新型の「レンジローバー・スポーツ」誕生で注目が集まっているランドローバーですが、そのルーツは「シリーズ1」でした。

白洲次郎氏が日本に輸入した貴重なランドローバー「シリーズ1」

「ランド=大地」、「ローバー=流浪する」という意味を持つランドローバーは、、第2次大戦後の1948年に誕生した。「シリーズ1」と呼ばれる初代モデルは、終戦後に大量に余っていた小型四輪駆動車をベースに、その当時、戦争で使われていた素材を組み合わせて作られたことについてはあまり知られていない。

●ジープの亜流として英国で作られた「シリーズ1」

 英国軍は偵察、連絡用の自動車として米国から供与された大量のジープを使用していた。これらが戦争終了によって軍用車としてそのままの姿で残されていた。

 また終戦後には、戦争が長引いた際の大量のストックされた部材が残っていた。その中でもとくに過剰在庫として残されていたのが、航空機に使うための材料だったアルミニウムだったのである。

 後にランドローバーと呼ばれる名車を世に生み出したローバー社は、そうした大量に残った部材に目を付け、それを使って1946年にアルミボディのプロトタイプのオフロードジープを完成させたといわれている。それがランドローバー・シリーズ1として登場。

 生産は英国バーミンガム工場でおこなわれ、その作業はすべてひとりの職人が担当し、丁寧に手作業で組み立てられたとされている。

 日本に初めて輸入されたのは1953年のこと。政府の要人だった白洲次郎氏が東北電力を立ち上げ、その現場を巡回するのに四輪駆動車が必要になったことがきっかけとなり、イギリスからランドローバーが輸入されたのである。

* * *

 当時日本に輸入されたシリーズ1のうち、日本に現存しているのは、ここで紹介している個体のみ。これ以外は様々な事情があってすべて廃車されてしまったらしい。

 現オーナーの小林正樹さんに、この個体の来歴について伺った。

「このシリーズ1は我が国にはじめて入って来たランド・ローバーです。実際に白洲次郎さんが乗ったとされている貴重な1台になります。

 当時の日本には山奥にある発電所に行くためのクルマがありませんでした。そこで、英国好きの白洲次郎さんがこのクルマに目を付け、特別に輸入をはじめました。当時、悪路を走るクルマとして一番信頼性があったというのも理由になっていたようです。

 白洲次郎さんが乗っていた当時の状態をある程度は残してますが、現在、このクルマは塗装を剥がした無垢の状態になってます。このクルマが活躍していた当時はもちろん塗装されていましたが、オリジンの塗装はだいぶヤレていたのでアルミむき出しの無垢仕様として仕上げてます」

 かつて日本に輸入されたシリーズ1が、海外の有名オークションにかけられたことがあるが、その時の落札金額はおよそ2400万円だったという記録が残っている。この事からも、世界的に見てもランドローバー・シリーズ1の希少性が高いということである。