こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。投資・マネー系の本を300冊以上読破した経験から、特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介。2024年2月2日には、著書「しっかり儲ける投資家たちが読んでいる 投資の名著50冊を1冊にまとめてみた」を刊行しました。
今回はジェレミー・シーゲル氏の「株式投資 第4版 長期投資で成功するための完全ガイド」(著:ジェレミー・シーゲル/日経BP)をご紹介いたします。この本では、株式の長期投資の本質と市場を上回る方法について詳細に記述されており、株式投資家にとっては非常に重要な内容が含まれています。過去200年分のデータに基づく分析では、物価上昇を考慮した上で、株式、長期債、短期債、金、預金(ドル)の実質トータルリターンを比較しています。
200年前に1ドルを各資産に投資した場合、株式は75万5163ドル、長期債は1083ドル、短期債は301ドル、金は1ドル95セント、預金はたったの6セントに目減りしています。
株式投資は短期的には株価は大きく変動しますが、200年間の平均で、年率6.8%を出しています。
「株式をどのくらい長い期間、保有すればいいのか」という質問に対しても、同書は一定の答えを出してくれます。結論としては、株式を17年以上保有することで、実質ベースで損をしないというものです。
1年の保有では、プラス66%〜マイナス38%までの大きな変動がありますが、長期に渡り保有することで、平均リターンの振れ幅が小さくなり、17年保有すれば、平均リターンの下限が0%を超えるというものです。この内容は、株式投資で長期投資をすべき理由の一つとして、多くの投資家に支持されています。
■株式と債券の比率
株式はポートフォリオには欠かせない資産ではありますが、どの程度の割合で投資すべきかは、投資期間、リスク許容度にもよります。一部の人々は株式を100%保有することを好むかもしれませんし、一方で、株式と債券の適切なバランスを求める人もいます。
同書では、リスク許容度を「超保守派」、「保守派」、「リスク容認派」、「リスク選好派」の4つに分け、保有期間(1年、5年、10年、30年)とともに、株式の適切な比率が示されています。
リスク容認派・リスク選好派では、30年の期間でそれぞれ116.2%、139.1%となっています。レバレッジをかけた取引のリスクは確かに高いですが、長期の運用を前提にしていれば、レバレッジを用いた投資戦略も合理性があると同書からは読み取れます。
ただし、一般的に手軽に購入できるレバレッジ型投資信託は、2倍や3倍のレバレッジがかけられていますので、高過ぎますね。どうしてもレバレッジをかけるのなら、デリバティブを活用して、自分で行う方がよいでしょう。
■割安株投資の有効性
全体の結論として、インデックスファンドへの投資を認めつつも、市場に勝つためのさまざまな意欲的な研究があります。
その中の一つが割安株投資です。有名な「ダウの負け犬(ダウ10戦略=ダウ平均銘柄の中で配当利回りの高い上位10銘柄で構成される)」と称される高配当株のグループは、過去50年間で通常のダウ平均を上回るパフォーマンスを確認できました。これはS&P500と、配当利回りが高い上位10銘柄で構成されたS&P10を比較しても、高配当戦略の効果が明らかになっています。
また、バリュエーション指標の代表格である低PERのグループが高利回りを達成したことも確認されています。ベンジャミン・グレアムとデビッド・ドッドが、1934年に出版した古典的な名著「証券分析」(著:ベンジャミン・グレアム、デビッド・L・ドッド/パンローリング)の中で、以下のように記述されている通り、具体的な数字は時代に合わせて変える必要はありそうですが、重要な指標であることは窺えます。
“したがって、われわれは現実問題として次のような結論に至る。平均的な利益の16倍以上の株価で株式を購入する投資家は、長期的には多額の資金を失うであろう。”
シーゲルによると、S&P500の銘柄をPER別・PBR別に5グループに分け、50年間のリターンを検証した結果、PERやPBRが低いほど、パフォーマンスがいいという結論に達しました。
また、ファーマとフレンチの論文(ファンダメンタルズに基づく割安な銘柄は、CAPMの予測よりも高い利回りを出すことを示した)で示されているように、同書でも、PBRをPERよりも重要な指標と見なしています。
ただし、知的財産が企業価値を説明する傾向が強まる現代において、PBRが企業価値の指標として不適切になる可能性も指摘しています。今後の改訂版にも注目ですね。
■買い持ちか、タイミング投資か
買い持ち戦略と、タイミングを見て売買を行う戦略を比較した場合、特定の条件下でタイミング戦略の有効性が確認されています。
具体的には、景気循環のピークと底を正確に見極め、ピークの4カ月前に株式から短期国債に切り替え、底の4カ月前に短期国債から株式に戻すことができれば、最も高い超過利回りが得られるというものです。
この差は、バイ・アンド・ホールド戦略と比較して、30年間で資産を3倍以上に増やせるほどです。
ただ、最も大きな問題は、ピークや底を4カ月前にどのように正確に予測するかという点です。この話は、要するに「神のような予測能力があれば、バイ・アンド・ホールド戦略に勝てる」と言っているだけでしょう。
同書では、過去に多くの専門家たちが、高額な費用をかけながらも多くの予測ミスを犯してきたと詳細に述べられています。経済学者たちであっても、実際の転換点を確定することは、その瞬間が過ぎてからでしか可能でなかったと指摘されています。
■インフレヘッジとしての株式
近年は日本でも、長らく続いたデフレを脱却した代わりに急激なインフレが起こっています。
1871年から2006年の間に、株式、債券、短期国債を1年間保有した場合と、30年間保有した場合に得られる年率の複利利回りによれば、長期においては、株式はインフレの影響を受けていません。
ただしいずれの資産も、短期ではインフレヘッジ効果が薄い可能性が示されています。同書内でも複数の意見が挙げられており、株式でも短期ではインフレヘッジにならないと言われる、よくある理由としては、「インフレ率の上昇は債券の金利を押し上げ、債券金利の上昇は株価を押し下げる」というものです。
その一方で、株式がもたらす将来のキャッシュフローの増加が金利の上昇を相殺し、時間の経過とともに、株価もインフレ率と同じペースで上昇するとも言われています。これらのことから、1年という短期ではヘッジ効果が薄い場合がありますが、時間の経過とともにインフレヘッジ機能が働くと考えられます。
よって、インフレ下であろうとも、ポートフォリオのコアとなるような株式インデックスファンドは、バイ・アンド・ホールドするのが効果的だと考えられます。
■アノマリーやテクニカル分析、行動ファイナンスまで広く学べる
第4部では、テクニカル分析についても言及され、さまざまなデータや意見が取り上げられています。また、アノマリー投資や株式の季節性など、テクニカル分析の一環としてのトピックにも触れられている、骨太な一冊です。
行動ファイナンスや心理学に関する箇所は、より現代的な内容で、この部分は会話形式になっています。
内容の幅広さにもかかわらず、なるべく読みやすくなるような工夫がされており、初心者から上級者まで、多くの読者が得るものがあると感じました。私自身、この本は手元に置いておきたくなる価値を感じ、普段座る位置から手を伸ばせば届く範囲に置いています。
ただし、すでに10年以上経過していることは考慮しなければなりません。現代に合わせた邦訳の改訂版が出ることを最も熱望している一冊です。
株式への長期投資は、インフレ時代を乗り切る投資法である/タザキの投資本案内「株式投資 第4版」
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