“時計界のパブロ・ピカソ”といわれた偉大な時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタ。彼が手掛けた人気時計などのデザイン画が、オークションに出品されました。その落札価格は、実物の時計の人気に比例した、驚きの額でした。

人気時計のデザインを数多く手掛けた“時計界のパブロ・ピカソ”

 ジェラルド・ジェンタは“時計界のパブロ・ピカソ”と評された、偉大なる時計デザイナーだ。ジュエラーから時計デザイナーに転身した人物ゆえに、宝飾品の要素を盛り込んだデザインで人気を博した。

 1968年、ユニバーサル・ジュネーブに務めていた時にデザインした「ゴールデンシャドウ」が国際的な賞を受賞し、翌年には「ジェラルド・ジェンタSA」を設立し独立。様々な時計ブランドのためにデザインを手掛けただけでなく、やがては自らの会社から複雑系時計を発売するようになった。

 IWC「インヂュニア」、セイコー「クレドール・ロコモティブ」、ブルガリ「ブルガリ・ローマ(ブルガリ・ブルガリ)」、オメガ「コンステレーションC」など、ジェラルド・ジェンタは数多くのデザインを手掛けている。現在、入手困難なオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」やパテック フィリップ「ノーチラス」なども、ジェラルド・ジェンタがデザインしたものだ。

●聞き間違ってデザインした時計

 そんな彼が手掛けた作品のデザイン画が先日、オークションに出品された。デザイン画にどれだけの価値がつくのかと思って見ていたが、腕時計の人気と比例していた。

「ロイヤル オーク」はジェラルド・ジェンタが聞き間違えてデザインした、というユニークな逸話が残っているもの。オーデマ ピゲのCEO(当時)からの依頼は「今までにないスティール製のスポーツウォッチが欲しい」だったのだが、ジェラルド・ジェンタが勘違いして提案したのは“これまでにない耐水性”だった。

 勘違いしたジェラルド・ジェンタは、子供時代に見かけたダイバーのヘルメットにヒントを得てデザインした、といわれている。ただ、オーデマ ピゲがこの8本ボルトの潜水ヘルメットを特定しようと試みたようだが、実在するか否かは定かではない。

 そしてこのデザイン画、なんとたった1日で描き上げた、というから驚く。

 2022年2月、ジュネーブでサザビーズが開催したオークションでロイヤル オークのデザイン画は56万4500フラン(邦貨換算約7340万円)で落札された。同オークションで落札された、もっとも安く落札されたデザイン画は約65万円だったので、ロイヤル オークの人気ぶりが伺える。

もはや時計よりも高い!? ジェラルド・ジェンタのスケッチの落札価格とは

 また2022年4月、同じくサザビーズが香港で開催したオークションでは、パテック フィリップ「ノーチラス」のデザイン画がオークションに出品された。

ノーチラスのデザイン画。ノーチラスは1976年に誕生、現在でもパテック フィリップの人気コレクションのひとつだ(C)Sotheby’s

●実際の時計の人気に比例した落札価格

 ノーチラスのケースデザインは、潜水艦「ノーチラス号」の舷窓をモチーフとしている、といわれている。「ウェットスーツにもタキシードにも完璧にマッチする時計」というコンセプトのもと作られたノーチラスは、スポーティでありながらも“薄さ”を保ちつつ「防水性」の向上にも取り組んだモデルだ。

 今でこそ「防水性能120m」と聞くとそれ程でもないが、ノーチラスの厚みは約7.5mmしかない。それでいて、手巻き式よりも厚くなりやすい自動巻きムーブメントを搭載しており、パテック フィリップの職人たちの技術の高さの表れでもあった。

 そんなノーチラスのデザイン画、落札価格はなんと567万香港ドル(邦貨換算約9345万円)。

 いずれのデザイン画もコレクターがリビングルームや書斎にでも飾るのであろう。いやはや、実に羨ましい話だ。

 そのほか出品されたデザイン画には、商品化こそされていないがフェラーリ、ランボルギーニ、ベントレーなどとのタイアップを想定したものもあった。ジェラルド・ジェンタは生涯において、10万点にも及ぶデザイン画を手掛けた、といわれている。

 なお、これらオークションに出品されたデザイン画には、ジェンタ・ヘリテージ・アソシエーション(会長はジェラルド・ジェンタの夫人)が本物であることを謳うNFTも付属されている。また、2022年6月にニューヨークで開催されるサザビーズのオークションでも、ジェンタのデザイン画が出品されるとのこと。全てのデザイン画が高いわけではないので、アート作品としてチェックしてみるのもアリだろう。