モータースポーツファンにとって年明けのイベントといえば、毎年1月に開催される“世界一過酷なモータースポーツ”「ダカールラリー」でしょう。そのダカールラリーで市販車10連覇を達成している「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー」があります。このチームはトヨタ車体の社員を中心に構成されていますが、トヨタ車体とはどんな企業なのでしょうか。

年明けのダカールラリーで市販車部門11連覇に挑むTLCもトヨタ車体が運営

 日本の年明けの風物詩と言えば、やはり箱根駅伝ではないでしょうか。

 ですがモータースポーツファンには、やはりそれは「ダカールラリー」だといえます。アフリカ大陸や南米大陸を股にかけて、各地で行われる苛酷なラリーレイドは、オフロードイベントの最高峰といっても過言ではありません。ちなみに次回大会は2024年1月5日から19日にかけて、サウジアラビアで開催されます。

 そんなダカールラリーにおいて、10年間も連続して「市販車クラス優勝」を果たしているチームがあります。

 それは、「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー」。2006年に「トヨタ・チーム・アラコ」から引き継ぐ形で、ランドクルーザーでダカールラリーに出場し続けています。そして、チーム運営を行っているのが、トヨタ車体。そのトヨタ車体とは、どんな企業なのでしょうか。

 トヨタ車体の前身であるトヨタ車体工業が生まれたのは、第二次世界大戦が終了した昭和20年(1945年)のこと。トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)の刈谷工場を分離させ、トラックボディ専門の会社として誕生しました。復興する日本にとって、物流の要となるトラックは自動車産業の中でも重要なカテゴリーだったからです。

 その後、一時的に社名を刈谷車体にした後、昭和28年に現在のトヨタ車体に再度改めました。

 ちなみに、オールドファンにはお馴染みですが、ダカールラリーで輝かしい戦績を上げてきたトヨタ「ランドクルーザー」は、元々はアラコ(旧荒川車体工業)が製造していました。

 しかし2004年に車両製造部門がトヨタ車体に譲渡され、以降はトヨタ車体が生産しています。

 トヨタ車体はランドクルーザー以外にも、「ヴォクシー」「ノア」「アルファード」「ヴェルファイア」「ハイエース・バンDX」「レクサスLX」など、多くの人気モデルを生産しています。さらに生産だけではなく製品企画やデザイン、設計などもおこなっているのが特徴です。

 また一人乗りのEVコミューターとして注目されている「コムス」も同社の生産です。生産拠点ですが、本社のある愛知県刈谷市の富士松工場を筆頭に、同じ刈谷市の刈谷工場、豊田市の吉原工場、三重県のいなべ工場があります。

ランクルのカスタムなどをおこなう「ランクルベース」にも注目

2023年10月に開催されたジャパンモビリティショー2023 トヨタ車体のブースに出展された「グローバルハイエースBEVコンセプト」

 2023年大会のダカールラリーに出場したランドクルーザー300系は、チームがフランスディーラーで購入して一部をラリー仕様に改造したものですが、元々はトヨタ車体の吉原工場で造られたものです。

 またチームの代表である本多 篤氏、監督の角谷裕司氏、そしてドライバーである三浦昂氏はすべて、トヨタ車体の社員。まさに、クルマも人も同社で構成されているというユニークなチームなのです。そして年明けのダカールラリーで、前人未到の市販車部門11連覇に挑みます。

2023年1月に開催されたダカールラリー2023で市販車部門10連覇を達成したTLCの「ランドクルーザー300」

 トヨタ車体が行っているクルマの生産やモータースポーツ活動は、私たちユーザーとは若干縁遠い感じがしますが、2023年に入ってユーザーフレンドリーとも言える新たなチャレンジを開始しています。それが「ランクルBASE」。本社富士松工場の一角にオープンしたカスタムショップで、ランドクルーザーの中古車イノベーション、新車カスタム、グッズ販売などを行っていく予定です。

 同社が2023年1月に開催された東京オートサロン2023に出展した「ランドクルーザー70系」のシャシに「ランドクルーザー40系」のアッパーボディを載せたリノベカーは大変な注目を集めました。

 関連会社である東海特装車の高い技術力を活かした中古リノベーションは、一般ではレストアが難しい旧車に新たな息吹を吹き込めると、ランクルファンの大きな期待が寄せられています。

 また2023年10月に開催されたジャパンモビリティショー2023にもブース出展、世界初公開された次世代のBEVバン「グローバルハイエースBEVコンセプト」や4人乗りの最上級ミニバン「ヴェルファイア・スペースラウンジコンセプト」、次世代キャブワゴン「クロスバン・ギアコンセプト」などに注目が集まりました。

2023年1月に開催された東京オートサロンでトヨタ車体ブースに展示された「LAND CRUISER 40 × LAND CRUISER 70」

 2023年8月に発表、同年11月に発売された「ランドクルーザー70」も同社で生産されており、ますます盛り上がりそうなトヨタ車体。

 ランクルBASEを中心に、当分は目が離せそうにありません。