仕事で毎⽇のように着るスーツは、⽪脂や油性ペン、ほこりなどで意外と汚れています。それでは、いつクリーニングに出すのがよいのでしょうか。今回は、スーツをクリーニングに出すときに知っておきたいポイントを紹介します。

●スーツの汚れによってクリーニング⽅法を使い分ける

 新年度がはじまりスーツを着る機会も増え、⽇々の仕事に⽋かせないものとなっています。しかし、そのクリーニング⽅法については意外と知られていません。

 ひとくちにクリーニングといっても、洗浄⽅法はひとつではなく、メンテナンスのうえでは⽣地の素材と汚れに応じて使い分けることも⼤切です。

 クリーニングと聞いてまず思い浮かべるのは「ドライクリーニング」でしょう。ドライクリーニングとは、⽔の代わりに「有機溶剤」を使って洗う⽅法です。 

 ⽑や綿⽣地の縮みや、⾊落ち、型崩れといったダメージを軽減できるのが特徴です。そのため、⽔に弱く洗濯できない⽣地のスーツに向いているともいえます。

 有機溶剤は⽪脂や油性ペン、化粧品、マヨネーズのような「油性」の汚れをよく落とします。また、ホコリや泥、花粉、PM2.5などの、⽔にも油にも溶けない「不溶性」の汚れも落とせます。

 じつは、スーツの汚れの多くは「油性」と「不溶性」なので、この点からも適したクリーニング⽅法といえるでしょう。

 ただ、汗成分などの「⽔溶性」汚れは落としにくいため、⾐類の状態による使い分けが必要です。また、樹脂加⼯製品など、ドライクリーニングを避けたい製品もあります。洗い⽅を相談できるクリーニング店を選ぶのもポイントです。

 店舗に持ち込んでから仕上がるまでは1〜5⽇程度、料⾦は1000円位からが相場のようです。

 これに対し、ぬるま湯と中性洗剤を使って洗うのが「ウェットクリーニング」です。汗や飲みもののような「⽔溶性」汚れをよく落とせます。洗浄後は⾐類にあった様々なプレス機を使い、成形仕上げをするので、家庭洗濯後のアイロンがけが難しい⾐類もきれいに仕上がります。

 このように専⾨的な技術を使うため、仕上がり⽇数は7⽇から10⽇程かかり、料⾦もドライクリーニングと⽐べると多くかかります。

 スーツ裏⾯についている取扱い表⽰をみると、洗濯⽅法がわかります。クリーニング店では、取扱い表⽰を確認したうえで、⽣地素材や状態をみて適切なクリーニング⽅法を判断してくれます。

 ではどちらの⽅法でも洗えるスーツの場合は、どうすればいいのでしょうか。その判断⽅法について、業界トップクラス企業「⽩洋舍」の担当者は次のように語ります。

 「クリーニング⽅法は取扱い表⽰に従って決めるのが良いです。

 ドライクリーニングもウエットクリーニングもできるスーツの場合、型崩れが気になるものであればドライクリーニング、サマースーツなど汗成分除去を優先するものであればウエットクリーニングがおすすめです」

●シーズンごとに1、2回はクリーニングへ

 しかし、毎⽇のように着るスーツとはいえ、ワイシャツと違い、「汚れ」が⾒た⽬ではなかなかわかりません。

 それでは、⽇常的に着⽤している場合、どれくらいの頻度でクリーニングに出すとよいのでしょうか。

⾐替えのタイミング以外にシーズン中に1〜2回は上下セットでクリーニングするのがおすすめ

 クリーニングのタイミングについて、業界大手の老舗会社「⽩洋舍」の担当者は次のように語ります。

 「着⽤頻度や汚れ具合にもよりますが、どちらのクリーニング⽅法でも、スーツの上下セットで、1シーズンに1〜2回はクリーニングすることをおすすめいたします」

 少なくとも、⾐替えのタイミング以外にシーズン中に1〜2回は上下セットでクリーニングするとよいでしょう。

 クリーニングに出す際はジャケットとパンツ(orボトムス)をセットで出すのがコツです。

 なぜなら、繊維素材はクリーニング作⽤を受けて光沢や触感など⽣地の⾵合いが少しずつ変化するため、どちらか⼀⽅だけを出していると、スーツとして着たときに違和感が出てしまうおそれがあるからです。

 また、どれだけ汗をかいたかでクリーニングを検討してもよいでしょう。たとえば、夏場であれば2週間に1回が⽬安ともいわれています。汗っかきの⼈や、外回りが多い⼈なら、さらに回数を増やした⽅が⼼地良く着られるかもしれません。 

 もちろん、スーツが⾬で濡れたり、⾷べこぼしがついたり、汚れが⽬⽴つ場合はすぐにクリーニングに出すことをおすすめします。

 スーツの洗濯メンテナンスについて、前出の担当者は次のように話します。

 「汚れが気になりだしたり、シミが付いたりした場合は、早めにクリーニングに出すことで、変⾊などを防ぎ、より⻑い期間きれいにスーツをご愛⽤いただけます」

 さらに、きれいに仕上げるために、いくつかおさえておきたいポイントもあります。

 シミの対応は、クリーニング店によって様々ですので、落としてほしいシミがあれば、受付の際にはっきり伝えることが⼤切です。そうすることで、追加料⾦や仕上がり⽇が確認でき、無⽤なトラブルも避けられます。

 また、クリーニングに出す前には、⽣地の擦れや破れ、ほつれなどを確認しておくとよいでしょう。店頭でダメージがあるか所などを伝えておくと、双⽅ともに安⼼です。

 同様に、ペンや⼩銭、カード類などポケットの中⾝も出しておくことが必要です。共布やスペアボタンなどは⼿元に保管しましょう。たとえば、ポケットにペンが⼊ったまま洗浄すると、インクが滲み出るといったこともあります。

 とくに、スーツの⾒つけにくいところにポケットがある場合は、クリーニング店でも⾒落とす可能性があるので、念⼊りにチェックしておくとよいでしょう。

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スーツのクリーニングは、⾐替えのタイミングを基本とし、2週間ごとなどに出すなどのパターンを決めたり、「汚れたらすぐに出す」という習慣をつけられると理想的です。こうすることで、結果的に⻑く着られ、コスト⾯でもメリットがあるといえます。