元ゲーム会社所属デザイナーで、現在はストーリー漫画をメインに執筆している吉良いと(@kilightit)さん。個人で作品を公開・販売するほか、商業誌にも作品を掲載するなど、精力的に活動している漫画家だ。代表作「ようこそ亡霊葬儀屋さん」は、「このお話ほんとに好きです」「1度見た事あるはずなのに泣いてしまった」など、多くの読者に感動をもたらしている。


今回は、「アイドルの少女とゲイの青年が逃避行する話(偶像エスケープ 第1話)」をお届け。ゲイであることを自覚し、周囲の目から生きづらさを感じていた愛之助。幼少期から親に言われ続けてきた「正しく生きろ」という言葉が生きづらさを加速させていく。そんな彼は、アイドルの朝日奈花恋(あさひな・かれん)に憧れていた。「俺も彼女みたいにかわいくて綺麗な女の子に生まれていたら、もっといい人生送れたのにな」。バイト終わりにそんなことを思っていると、花恋本人が突然目の前に現れる。「助けて…」。彼女は誰かに追われているようだった。

愛之助はとっさの判断でバイト先であるラブホの一室に花恋を匿い、そのまま帰宅。翌朝、鳴り続ける玄関チャイムで目が覚める。ドアを開けると、なんとそこに花恋が立っていた。愛之助が昨夜落とした保険証を届けてくれたのだ。部屋に招き入れて話をするうちに、愛之助は彼女が枕営業をしていること、そしてそれを拒否することができないことを知る。それから、2人の秘密の共同生活が始まった。

共同生活最終日。愛之助は、仕事現場まで迎えに来ていた朝比奈の父親の車に乗り込む花恋を見かける。彼女の表情から異常を察知した愛之助は、急いで2人を追い、彼女の自宅にたどり着く。そこで父親から言葉と暴力で激しく罵られ、恐怖に涙する花恋を目にした愛之助は、恩人のあられもない姿に我を忘れ、朝比奈の父親を殺し、そして花恋から感謝される。「正しく生きろ」という親の言葉を思い出す。でも、花恋を救った自分は間違っていない。「これが俺の正しい道だ」。愛之助は花恋と2人で逃げることを決意する。

今回の作品について、作者の吉良いとさんに話を聞いてみた。
「2人だけの世界、恋愛でもなく友情でもなく家族愛でもない『愛』の話を描きたくて、この漫画は生まれました。儚くて残酷で、それでもどこか優しい。そんな愛之助と花恋の生き様を単行本全2巻に詰め込んでいます。第1話掲載時は『続きが気になる』というお声を多くいただき、完結時には『2人の続きをもっと見守りたい』と、たくさんありがたいお言葉をいただきました。キャラクターたちが愛されるのが、私にとっては何よりうれしいです!『偶像エスケープ』どうぞよろしくお願いいたします!」

X(旧Twitter)に投稿されると、読者からは「正しさと愛について考えさせられる作品だなと感じました」「主人公の心情の変化とともに自分もドキドキしてしまった」「声出すレベルに大泣きして余韻が半端ないです」などたくさんの感想が寄せられている。2人はこのあとどうなってしまうのか。展開が気になる作品だ。



画像提供:吉良いと(@kilightit)