「クラシックカーをいま、実際に運転してみたらどうなのか?」という、素朴な疑問に答えるテストドライブ。2回目は、ついに生産モデルが米国でワールドプレミアされた日産「フェアレディZ」のデザイン的モチーフになったS30系Zです。

国際ラリーで大活躍した、国産スポーツカー史に輝く名車とは?

 2021年の自動車界におけるスーパースターといえば、海外勢ではランボルギーニ「カウンタック」。そして国産車では、なんといっても日産「フェアレディZ」で間違いないだろう。

 フェアレディZの新型車については2020年夏、元祖「Z」であるS30系をモチーフとしたプロトタイプが発表されたのち、この夏にはアメリカで生産モデルがワールドプレミアに供され、日本国内でも今冬には正式デビューが予定されているという。

 またそのかたわらで、そのオマージュの対象とされたクラシックモデルも、今や全世界で偉大なるオリジンとして敬愛されている。

 そこで今回のVAGUEでは、「クラシックカーって実際に走らせてみると、どうなの?」という疑問にお答えするべくスタートした、クラシック/ヤングタイマーのテストドライブ企画第2弾として、S30系フェアレディZの海外輸出用モデル「ダットサン240Z」、しかも、ちょっと特別な仕立てが施された1台を紹介しよう。

 1969年10月に発表された初代フェアレディZは、日本車が初めて世界基準で認められた、スポーツカーの傑作といわれている。

 前任モデルにあたる「フェアレディ2000(SR/SRL311系)」が、古典的かつワイルドなロードスターだったのに対して、S30系フェアレディZは1970年代を見据えたグラントゥリズモ(GT)として、クローズドルーフを持つクーペとして企画された。

 SR311、さらにいえばその以前のSP310/SP311の時代から最大マーケットであった北米市場の志向性を最大限に意識して開発され、日本での発表と時を同じくして「ダットサン240Z」の名でアメリカとイギリスでデビューを果たした。

 その後はヨーロッパ大陸やほかの国にも輸出され、1978年に生産を終えるまでに約55万台を生産。そのうち約47万台がアメリカを筆頭とする海外に送り出された。

 そして、フェアレディZ/ダットサン240Zの成功を支えた重要な要素として挙げるべきは、日産ワークスチームによる国際ラリーでの大活躍だろう。

 日産ワークスのダットサン240Zは、1971年および1973年の「東アフリカ・サファリラリー」で総合優勝を獲得したほか、1972年には「モンテカルロ・ラリー(現WRCラリー・モンテカルロ)」でも3位入賞を果たすなど、日産、ひいては日本車のイメージを大幅に向上させることになったのだ。

●少年時代に見たラリーカーを実際に作ってみた

 そんなZの活躍が、当時の日本のカーマニアたちを大いに沸かせたのは想像に難くない。モンテカルロ・ラリー入賞マシンは日本に帰国したのち、国内各地の日産ディーラーで巡回展示されたそうだが、その際に目を輝かせて240Zを見つめた少年のひとりが、今回のテストドライブに愛車を提供してくれた横田正弘氏だった。

 群馬・伊香保温泉近くの人気観光スポット「伊香保おもちゃと人形 自動車博物館」の創業者にして、「スプレンドーレ伊香保」など数多くの人気イベントを立ち上げる一方で、自ら「ミッレ・ミリア」などの国内外のクラシックカーラリーで輝かしい戦績を挙げてきた、日本を代表する自動車コレクターのひとりである。

 横田館長は、かねてより保有していたダットサン240Zを1972年モンテカルロ・ラリー入賞車とそっくりに仕立てたレプリカに改装し、モンテカルロ・ラリーのクラシック版であるクラシックカーによるラリー世界最高峰と称される「ラリー・モンテカルロ・ヒストリーク(Rallye Monte Carlo Historique)」の2018年版に正式エントリー。見事完走を果たし「240Zでモンテを走る」という積年の夢を叶えた。

 今回の試乗車は、まさにその時の参戦車両。現在の日本国内に数多く生息するS30系フェアレディZ/ダットサン240Zのなかでも、格別の1台なのである。

マルセイユまで運転した「240Z」を日本で再試乗してみたら

 筆者がこのモンテカルロ・ラリー仕様のダットサン240Zを運転するのは、これが初めてではない。

 横田正弘館長が2018年2月の「ラリー・モンテカルロ・ヒストリーク」に参戦した際、サポートメンバーとして全行程に随行した筆者は、ラリー完走後に船便で日本へと送り返すために、モナコから南仏の港町マルセイユまでの陸送の一部を担当していたのだ。

 ただし、その際でのドライブは高速道路「オートルート」とマルセイユの市街地を走ったのみで、このクルマの本質に触れることまではできず、ひたすら乗りやすくて安楽という印象に終始。そこで今回のテストドライブでは、ワインディングロードを中心にこのダットサン240Zを味わってみることにした。

1トンにも満たない軽さのおかげで、少なくとも一般道で体感できる動力性能はなかなかのものだ

●グラントゥリズモとしての本分を体現した走りっぷり

 先にお断りしておかねばならないが、横田館長のモンテ240Zレプリカは、主に外観のみをコスメチューンしたもので、実質的なパフォーマンスはスタンダードのダットサン240Zと変わらない。

 したがって、L24型水冷直列6気筒SOHC2393ccエンジンが発生する出力は、150psという控えめなもの。しかも、当時の日本で採用されていたグロス表示のスペックであるため、現代のネット表示ならば130ps前後と推定される。とはいえ、こちらも当時のデータを信ずれば1トンにも満たない軽さのおかげで、少なくとも一般道で体感できる動力性能はなかなかのものである。

 この個体には、4速マニュアルの標準型トランスミッションが組み合わされているが、シフトストロークは短めで、コクコクと気持ちよく決まる。

 4速ゆえにややワイドレシオながら、2.4リッターのトルクに助けられて、緩やかなアップダウンのワインディングでは実にリズミカル。往年のL型6気筒エンジンをご記憶の方なら懐かしく感じるであろう、「ビュイーン」という独特のサウンドを味わいつつ、とても楽しいドライブが満喫できるのだ。

 一方、鋳鉄製ブロックを持つ重いL24エンジンを搭載しているせいか、あるいは近代的なラック&ピニオン機構を持ちつつも、パワーアシストがない分ステアリングのギア比がスローなのか、ハンドリングは少々ゆったり目といわねばなるまい。

 ステアリングの重さによる「手アンダー」も相まって、全長4115mm×全幅1630mm×全高1285mmというコンパクトなボディサイズから想像されるような機敏さには欠けるかに思われた。

 ただしS30Zが、主にアメリカ大陸でのクルージングを目的としたGTとしてのキャラクターを追求していたことを思えば、これは正しい出来栄えともいえるだろう。当時としては充分に先進的だった4輪独立懸架はハンドリングを損なうことなく、快適な乗り心地を実現しているのは間違いないところである。

 実際のところ1972年のモンテカルロ・ラリーにて、ルノー・アルピーヌ「A110」やポルシェ「911」など、より俊敏かつスパルタンなリアルスポーツカーたちと対等に渡り合って3位入賞を果たした快挙には、現在のWRCよりも走行距離の長かった当時のラリーで、より疲労度が少なかったことも大きく寄与していたといわれているのだ。

 ちなみに、モンテカルロ・ラリーの夢をかなえた横田館長は、少年時代に憧れたもうひとつの夢があったという。それは「240Zでサファリラリーを走りたい」というもの。

 そこで「サファリラリー」のクラシック版、次回は2023年春に開催予定という「イーストアフリカ・サファリラリー・クラシック(East Afirica Safari Rally Classic)」へのエントリーを目指して、現在もう1台、サファリラリー仕様の240Zレプリカを製作しているとのことである。

 こちらのサファリ240Zレプリカは、悪路が連続するハードなコース設定を見越してエンジン排気量を拡大するほか、ヘビーデューティ向けの仕立てでロールケージも組み込むなど、「本気のクラシック・ラリーカー」となっているようだ。

 新たに製作中の240Zは、2年後の「イーストアフリカ・サファリラリー・クラシック」を走り切り、無事に日本に戻ってきた暁には試乗させていただくつもりなので、それまでお楽しみにお待ちいただきたい。