アメリカン・ウォッチブランドのVIPが語る――「ブローバ」150年の歴史を継承する“2つのアニバーサリーモデル”の魅力とは

VAGUE6/16(月)21:40

アメリカン・ウォッチブランドのVIPが語る――「ブローバ」150年の歴史を継承する“2つのアニバーサリーモデル”の魅力とは

創業150周年を記念したアニバーサリー モデルの「マリンスター」(写真右)と「ミルシップ」(写真左・中央 )

1875年創業のアメリカのウォッチブランド 「BULOVA(ブローバ)」。歴史あるブランドのグローバル商品統括責任者を務めるスーザン・C・チャンドラー氏が来日し、今年150周年の節目を迎えるブランドの哲学と記念モデルについてVAGUEに語ってくれました。

ジュエラーから時計のブランドに駆け上ったブローバの歴史とは

 ニューヨークで創業し、2025年に150周年を迎えるアメリカの時計ブランドの「BULOVA(ブローバ)」。長い歴史のなか多彩なモデルを生み出してきましたが、節目の年を飾るアニーバーサリーモデルに注目が集まっています。

 今回は、創業150周年を記念したフィルム上映パーティのため来日した、グローバル商品統括責任者のスーザン・C・チャンドラー氏に、ブランドの物語や時計作りの哲学について伺いました。

チャンドラーさん:ブローバの歴史は19世紀に遡ります。創業者である技術者のジョセフ・ブローバは現在のチェコより単身アメリカに渡り、1875年に宝飾店をニューヨークで開業します。

ブローバのグローバル商品統括責任者を務めるスーザン・C・チャンドラー氏

チャンドラーさん:時代を先取りするセンスにめぐまれたジョセフは、某有名ジュエリーブランドで修業した後に、宝飾店を開業。ほどなくして男性向けの懐中時計で時計業界に参入します。

VAGUE:宝石や自転車にまつわる各種特許も取得していたそうですね。チャンドラーさんも長きにわたりジュエリー関係のお仕事をされていたとか。

チャンドラーさん:2016年にブローバに入るまでは、アメリカのハイジュエリーの世界で働いていたので、宝飾から時計とキャリアを拡大してきた点で私とブローバは良く似ていますね(笑)。ブローバは1912年には時計工場を設立し、以来は高品質で手の届きやすい時計作りを現在まで続けています。

ブロンズ製のスペシャルな「ミルシップ」がついに登場

VAGUE:ジュエリーも時計も素材が重要ですが、ブローバの現代の時計作りにどう活かされていますか?

チャンドラーさん:宝飾の世界ではスチールやチタン、ゴールドだけでなく、タングステンやコバルトなど、時計よりも多くの素材を扱います。宝飾の世界で培った知見を時計づくりにフィードバックしたのが、150周年を記念するスペシャルなモデルとして5月に発表されたブロンズ(銅)製の「MIL-SHIPS(ミルシップ)」です。

東京で開かれた150周年記念パーティに登場した「ミルシップ」。ネイビーブルーとオリーブグリーンの2つの印象的なカラーリングが用意される

VAGUE:2021年に登場したミルシップの復刻第一弾のケースにはステンレススチールを使っています。ブロンズ素材は近年の腕時計のトレンドでもあります。

チャンドラーさん:アニバーサリーモデルにブロンズを選んだ理由は、19世紀の潜水用ヘルメットが銅でつくられていたことにインスパイアされたもの。表面はサテンフィニッシュで、あえて強くコーティングしていないので、温かみのある色合いが使い込むことで変化するため、パーソナライズも楽しんでいただけます。

VAGUE:素材にこだわり続けるブローバを体現するメカニカルダイバーズと言えますね。ダイバーズとしては控えめなケースサイズも目を引きます。

チャンドラーさん:ブローバに参加した当時、ダイバーズのケースは45mmを超えるのも珍しくないほど大型化が進んでいました。現在ケースのサイズは小さくなる傾向があって、ミルシップでは41mmとしています。

VAGUE:ミルシップは、ブローバのマイルストーンとなった傑作時計をアップデートしたモデルが揃う「アーカイブスシリーズ」に属するモデルです。

チャンドラーさん:オリジナルは1955年にアメリカ海軍の要請で、プロフェッショナルの潜水ミッションのために開発されたもの。1957年前後に合計9本のプロトタイプを納入し、軍による約119.5mという深度での潜水テストに成功しています。

VAGUE:気密パッキンの性能が現在よりも高くなかった当時としては画期的なスペックです。

チャンドラーさん:ブローバは他にも多くのプロジェクトを抱えていたこともあり、結果的に軍への正式採用は見送られました。ですが、1959年に発行された米海軍艦船局の機関誌にはブローバの時計が大きく取り上げられたので、プロトタイプの評価そのものは高かったわけです。

当時のテクノロジーを忠実に再現した部分とは?

米海軍艦船局の機関誌で紹介されるミルシップのオリジナルモデル

VAGUE:ミルシップの復刻にあたって苦労された点は?

チャンドラーさん:市販されなかったこともあり、残された情報はごくわずか。しかも、生産されたのは9本のプロトタイプのみとあってサンプルピース探しは困難でしたが、幸運にも我々はそのうちの一本を手にすることができました。

VAGUE:6時位置にあるモイスチャーインジケーターが印象的です。

チャンドラーさん:特殊な紙が万が一の浸水を感知すると色が変化するんです。防水性能の高くなかった時代に考えられた、異常を知らせることでダイバーの安全を守る仕組みですが、当時の技術者に敬意を評して採用するなど、オリジナルの持つ魅力を忠実に再現できたと自負しています。

VAGUE:押し込んだ時だけ両回転する画期的なトップリング(ベゼル)の構造も忠実に再現されており話題となりました。アップデートに際して変更した部分は?

チャンドラーさん:アクシデントでも誤作動しないプッシュロック式両回転式のトップリングは、軍の要求したミルスペックの一つでした。150周年記念モデルの一番大きな変化はラグの幅でしょうか。

VAGUE:資料によると、オリジナルのラグ幅は16mmだったとか。

チャンドラーさん:現代の感覚だとかなり細いですよね。16mmのラグ幅のミルシップも現行品でありますが、この150周年記念モデルは、注意深くバランスを確認しながら2mmだけ拡張し18mmに設定。オリジナルのストラップは編み込みナイロン製のNATOベルトでしたが、新作ではコーデュラにシリコンラバーの裏打ちをしています。

VAGUE:コーデュラによって耐久性は高まっていますが、シリコン素材は肌への当たりが柔らかいので腕馴染みがすばらしいです。

チャンドラーさん:日常生活でも存分に活用してほしいので、強度と手触りには細心の注意を払いました。素材を変更しミックスすることは大きなチャレンジでしたが、美しさや高級感だけでなく日常の使い勝手の良さも兼ね備えたストラップに仕上げることができました。

先進性を更にブラッシュアップした新クォーツ時計

VAGUE:ブローバは機械式だけでなく、クオーツでも魅力的なモデルを生み出しています。

チャンドラーさん:1960年に誕生した「アキュトロン」は、機械式でもクオーツでもない「音叉式電子時計」という当時としては全く新しいムーブメントを搭載していました。楽器の調律に使われる音叉の振動数が安定していることに着目した技術で、“Accuracy(正確性)”と“Electron(電子)” を組み合わせて命名されたものです。

最新のクォーツムーブメントを搭載したアニバーサリーモデルの「マリンスター」

VAGUE:当時、機械式では日差±1分を超えるのが当たり前の時代に、月差±1分(or日差±2秒)という驚くべきスペックでした。

チャンドラーさん:アキュトロンのような世界初の技術を開発する挑戦的な試みは今でも受け継がれており、現在のブローバのクォーツ時計は、独自の高振動クォーツムーブメントである「ハイプレシジョンクォーツ」が搭載されています。通常のクオーツの約8倍の振動周波数を持つため、月差±5秒という極めて高い精度を実現しています。

VAGUE:もう一つの150周年のアニバーサリーモデルであるクロノグラフ、「マリンスター(98B451)」にも搭載されているムーブメントです。

チャンドラーさん:クオーツウォッチには機械式とはまた違ったエモーションがありますが、「98B451」は精度と先進性のDNAを受け継ぐ“アキュトロン・チルドレン”だと言えます。「マリンスター」は1970年代にブローバが手がけたシリーズからインスピレーションを受けたコレクションですが、クロノグラフのハイプレシジョンクォーツ搭載は本モデルが初となります。

VAGUE:当時は様々なブランドから多くのクロノグラフが登場した時代でもあります。アニバーサリーモデルのデザインハイライトは?

チャンドラーさん:バランスに気を配るのはもちろんのこと、当時の欧州向けモデルの仕立てを忠実にトレースしていること。ダイヤルの赤い星は、当時の意匠を再現しました。オリジナルモデルのムーブメントは機械式でしたがUハイプレシジョンクォーツを搭載することで使い勝手を向上させています。

シチズンとの協業でより魅力のある“初めての本格腕時計”へ

VAGUE:150周年の記念モデルはどちらも、機能や素材、デザインにまでこだわり抜いていますが、価格は「ミルシップ」が14万円台、「マリンスター」が12万円台と手にしやすいのも大きな魅力です。

チャンドラーさん:ブローバは様々なプライスレンジの時計を手がけていますが、とくに1000〜1500ドルの時計が充実しています。そのため、人生の特別な瞬間を祝うプレゼントや、若い世代が初めて出会う本格的な腕時計ブランドとして、時計愛好家のみならず多くの方にご愛用いただいています。

ニューヨークのエンパイアステートビルディングに本拠地を構えるブローバ(写真は150周年記念パーティの様子)

VAGUE:現在はシチズンのグループに参画されています。

チャンドラーさん:シチズンと協業することで、独自の新ムーブメント「プレシジョニスト」が誕生するなど、高い品質の時計をより安定して生産することが可能になりました。

VAGUE:150年という長い歴史のなかでは困難もあったかと思います。

チャンドラーさん:全世界を襲ったパンデミックには少なからず影響を受けました。ですが、当時は150周年をどう迎えるかに注力しており、“何が必要で、何が必要でないか”を常に考えていました。ブランドの長い歴史について振返り、ラインアップをシンプルにするための時間がとれたことは幸運でした。

VAGUE:日本の時計ファンにメッセージがありましたらお聞かせください。

チャンドラーさん:世界に類をみないほどの選択肢があるため、時計に対する理解度が高い。そのせいか機能性やスタイルだけでなく、背後にある物語にも気を配ってくれます。歴史あるブローバですが日本との関係は始まったばかり。皆様とのつながりをより深め、われわれの物語をお伝えできれば嬉しいですね。

●製品仕様
「アーカイブスシリーズ ミルシップ」
・品番:98A325(ネイビーブルー)、98A324(オリーブグリーン)
・価格(消費税込):14万9600円
・ケース素材:ブロンズ
・ケースサイズ:41mm
・厚さ:15.4mm
・防水性:20気圧
・風防:サファイアクリスタル
・ムーブメント:自動巻
・その他:裏蓋刻印あり、ストーリーブック付属

「マリンスター」
・品番:98B451
・価格(消費税込):12万6500円
・ケース素材:ステンレススチール
・ケースサイズ:42.9mm
・厚さ:14.9mm
・防水性:20気圧
・ムーブメント:ハイプレシジョンクォーツ
・精度:月差±5秒
・その他:裏蓋刻印あり、ストーリーブック付属

*両モデルとも3店舗限定発売(CITIZEN FLAGSHIP STORE TOKYO/CITIZEN FLAGSHIP STORE OSAKA/BULOVA公式オンラインストア)

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