DVや経済的理由で子どもを束縛するだけでなく、自分の考えを子どもに押し付けコントロールしようとする“支配型”の毒親もいる。それらの行いは「あなたのため」という呪いの言葉によって家庭内で正当化されていくが、近年はそうした親から脱却したエピソードが広く共有されるようになり、当事者から共感を集めている。

今回は、人気漫画家・グラハム子さんの自伝「母の支配から自由になりたい」を紹介。あわせて、グラハム子さん本人にも呪いの真相を聞いた。



2023年11月に発売された本作では、グラハム子さんが母親に支配され続けた人生から抜け出し、自分自身を取り戻すまでを漫画と文章で克明に描いている。親からの言葉が原因で摂食障害となってしまったことや、何事も自分の意思で決められなくなっていく心理状態などは、当事者でなければ「書けない」、かつ「描けない」生々しいものばかりだ。

■母親に支配され続けた人生から抜け出す方法

――文章を含めた形で執筆した経緯を教えてください。

【グラハム子】私的には大チャレンジでした。いつもは漫画オンリーなので、登場人物の動きや表情ありきで描けたのが、文章になるとそれがなくなってしまう。「これだけで伝わるかな…?」「逆に必要以上に描写を書きすぎかな…?」と、悩みながらの作業でした。担当さんがずっと励ましフォローしてくださったので書ききれました。感謝です。

――制作にあたりどんな“気づき”がありましたか?

【グラハム子】自分の中にある未消化のものの多さです。「ああ、私の中にはまだこんなに残ってたんだな〜」と思いました。書き始める時点では、もう自分ではほぼ消化できていると思っていたんです。でも、書いているうちに「あれもだ、これもだ」と新たにどんどん見つかっていきました。

――そうした自身の心と向き合う作業を終えて、気持ちの変化はありましたか?

【グラハム子】書き終わってからは、自分にとっての新たな課題が見えた気がしました。人生におけるステージを一歩進めたというか。悩みがなくなることはないんですけど、今までとは違う種類の悩みになりました。って、なんだか具体的じゃなくてすみません(汗)。

――親との関係で自分を責めている人は多いと思います。

【グラハム子】「大丈夫、あなただけじゃないよ。同じように苦しんでいる仲間がいるよ」と伝えたいです。そして「一緒に頑張っていこうね」とも。一生過去を恨んで、今のままの心持ちで生きていくの?と自問したとき、私は「それはイヤだ」と思いました。そして、イヤだと思えた瞬間、少しだけでもハッキリと世界が変わったのを覚えています。この本が、みなさんの世界を変える手助けとなれたらうれしいです。



取材協力:グラハム子(@gura_hamuco)