシストでドライバーをサポートする“クルージング&トラフィックサポート”を新搭載するなど、先進安全機能をブラッシュアップ。

 加えて、ワイヤレス充電機能やApple CarPlayのワイヤレス接続など、使い勝手を高める機能もトレンドを反映したものへとアップデートされています。

 ロングセラーのモデルは、放っておくとどんどん古くなってしまいます。しかし、きちんと手を入れ続けて進化させ、しっかりと熟成させてやれば古くささを感じない……。最新のマツダ6をドライブして、あらためてそんなことを感じました。

“こだわりで選ばれる”時代のセダンは重要な存在になる!?

 ロングセラーといえば、マツダ6は2022年、前身のアテンザ時代も含めて誕生20周年を迎えました。

デビューから10年が経過したとは思えないほど古さを感じさせない「マツダ6」。20周年記念の特別仕様車は大人っぽいコーディネートがおしゃれ

 何を隠そう今回の試乗車は、それを記念した特別仕様車「20thアニバーサリーエディション」でした。

 北米市場向けのラージSUV「CX-90」にも採用されるアーティザンレッドメタリックのボディカラーを日本向けのマツダ車で初採用。さらに、タンカラーのナッパレザーシートやダッシュボードまで張られたタンカラーのスエード調素材などにより、車内外をシックにコーディネートしています。

 なかでもインテリアは、「CX-60」の最上級グレード「プレミアムスポーツ」に設定され、生産が追いつかないほどの人気を誇っているものと同じカラーテイスト。スポーティかつ落ち着いた雰囲気は、マツダ6の新たな一面を見せてくれます。

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 昨今、セダンはSUV人気の影響を受け、かつてのようにメジャーなセグメントではなくなりました。そのため、選べる選択肢も減少傾向にあります。

 しかし見方を変えれば、セダンが“こだわりで選ばれる”時代となったからこそ、目の肥えたユーザーが満足できるセダンをつくることは、各自動車メーカーにとってこれまで以上に重要となることは間違いありません。

 マツダ6は、一家言あるセダン好きも納得の優良銘柄です。なかでも、国産セダンで唯一、高出力型のディーゼルエンジンを搭載するモデルは、魅惑の大トルクを味わえる上に燃費もいいのでおすすめです。

●MAZDA6 SEDAN XD 20th Anniversary Edition
 マツダ6 セダン 20thアニバーサリーエディション
・車両価格(消費税込):442万2000円
・全長:4865mm
・全幅:1840mm
・全高:1450mm
・ホイールベース:2830mm
・車両重量:1610kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
・排気量:2188cc
・変速機:6速AT
・最高出力:200ps/4000rpm
・最大トルク:450Nm/2000rpm
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ディスク
・タイヤ:(前)225/45R19、(後)225/45R19