2024年春に上陸したメルセデス・ベンツ「Eクラス オールテレイン」を、モータージャーナリストの藤島知子さんが試乗しました。ロードクリアランス&車高アップによってSUVのようなルックスと走破性を手に入れた、「Eクラス」の新たな個性の実力とは?

新しい「Eクラス」に追加されたタフ仕様の印象とは?

 1946年にW136型が登場して以来、世界中で1600万台以上を販売してきたメルセデス・ベンツ「Eクラス」は、歴代モデルすべてが先進技術を積極的に投入し、脈々と進化を続けてきました。

 そんなメルセデス・ベンツを代表するモデルが、フルモデルチェンジで先ごろ6代目へと進化。セダンとステーションワゴンの2車種は、2024年1月に開催された「東京オートサロン2024」のステージでジャパンプレミアされました。

 メルセデス最新のデザインランゲージを採り入れながら、よりつややかに、エレガントさを増したスタイリング、デジタル化が進んだコックピット、PHEV(プラグインハイブリッド)や48Vのマイルドハイブリッドを含めて、すべてのモデルを電動化するなど、話題に事欠かない新型「Eクラス」。2024年3月には、そんな新型「Eクラス」の3つめのボディタイプとして、クロスオーバーモデルの「E220d 4マチック オールテレイン(All-Terrain)」が追加されました。気になる価格は消費税込で1098万円です。

「オールテレイン」は、ステーションワゴンの実用性とSUVのスタイリングを併せ持つモデルとなるだけに、セダンやステーションワゴンとは異なるキャラクターが与えられていることに注目したいところ。現在のところ、新型「Eクラス」としては唯一となるクリーンディーゼルエンジンと4WDの“4マチック”を組み合わせたモデルであることもポイントです。

 6代目「Eクラス」のフロントグリルは、BEV(電気自動車)の「EQシリーズ」に歩み寄ったデザインになりましたが、「オールテレイン」にはその個性として、スリーポインテッドスターのエンブレムの脇にクロームメッキの2本のフィンが水平にあしらわれています。

 これは、昨今のメルセデスのSUVモデルに共通するもので、前後バンパー下部に備わるシルバークロームのアンダーガード、ブラックのホイールアーチカバー、145mmに設定された最低地上高と併せて、「オールテレイン(=全天候型)で活躍するクルマ」としてアクティブな印象を与えています。なお足元には、専用デザインの19インチアルミホイールと255/45R19サイズのコンフォートタイヤを履いています。

 全長4960mm、全幅1890mmという「オールテレイン」のボディサイズはステーションワゴンと同様ですが、全高は1495mm、最低地上高は145mmと、それぞれステーションワゴンより25mm高く設定されています。

 そんな「E220d 4マチック オールテレイン」の“ISG”装着モデルを、今回は日常からロングドライブまで走らせてみることにしました。試乗したのは、オプションの“レザーエクスクルーシブパッケージ”と“MBUXスーパースクリーン”装着車。車内の居心地や走りにおいて、どのような世界観を見せてくれるのか楽しみです。

●ドライブシーンをドラマティックに演出する多彩な仕掛け

「オールテレイン」の運転席に乗り込むと、まず圧倒されてしまったのがオプションで装着されていた“MBUXスーパースクリーン”。ドライバーの正面に液晶メーターがあしらわれているほか、インパネ中央から助手席側の端まで一体型となった大型のディスプレイが、クッキリと高精細に情報を映し出してくれます。

 AR機能を備えたカーナビの地図案内を表示するほか、スマホアプリとの連携で音楽再生を楽しめるのはもちろん、Amazon MusicやSpotify、TicToc、モバイルゲームのAngry Birdsといったサードパーティのアプリをインストールすることも可能。例えばZoomをインストールすると、ダッシュボード上に設置されているインカメラを使ってオンラインミーティングも可能です。

 実用面では、スマホのワイヤレス充電、USB-C端子も抜かりなく設置されています。イマドキのデジタルライフにしっかりと対応してきている辺りを見ると、過去のモデルに名機はあれど、これまでのモデルでは得られなかった価値が詰め込まれているスゴさを感じざるを得ません。

 周囲が暗くなると、車内は盛大なイルミネーションとともにムーディな空間を演出します。その光は“MBUXスーパースクリーン”をダイナミックに縁取り、ダッシュボードからドアまでの広範囲を囲うもの。そのカラフルで鮮やかな光は、まるで晴れた夜の月明かりのようにホワイトのレザーシートを照らしていました。

 さらに試乗車は、17スピーカーと15チャンネルの“Burmester 4D サラウンドサウンドシステム”が標準装備されていて、音楽のリズムと連携して前席のレザーシートに振動を伝達。音の立体感が加わることで、ドライブシーンがよりドラマティックなものに変わります。

 何より、ナビの目的地設定が実に簡単です。「ハイ、メルセデス。東京駅まで行きたい」といった具合に語りかけると候補地が提示され、わざわざクルマを停めなくても、走りながら音声だけで使いこなせて便利。そのほかにも、「エアコンの温度を下げて」といえば設定温度が変わるほか、「テイラー・スイフトが聴きたい」と伝えれば、Amazon musicなどの音楽アプリのプレイリストから導き出し、指示した曲が流れ始めるのです。このスマートさに慣れてしまうと、もはや他のクルマでは満足できなくなってしまいそう。

 さらに、肌寒くなったときにシートヒーターをオンにしたら、シートだけでなくドアとセンターコンソールのアームレストまでじわりと温まってくれていることにビックリ。身体が触れる箇所が暖めるおもてなしもあって、居心地のよさはひとしおです。

街乗りから高速域まで気持ちのいい加速と低燃費を両立

「オールテレイン」でのドライブは、低回転域で走り出す際、ディーゼルエンジン特有の振動やカラカラといったノイズを意識させるケースがありますが、快適性にこだわるメルセデスの一員らしく、静かで振動が少ないものになっています。

ステーションワゴンの実用性とSUVのスタイリングを併せ持つメルセデス・ベンツ「Eクラス」の新たな個性「E220d 4マチック オールテレイン」

 エンジンとトランスミッションの間には“ISG”と呼ばれる電気モーターが組み込まれていて、ディーゼルのネガを感じやすい回転域をモーターのトルクで補うことで、なめらかでスムーズな加速フィールを実現しています。

 低回転域から高トルクを生み出すディーゼルエンジンは、低燃費で燃料コストを抑えられるメリットがありますが、さらに「オールテレイン」は9速に多段化されたオートマチックトランスミッションの効果で、街乗りから高速域まで気持ちのいい加速と低燃費を両立してくれるのもうれしいところです。

 街乗りについては、全幅が1890mmと少し大きめなので、対向車とすれ違う際、路肩に寄せるのに少し気をつかうシーンも。また駐車場では、隣に大きなクルマが停まっている駐車枠は避けたい気持ちになるのが正直なところです。

 とはいえ、基本的にはステーションワゴンの地上高を高めたモデルなので、ガラスエリアを見渡せば、直接視界から状況はとらえやすいつくりといえます。一般的なSUVよりも地面に近い位置に座ることで、低い位置にある障害物など把握しやすくなっています。

 さらに、360度カメラシステムにより、車両周囲の障害物に気づきやすいほか、ラフロードを走ることを想定した「オールテレイン」だけに、本来は見通せない車両のフロント下部の路面の映像を仮想的にモニターに映し出す機能もあり、石やくぼみなども発見しやすくなっています。

 2リッター直列4気筒クリーンディーゼルターボエンジンは、街乗りから高速域まで余裕を持って走れるもの。高速道路での本線合流時の加速では、登り坂であってもエンジンの力にプラスしてモーターが後押しするので、もたつかないのが美点です。

 なおかつ、直進安定性も高く、リラックスしてドライブを楽しむことができます。「ECOモード」を選ぶと、時折、エンジンを停止させて惰性で走る“コースティング”も行われていて、さらなる燃料節約に貢献してくれます。

 メルセデスの安全哲学に基づいた運転支援機能も充実しており、ロングドライブ時にアダプティブクルーズコントロールを使えば、前走車との車間をキープしながら操舵支援によって車線内をトレースし、スムーズで快適な移動を叶えてくれます。

 また、ステアリング上に置かれたスイッチはワンアクションで設定できるので、サッと使いこなせるようになっています。混雑、合流などに出くわす場所でも制御に唐突さは感じにくく、人の感覚に近い動作でストレスを感じにくい仕上がりになっています。

●オフロードでも頼もしい走りを発揮

 そんな「オールテレイン」をドライブして感じたのは、今回の「Eクラス」はボディタイプや仕様により、走り味の特徴が随分異なっているな、ということ。

 別の機会に試乗したセダンのPHEVモデル「E350e スポーツ エディションスター」の場合、まるで「Sクラス」のような大型サルーンを思わせる大らかな乗り心地で、「Cクラス」の軽快さや俊敏な走りとは明らかな違いを感じさせてくれるものでした。

 一方、今回の「オールテレイン」は、地上高を高めたのに加え、連続可変ダンピングシステムにエアサスペンションを組み合わせた“AIRMATICサスペンション”が標準装備されています。これが、ゆったりと波のようなリズムで走るタイプではなく、比較的しっかりとした構えとともに荷物の重さに左右されずに地上高を一定に保ち、安定した走りを見せる乗り味を生み出していました。

 砂利道で「オフロード」モードに切り替えて走ってみると、20km/h以下の速度ではエアサスが“オフロードレベル+1”まで車高をアップ。さらに車高を上げたい場合は、タッチパネルの“車両設定”で“レベルを上げる”を選択すると、最高速度が15km/hまで“レベル+2”へと引き上げることができます。

 地上高が高まると、地面から少し遠い感触に変わるのと同時に、深い轍(わだち)や起伏のある道で車体を擦りにくくなるメリットを得られます。ただし、砂が厚くやわらかい路面では、オンロード向けのタイヤが装着されていたこともあり、たどりたいラインから少し逃げやすい傾向に。とはいえ、すべりだそうとすると“4マチック”が強みを発揮し、最適な駆動力を配分しながら車体を前に押し進めていってくれました。

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 アスファルトの上をスムーズで快適に駆け抜け、高速移動では運転支援機能でストレスフリーのドライブを実現。さらにラフロードを通過するときには安心感を与えてくれる「E220d 4マチック オールテレイン」。新しい6代目「Eクラス」の電動化とデジタル化、ステーションワゴンの優れた機能性にプラスして、SUVらしい走れる頼もしさを発揮してくれるモデルに仕上がっていました。

 その洗練されたたたずまいは、スーツ姿のビジネスシーンからオフの日のアウトドアまで、実に幅広いシーンで活躍してくれそうです。