現在NEXCO中日本の石川県(北陸道)で試行されている「フリータイム通勤パス割引」が範囲を拡大、NEXCO3社(東日本・中日本・西日本)が新たに高速道路の「平日朝夕割引」に代わる割引施策「通勤パス」の社会実験を全国5道県(北海道、新潟県、山梨県、香川県、長崎県)のエリアで実施すると発表しました。

石川県で行ってきた社会実験を全国5道県に拡大

 2024年2月16日、NEXCO3社(NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本)は、2024年4月から「『通勤パス』の社会実験」を実施すると発表しました。

 これは、これまでNEXCO中日本が石川県で行ってきた「フリータイム通勤パス割引」を、全国5道県に拡大する形で行われるものです。

 フリータイム通勤パス割引は、2023年4月から6月の期間限定で、事前に申し込んだユーザー各月1000人を対象に、北陸道の片山津IC〜金沢東ICの間を1日3回まで、実質50%オフの通行料金で利用できるという形ではじまりました。

 その後2023年7月からは、対象区間を加賀IC〜金沢森本ICの石川県全域に拡大、期間も2024年3月まで延長しました。

 今回の発表は、こうした流れを受け、名称を「通勤パス」とし実施するという内容になっています。

 では、以下にその仕組みを詳しく見ていきましょう。

 まず通勤パスの対象となるのは、以下に指定された区間です。

【北海道】道央道 札幌南IC⇔北広島IC〜千歳ICのうちいずれか1ICの間(北広島IC〜千歳IC相互間はのぞく)
【新潟県】関越道 長岡IC/北陸道 中之島見附IC、三条燕IC、新潟西IC/磐越道 新潟中央IC/日本海北陸道 新潟亀田ICの各ICの間(ただし新潟西IC、新潟中央IC、新潟亀田IC相互間はのぞく)
【山梨県】中央道 大月IC、一宮御坂IC、甲府昭和IC、韮崎IC、須玉IC、長坂ICの各IC間
【石川県】北陸道 加賀IC〜金沢森本ICの各IC間
【香川県】高松道 白鳥大内IC、高松中央IC、高松檀紙IC、高松西IC、坂出IC、善通寺ICの各IC間(ただし瀬戸中央自動車道との連続走行は対象外)
【長崎県】長崎道 長崎IC、長崎多良見IC、諫早IC、大村IC および長崎BP 川平ICの各IC間(ただしながさき出島道路または川平有料道路と連続して走行する場合は当該道路の通行料金が別途必要)

 実施期間は2024年4月1日から2025年3月31日までで、ETC無線通信により指定区間を走行する軽自動車等および普通車が対象となります。

事前モニターとして登録する必要がある

 通勤パスの利用は、事前にモニターとして、月を指定しての登録が必要となります。

 募集人数は石川県が各月先着順1000名、それ以外の県では同500名となります。

 具体的な販売価格、利用方法、申し込み受け付け開始時期などの詳細は、各高速道路会社よりあらためて発表されるとのことですが、フリータイム通勤パス割引で先行した石川県の場合、NEXCO中日本の「速旅」から申し込みを行い、指定した区間10回分の通行料金で20回の通行ができる形であったことから、今回の通勤パスも、同様の方法がとられるのではないでしょうか。

現状の「ETC平日朝夕割引」とは異なり、土日も含め24時間、割引対象となる

 なお通勤パスには、フリータイム通勤パス割引同様の注意点が考えられます。

 まず事前申し込み制のため、実際に使った回数が少ない場合には、通勤パスの販売価格のほうが通行料金の合計額よりも高くなる可能性があります。

 つぎに同日の走行は3回までが適用となります。そのため、同日の4回目の走行は、通常の通行料金が課金されます。

 また指定区間内で別のICを利用する場合、指定区間内から指定区間外に走行する場合は割引適用になりますが、指定区間をまたぎ別のICから流入、別のICに流出する場合は割引の対象外になります。

 今回は、指定区間内に「利用区間として指定できないIC」が存在するパターンがあることから、そうしたICを利用した場合に割引対象となるのかどうか、NEXCO各社の発表を待つことになるでしょう。

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 なおこうした割引の実施が「通勤にクルマを使うことの奨励=CO2排出増」と考える人もいるのではないでしょうか。

 しかし公共交通機関の利便性が乏しく、「クルマ=生活必需品」になっている地方では、多くの人がクルマでの通勤を余儀なくされています。

 こうした割引は、一般道から高速道路への利用の転換を進めることで、一般道の渋滞で悪化しがちなクルマの燃費を改善してCO2排出を抑制するとともに、渋滞にともなう周辺環境の悪化も防ぐという効果が考えられます。

 また現状の「ETC平日朝夕割引」とは異なり、土日も含め24時間、割引対象となることから、時差通勤など働き方の多様化にも対応できます。

 弾力的な高速道路料金は、渋滞対策を主眼とした「東京湾アクアライン」の「ETC時間帯別料金」にも見られますが、こちらは「値上げ」を含んだもの。

 高速道路の通行量が少ない区間、時間帯に割引運賃を導入して利用者を増やし、環境対策と高速道路会社の収入増の両立を図るという通勤パスのような施策は、今後も積極的に拡大してほしいものです。